黒田固体表面プロジェクト

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総括責任者 黒田 晴雄
(東京大学 理学部 教授)
研究期間:1985年10月~1990年9月

 

固体の表面で起こる現象を原子、分子レベルで追求、制御することにより、新規な固体表面修飾手法と、それを利用した優れた機能を有する物質の創出を目指しました。
研究により、シリコン単結晶表面の清浄化、水素修飾による安定化の手法を確立しました。得られた表面は簿膜形成時の下地効果、電子線照射によるパターニング効果に優れ、半導体技術への発展が期待されます。また、稀土類金属の人工超格子が特異磁性を示すことを発見、金属の磁気特性の研究に新しい方向を示しました。
さらに、光化学反応によるカルボニル錯体の修飾、カードハウス構造を有するクレー層間化合物の作製など、新規な物質系の表面科学的合成という新しい分野の開拓に多くの手掛かりを得ました。

成果

軟 X 線域放射光を利用した固体表面解析手法の開発

表面での広領域 X 領線吸収微細構造解析手法及び定在波法に新開発の蛍光 X 線検出器を用い、微量吸着物質の存在位置や吸着層と表面第一層の間隔の精密測定に成功した。

Si 単結晶表面の新化学修飾手法

表面末結合手が H, F で終端した Si(100)面を得た。この表面は電子線描画、機能性有機分子の直接植付けや、大気中では初めての 1 × 1 構造の STM 観察を可能にした。

光化学反応を利用した表面修飾

修飾シリカ表面(-H, -OH)に、波長変化させた光化学反応法を用いて、触媒となるような構造の異なるカルボニル錯体を植え付けることを可能とした。

粘土鉱物カードハウス構造多孔体の形成

層状化合物である粘土鉱物を水中で分散させ、凍結乾燥してカードハウス構造多孔体を作製、さらに化学反応を利用して低温(200℃)で構造を固定化することに成功した。

特異磁性を示す人工超構造物質の作製

2種の反強磁性金属の非晶質相によりなる超格子を原子レベルで制御・作製し、零磁場冷却時に一旦発現した強磁性状態の磁化が急激に減少する物異挙動を見出した。

分子線蒸着による有機薄膜の作製

清浄化 Si 表面に分子線蒸着法を用いて、結晶性の優れた有機薄膜(メロシアニン色素)を形成した。

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▲紫外線照射後フッ酸で処理したSi(100)を大気中で観察して得られた1×1構造のSTM像(協力:電子技術総合研究所)および推定原子配列

fig2

▲Eu/Mn人工格子に出現した特異磁性と格子作製に使用した分子線蒸着装置

研究成果

プログラム

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