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「研究成果」

1.はじめに

 ヒトを始めとする高等生物からアメーバー等の下等生物まで、生体には病原体等の外来異物(非自己)を認識し、それらを排除するしくみが備わっています。このしくみが免疫系であり、生物の進化と共に免疫系も高度に進化し、複雑な制御機構を伴っていることが分ってきました。免疫系が充分に働かないと、感染症やがんを発症したり、逆に、自分の本来の成分(自己)や花粉等の無害な異物に対して過剰な認識を示すと、それぞれ自己免疫疾患やアレルギー疾患を発症します。
 では、免疫系はどのようにして、病原体等の有害な異物を認識し、排除するのでしょうか。免疫系には、外からの異物を何でも認識し、排除しようとする「自然免疫系」と呼ばれる、生体が元々備えているものと、一度侵入した異物を記憶して、2度目以降の侵入時にその記憶した異物のみを認識して、より迅速・強力に排除する「獲得免疫系」と呼ばれるものがあります。下等な生物は「自然免疫系」のみを有し、ほ乳類のような高等生物は「自然免疫系」と「獲得免疫系」の両者を有しています。獲得免疫系が働くためには、自然免疫によって一度侵入した異物が認識される過程が重要です。このような獲得免疫系と自然免疫系に関わる様々な免疫担当細胞の機能的な役割や、それら細胞の機能発現制御に関わる種々の分子の同定が、20世紀後半から急速に進展してきました。それに伴い、獲得免疫系における自己・非自己の識別機構や自然免疫系における異物認識・排除機構など、免疫系の基盤となるメカニズムが細胞・分子レベルで理解できるようになりました。このような免疫学の進展にも関わらず、アレルギー疾患や自己免疫疾患を中心とするヒトの免疫疾患に対する根治的な治療法は未だ確立されていません。
 本CREST「免疫機構」では、我国の第一線の免疫学研究者がアレルギー疾患や自己免疫疾患の克服を目指して、免疫制御機構を適正に機能させる革新的医療技術の創出に向けた研究を展開しています。ここに、本CREST領域メンバーがこれまでに培ってきた研究の成果を纏めることによって、最先端の免疫機構の研究の動向と免疫疾患への新たな取り組みを紹介いたします。