採択プロジェクト

大学・エコシステム推進型 
スタートアップ・エコシステム形成支援

Peace & Science Innovation Ecosystem(PSI)

2022年度

 (グレー網掛)は終了課題です。所属・役職名はすべて採択時のものとなります。

採択年度 研究開発課題名 研究代表者 概要
令和4年度
(2022年度)
土壌中で眠り続ける未利用リン資源を再利用するための微生物資材の開発 広島大学
大学院統合生命科学研究科
准教授
上田 晃弘
施肥されるリンの多くは土壌中の金属と反応して難溶性リンとなる。作物は難溶性リンを容易に利用できないため、継続的な農業活動は土壌へのリン蓄積を促進するが、土壌に眠り続けるリン資源を再利用する効率的な技術は存在しない。研究代表者はこれまでに難溶性リン可溶化能を持つリン可溶化細菌の定着能の改良(=持続性向上)を行い、発明者として特許を取得した。この改良型細菌を土壌に撒くことで、難溶性リンを持続的に可溶化させて作物にリンを供給する仕組みを構築し、リン施肥量を減らす(減肥)ことができる微生物資材の開発を行う。改良型細菌を用いた作物栽培実証データを蓄積し、市場への普及が難しい生きた細菌を堆肥や植物残渣中に混ぜたペレット製品の開発を行い、農家が利用しやすく、肥料コスト抑制のための新しい資材の普及を目指す。
令和4年度
(2022年度)
間葉系幹細胞集塊から作製する骨様組織を用いた骨再生細胞製剤販売事業~人にも動物にも最高の骨再生医療を~ 広島大学
口腔先端治療開発学(口腔検査センター)
教授
加治屋 幹人
腫瘍摘出術後などの大規模顎骨欠損患者に対して、適切な骨再建治療法が存在せず、患者はQOLの著しく低下した状態に陥る。研究代表者は、この課題解決策として、生体の間葉系幹細胞(MSCs)を用いて、骨そのものに相当する骨様組織を作製することに成功した。そこで、本開発研究では、研究代表者が開発した骨様組織を移植することで、あらゆる大規模顎骨欠損患者に有効な革新的骨再生医療の実現を目指し、その製造開発・薬事承認を担当するバイオベンチャーを起業していく。さらに、ヒト医療のみならず、ペット犬の骨折症例を対象とする動物医療へも参入していくことで、ヒト・動物医療双方の製造開発・薬事承認を加速させる。
令和4年度
(2022年度)
全固体圧電二次電池の開発 広島大学
大学院先進理工系科学研究科
博士研究員
加藤 智佐都
リチウムイオン二次電池に代表される二次電池は,電解質の液漏れや熱による爆発が相次いでおり,安全面の改良が強く求められている。この問題を解決し得る次世代電池として固体電解質を用いた全固体二次電池の開発が精力的に進められている。しかし,全固体二次電池は酸化・還元反応のサイクル性に伴う電極の劣化と,電極と電解質界面の変質の問題を解決できておらず,現時点で実用化に至っていない。この様な背景の中,我々は従来の電極化学反応を必要とせず,短時間で充電でき,一定圧力によって長時間放電できる全固体二次電池を提案し,その社会実装を目指す。この電池は高い安全性と高充放電サイクル性も持ち合わせている。
令和4年度
(2022年度)
早期診断を可能とするデータ可視化型AIによる臨床意思決定支援システムの開発 広島大学
大学院統合生命科学研究科
教授
菊池 裕
現在のがん治療において、医師は多量の情報(臨床検査・医療画像・遺伝子情報)を統合した判断が求められている事や、卵巣がんなどの特定のがんでは、早期発見・診断が困難である事が大きな問題となっている。この様な問題を解決するため、研究代表者らは、医療画像情報・遺伝子情報・がん組織情報を統合解析する事により、医療画像のみから卵巣がん組織状態が可視化されるプログラム(データ可視化型AI)の構築を目指している。このプログラムを医療機器や電子カルテ等に組み込んだ新規臨床意思決定支援システムが完成すると、術前検査等の早期の段階において、医療画像情報のみで卵巣がん状態が視覚化されるため、がんの早期発見・診断が可能になる。
令和4年度
(2022年度)
飛翔体を認識するアクティブ振動カメラの開発 広島大学
先進理工系科学研究科
助教
島﨑 航平
研究代表者は、秒間1000コマ画像処理を実現する高速ビジョン技術を起点とし、目に見えないが耳に聞こえる実世界情報を捉える音声周波数レベルのダイナミクスベースド画像認識に基づいた、画素レベル振動イメージングを実現するリアルタイム振動カメラ技術をコア技術とした事業化を目指す。特にドローン・鳥・昆虫など広範囲で移動する飛翔体をターゲットとした、高い時空間分解能でズームトラッキング撮影するアクティブ振動カメラの開発を行うとともに、パイロットユーザ候補企業・団体と連携したアンチドローン/スマートアグリ/バードストライク対策等に向けたプロトタイプ社会実装実験を実施する。これらの活動を通し、特に対象へのセンサ装着が難しい、広大な自然空間の中で羽ばたき等を伴い自由に移動する飛翔体・飛翔生物を瞬時に把握するリアルタイム振動カメラ技術を武器にした新たなビジネスの展開を目指す。
令和4年度
(2022年度)
大気圧熱プラズマジェットエッチング装置の実用化 広島大学
大学院先進理工系科学研究科
教授
東 清一郎
最先端の高集積半導体デバイスやパワーデバイス、更にはフラットパネルディスプレイ製造工程に不可欠なレジスト除去に大気圧熱プラズマジェットを適用する技術をコアとし、従来のエッチング液による除去工程を置換える新たな製造装置の実用化見通しを得ることを目的とする。販売する装置のプロトタイプ製作とマーケティングに必要な装置性能・信頼性等に関するデータ取得をおこない、顧客候補へのヒアリングにより起業への道筋をつける。
令和4年度
(2022年度)
皮弁移植後の血流監視デバイスの開発 広島大学
学術・社会連携室
共同研究講座講師
松浦 康之
皮弁(血管の付いた組織)移植は、火傷、口腔癌や乳癌等の癌切除後の再建、外像により切断された手、足、指の再接合のため、世界中で実施され手術数も増加している。一方、血管を吻合するため、術後に移植組織の25%で血流障害が発生し、2~5%の移植組織が壊死している。
従って、障害発生に素早く対処するため、術後72時間は、医師が2〜3時間毎に血流状態を確認しているが、一般的な血流評価方法は、医師自身による臨床的評価であり、経験やスキルへの依存性の高さ、医療従事者の長時間拘束が課題となっている。我々は、小型のセンサーで非侵襲的かつ連続的に組織を監視し、障害発生やその兆候を検出する医療機器を開発する。
令和4年度
(2022年度)
安全キャビネット内包型の検体前処理自動機の実用を見据えた改良研究 広島大学
医系科学研究科 細胞分子生物学研究室
助教
山本 佑樹
一昨年より爆発的に感染が広がるSARS-CoV-2ウイルス (新型コロナウイルス) は、現在も変異を繰り返し、未だ収束の目処が立たず、今後はウィズコロナで社会活動を続ける必要がある。新型コロナウイルス感染の確認には、PCRによるウイルス有無の検査が行われてきたが、検査に伴う作業の煩雑さや検査技師の感染リスクが問題となっていた。この課題に対して私たちは、感染リスクの高い検体を安全キャビネット内で不活化、その後の検査に適したフォーマットに分注を行う自動機の開発をしてきた(右図)。本研究では、現在挙がっている課題点を改善した2号機を作成し、広島県内の検査現場で試用してもらい、臨床現場のニーズについてフィードバックを収集し、実用化レベルの自動機を開発することを目的とする。臨床検査の現場より挙げられた改良点を基にしたプロトタイプ自動機を開発し、本機器の実用化を目指す。
令和4年度
(2022年度)
Medical-EdTech(薬剤師学習支援システム)
2023年4月
「株式会社Medswell」起業
岡山大学
岡山大学病院 薬剤部
特任助教
牛尾 聡一郎
医療機関で発生した回避可能な有害事象の4分の1は薬剤に起因すると言われており、実際に約34万人の患者を調査した結果では、約4000人に本来なら回避可能だった薬による健康被害が生じたと報告されている。我々薬剤師は薬による治療の“最後の砦”として、本来なら回避可能だった薬による健康被害をゼロにしなければならない。薬剤師の学習には、座学・講義や自分の経験から知識を得るといった方法がある。しかし、対応事例が少ない場合、十分な経験および知識のインプットができず“最後の砦”としての充分な役割を果たせない。我々が提案する「Medical-EdTech」(薬剤師学習支援システム)は、シミュレータと苦手領域・性格特性の判定というこれまでにない特徴を有し、疑似症例を活用して不足していた知識・経験を補完する。更にこの学習分析結果をスキル指標とすることで薬局・病院などの臨床現場での人材採用に活用でき、また育成にも利用することで安全な医療の提供に大きく貢献できる。
令和4年度
(2022年度)
心臓チップの実用化 岡山大学
学術研究院医歯薬学域医学系システム生理学
研究准教授
高橋 賢
本研究は、マイクロ流路を備えたチップ上に細胞を培養することによりヒトの心臓機能を再現する心臓チップを作製し、薬効薬理・毒性試験を行う方法を確立する。これにより、医学研究・創薬研究の発展を促し、大学の知的財産と技術の社会還元を目指すものである。実験動物を用いた従来の医学研究・創薬研究は、ヒトへの適用性が低いことに加え、動物倫理の問題がある。本事業はヒト心臓チップを実用化することでこの問題を解決し、心不全や不整脈など様々な心疾患の治療法開発に貢献することで社会還元を行う。この目的のために、臓器チップ・疾患モデルを用いた技術のライセンシングと、薬物の薬効薬理・毒性試験を行うスタートアップ企業の設立を目指す。
令和4年度
(2022年度)
誠に優しい口腔内感染制御マテリアルの創造 〜Soft-Landing Agingを目指した高齢者向け口腔ケア製品の事業化〜 岡山大学
大学院医歯薬学総合研究科 歯周病態学分野
博士課程 1年次
高本 将司
超高齢社会に突入した昨今,口腔内バイオフィルムが原因で発症する誤嚥性肺炎が社会問題に発展している。その要因は,口腔領域に対する感染管理の欠如が一因であることから,感染制御が可能なマテリアルへの期待が高まり,現在多種多様な薬剤(洗口液等)が販売されている。しかし,口腔粘膜が弱化した要介護者にその適用は困難であり,刺激のない優しい洗口液や洗口液以外の感染制御(食品等)が必要とされる。研究代表者らは,これまでのシーズを生かして製造販売会社の起業を計画した。そのために,① 市場調査,② 試作品の作製,③ 性能の検証,④ 特許取得,⑤ 臨床研究,⑥ 量産品の作製,を予定している。本年度は,①〜③を実施する。
令和4年度
(2022年度)
スマート握力トレーニングシステムの開発 ~0→1への運動習慣獲得~ 岡山大学
医療技術部(総合リハビリテーション部門)
作業療法士
藤岡 晃
我々は、関節リウマチ(以下、RA)患者用に空気で膨らませたプラスチックカフを握る事で、握力計測が可能となるRA用デジタル握力計を開発した。今回それを発展させ、介護予防事業の通いの場への参加に消極的な運動習慣の無い高齢者、すなわち要介護者予備軍の高齢者に対し、自宅に居ながら運動に関心を持つファーストステップの状態へ行動変容すること(0→1)を目的にスマート握力システム(プロトタイプ)を開発する。本機器は基本的な運動機能強化に加え、Wi-fi機能を搭載し、国家資格を持つリハビリテーション専門職の遠隔通信による伴走や、ゲーム機能等を備える。今年度は①スマート握力システム(プロトタイプ)の完成②RA用デジタル握力計の完成③市場調査を実施する。
令和4年度
(2022年度)
下肢閉塞性動脈疾患に対する新しい血管再生治療薬の事業化にかかる検証活動
2023年6月
「株式会社Walkable Future」起業
愛媛大学
大学院医学系研究科・薬理学
助教
外山 研介
下肢閉塞性動脈疾患の有症状者は40-50万人いるといわれており、そのうち年間約5〜6%が潰瘍や壊疽を生じたり、そのために肢の切断を余儀なくされたりすると言われている。しかしながら、既存の血管再生治療による重症虚血肢の切断回避率は約4割前後と言われていて、市場(患者)のニーズとは大きな隔たりがあると考えられる。動物実験ではあるが、我々は血管内皮細胞の複製過程を負に制御する分子を見出した。当分子を阻害すると、従来の再生治療よりも高い効果が得られた。この新技術を創薬化するための事業検証を行い、我々の持つ技術シーズを製薬企業へライセンスアウトして製品化し、市場のニーズに応えたい。
令和4年度
(2022年度)
フカボディプラットフォームの事業化を目指したフィージビリティスタディ 愛媛大学
プロテオサイエンスセンター
准教授
竹田 浩之
研究代表者は未利用水産資源であるエイラクブカを用いて高付加価値の特殊抗体VNARを開発する「フカボディプラットフォーム」の事業化を目指して活動している。創業するベンチャーは診断薬企業などの企業を顧客とし、VNAR抗体を共同開発し対価を得るプラットフォームビジネスを展開する。本研究では、顧客候補へアピールできる標的に対するVANR開発のフィージビリティスタディを実施する。また顧客ネットワーク拡充、ニーズ調査、市場調査、共同研究の可能性調査のため、国内外の顧客候補企業との面談を行う。
令和4年度
(2022年度)
IT技術を活用したがん副作用早期発見ツールの開発・運用 愛媛大学
医学部 臨床腫瘍学講座
教授
薬師神 芳洋
がん治療の多くが長期の加療を要する事から、治療の主体は入院から外来にシフトし、生活の質を維持した外来治療が求められている。一方、在宅で医療者と離れた環境では、がん患者の不安も大きい。本プロジェクトは、医療者への情報共有や患者の自己管理が可能な患者自身のスマートフォーンを用い、がん患者ならびに医療者双方からアクセス出来るIT技術を活用したがん副作用早期発見ツール(がんの副作用を在宅でありながら医療者が監視するシステム)の開発・運用が目的である。
令和4年度
(2022年度)
高いサイクル特性を示す有機正極活物質の事業化検証 愛媛大学
大学院理工学研究科
特任講師
吉村 彩
二次電池の正極活物質として有機材料が注目されているが、高い溶解性(=低いサイクル特性)が問題となり、実用化には至っていない。研究代表者は最近、電池の内部で重合する有機活物質を開発し、サイクル特性の向上に世界で初めて成功した。そこで、開発した有機活物質を二次電池の関連メーカーへB to Bで提供すると共に、メーカーの要求性能を満たす新規分子を提案・提供するベンチャー企業の設立を目指す。事業化に向けては活物質のスケールアップ合成法および安価合成法の確立は必須である。そのため、二次電池の関連メーカーへのヒアリングを行い、その結果に基づくスケール・価格目標を、使用試薬や反応条件を精査することで達成する。また、活物質の構造と電池特性の相関性を調査し、要求性能を満たす新規分子の設計指針を確立する。
令和4年度
(2022年度)
ウェアラブルセンサと深層学習を用いた歩行障害診断装置の開発 愛媛大学
大学院理工学研究科
教授
李 在勲
本研究課題では、医療福祉およびヘルスケア分野において歩行動作の障害程度を簡単に診断できるウェアラブル・センサ・システムの事業化を目指す。現在、リハビリテーション臨床現場において歩行障害程度の評価は、主に理学療法士の目視による主観的判断で行われており、より効果的かつ客観的な方法が求められている。その解決策として、小型慣性センサと深層学習を用いて歩行動作を認識するシード技術を、歩行障害者から抽出されるビッグデータに適用することで、歩行動作に対する障害程度を簡単に評価できるウェアラブル・センサ・システムの試作機を製作し検証する。さらに、日常活動における歩行動作のモニタリングが可能な一般人向けのヘルスケア機器への実用化を模索する。
令和4年度
(2022年度)
高可撓性金属箔メタルマスクの微細製造技術確立と低環境負荷デバイス製造法への応用実証 島根大学
総合理工学部
教授
葉 文昌
メタルマスクを使った薄膜パターン形成法は、フォトリソグラフィよりもはるかにコストが少ない方法であり、OLEDの画素発光デバイスの形成、プリント基板の電極形成、太陽電池の電極形成、などで実用化されている。一方でこの方法は開口幅を50µm以下にするとマスクの耐久性が格段に下がり、実用性に限界が生じる。またより小さい寸法が求められる薄膜トランジスタ(TFT)のようなアクティブデバイスの製造には応用できなかった。開口幅を小さくすると耐久性が下がる理由は、開口幅は板厚以下にするのができず、板厚を50µm以下にすれば折り目が付きやすくなるからである。そこで私はアモルファス合金箔に着目した。まず熱膨張係数がガラスとほぼ同程度であるので温度変化によるずれが生じない。次に硬度がガラス並みの900Hvであるので傷がつかず、折り目もつかない。従って板厚を10µmと薄くしても使用に耐えられる。更に可撓性を持つので、超薄ガラス基板と貼り合わせてロールツーロールプロセスでTFTを作製することができる。これによってディスプレイ製造時廃棄有害物質をほぼ0に減らせる上に、製造に要するディスプレイ・TFT回路の製造コストを劇的に下げることができる。本開発計画ではこのアモルファス合金箔でメタルマスクを作製し、メタルマスクでpoly-Si TFTを試作して高性能TFTを作れることを実証する。メタルマスクの加工は、紫外レーザー直接描画法によるフォトリソグラフィで行う。目標とする細線パターンの最小幅は20µmである。
令和4年度
(2022年度)
磁界バイアスプローブ方式による高精度ウェアラブルブレインマシンインタフェース
2023年5月
「株式会社G​u​s​h​」起業
広島市立大学
大学院情報科学研究科
教授
樋脇 治
ブレインマシンインタフェース(BMI)は、人間とコンピュータの間の情報を高速・正確に接続する革新的な技術として期待されている。これまでのBMIでは、全頭に渡り高時間分解能かつ高空間分解能で脳信号を読み取ることはできなかった。本技術シーズは、頭皮上に置いたコイルから発生させた磁界を脳にバイアスする方式の非侵襲型BMI (磁界バイアスプローブ式BMI)であり、非侵襲的に全頭の脳信号を高時空間分解能で読み出すことに世界で初めて成功した。ベンチャーを起業することにより、磁界バイアスプローブ式BMIを事業化し、学術研究・医療・ヘルスケア・エンタメなどの多岐に渡る分野において世界市場に展開する。