採択プロジェクト

大学・エコシステム推進型 
スタートアップ・エコシステム形成支援

京阪神スタートアップ アカデミア・コアリション

2022年度

 (グレー網掛)は終了課題です。所属・役職名はすべて採択時のものとなります。

採択年度 研究開発課題名 研究代表者 概要
令和4年度
(2022年度)
人工リボソームによる次世代中分子医薬プラットフォームの構築 京都大学
農学研究科
助教
青木 航
中分子ペプチド医薬は、低分子医薬や抗体医薬ではアクセスが難しい標的をターゲットにできる可能性があり、次世代のモダリティとして注目を集めている。
中分子ペプチド医薬を探索するスタート地点として非天然ペプチドライブラリが使用されることが多いが、その合成方法に課題が存在する。具体的には、非天然ペプチドライブラリを構築する際に天然リボソームが使用されることが多く、重合できる非天然モノマーの種類や個数に制限が存在する。天然リボソームが使用される理由は、リボソームは生命の必須因子であり、変異を導入したリボソームを創ることが難しいためである。
応募者は、リボソーム遺伝子を出発物質として試験管内でリボソームを合成する方法を発明した。本技術では、細胞毒性を考慮することなく、任意の変異を導入して機能を改変した人工リボソームを創出できる。本技術を応用し、多様な非天然モノマーを効率良く重合できる人工リボソームを創出することで、人類が利用可能なポリマー空間を大幅に拡張し、優れた特性を持つ中分子医薬の創出を実現する。
令和4年度
(2022年度)
ブランチポイントを標的としたアンチセンス核酸によるエクソンスキップ法の一般化POC (Proof Of Concept) 取得と有効配列の特許化による遺伝性疾患治療法の事業化 京都大学
医学研究科
特定講師
粟屋 智就
遺伝性疾患の根治的治療法のひとつとして、mRNAから特定のエクソン構造を除去することで遺伝子産物の機能を回復させるエクソンスキップ法が注目されているが、そのために必要なアンチセンス核酸(AON)の設計がボトルネックとなっている。本研究プロジェクトでは、特にイントロン中の配列変化によって非エクソン構造のエクソン化を生じる遺伝子変異を対象に、ブランチポイントを標的としたAONの有効性を評価し、有効配列を特許化することで、AON設計とそれらのライセンシングを中心とするベンチャー企業の設立を目指す。
令和4年度
(2022年度)
バイオ医薬品分離・精製の高性能化を実現する新規スポンジ状分離剤の最適化 京都大学
大学院工学研究科
研究員
谷川 哲也
分離の高速化と低コスト化を実現する新規分離媒体・スポンジモノリス(SPM)を抗体医薬品開発ユーザーに販売することを目標とする。抗体医薬品の製造には、培養と精製に多大な労力を要し、特に精製過程における分離剤の高性能化とコストダウンに対する潜在需要が高い。SPMは安価な汎用熱可塑性ポリマーを原料とした巨大貫通孔(10〜数百μm)を持つ柔軟な一体型の多孔体であり、プロティンA等任意のタンパクを結合した「ハイスループットかつ低価格なアフィニティー分離剤」として十分な市場競争力を有している。ここでは抗体医薬品の開発初期の研究者を主なターゲットとして、SPM分析用製品の性能向上と最適化および製造再現性の確保に関する研究を行う。
令和4年度
(2022年度)
新規フェロトーシス阻害剤の実用化研究 京都大学
医学研究科
特定助教
豊本 雅靖
本プロジェクトでは、研究代表者らが見出した新規フェロトーシス阻害剤の実用化を目指します。フェロトーシスは2012年に提唱された制御性細胞死であり、神経変性疾患を含む多くの疾患の病態進行に関与すると報告されています。我々は、難治性疾患の治療を新規フェロトーシス阻害剤で実現するために、前臨床試験を実施します。
令和4年度
(2022年度)
Society 5.0の実現に向けたテーラーメイドな導電性酵素の開発 京都大学
京都大学大学院 農学研究科 応用生命科学専攻 生体機能化学分野
助教
宋和 慶盛
「ヘルスケア向け生体物質を、いつでも、どこでも、測定できる」という顧客価値を実現するために、バイオセンサ素子の開発に取り組む。コアコンピタンスとなる酵素開発に注力し、第3及び第4世代型バイオセンサのPoCを検証するとともに、基本特許を申請することで知的財産権を確保する。具体的には、低分子から高分子に至る幅広い物質への基質選択性を有した導電性酵素を開発し、信頼性の高いセンサ技術基盤を確立する。電子機器やアパレル、スポーツ用品、介護器具メーカーなどを顧客として想定し、①FS向け共同研究、②PoC向け共同開発、③酵素販売の3つのビジネスモデルを想定し、プラットフォーム型研究開発ベンチャーの立ち上げへの準備を加速させる。
令和4年度
(2022年度)
γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT、 γ-GTP)をターゲットにした難治性喘息の新規治療薬の開発 京都大学
国際高等教育院
准教授
韓 立友
申請者らはグルタチオン代謝の鍵酵素として様々な疾患に関わるGGTの特異的阻害剤GGsTop等を世界で初めて、創製し、物質特許も成立している。GGsTopは様々な疾患モデルで有効性が示され、喘息モデルでも好酸球及び広範な炎症性サイトカインの発現抑制作用を介して効果を示す。(抗体医薬は単一のサイトカインのみで不十分。)これを受け、申請者らは比較的患者が多いものの、未だ効果不十分例が多い難治性喘息の革新的治療薬としてGGsTop光学異性体等の研究開発を進める。STARTプログラムに採択されれば、多くのデータを取得した上でベンチャーを設立し国内外で研究開発を進め多くの患者の役に立つことを願っている。
令和4年度
(2022年度)
熱計測技術とサーマルリザバーコンピューティング技術の融合によるサーマルマネジメント事業の創出 京都大学
工学研究科
准教授
廣谷 潤
本研究開発では、ナノスケールからマクロまでの様々なスケールでの熱計測技術を基盤技術としつつ、研究代表者らが最近見出した世界初のサーマルリザバーコンピューティング技術を融合させることで、未利用のまま捨てられる排熱を利用する世界初の熱マネジメントカンパニーの設立にチャレンジする。
本事業では、材料メーカーなどの材料そのものの熱物性計測の受託開発だけでなく、サーマルリザバーコンピューティング技術を利用することで、自動車、バッテリー、住宅、PCなどの幅広い分野で発生する熱を利用したデバイスの状態モニタリングが可能なエッジコンピューティング技術開発・デバイス販売・コンサルティング事業を実施する。
令和4年度
(2022年度)
植物バイオマスからのファインケミカル一貫生産技術開発 京都大学
生存圏研究所
特定研究員
水越 克彰
脱炭素化、カーボンニュートラルを実現する切り札として、植物バイオマスの化学素材への変換技術が求められているリグノセルロース系バイオマスは食料とは競合しないが、難分解性のリグニンが物質変換の障壁となっており、その利活用が十分に進んでいない。現行の高温高圧の過酷な条件での物質変換(紙パルプ産業におけるクラフト法など)では、得られるリグニンは変性し、マテリアルとしての利用が困難である。本事業では環境負荷の少ない温和な新プロセスにより低変性リグニンを取得する。さらに、スケールアップ試験を実施し、ベンチスケール設計に必要なデータ収集を行う。また、市場調査、用途検討を行い、大学発ベンチャー起業プランを策定する。
令和4年度
(2022年度)
アセトアルデヒド関連疾患予防による健康社会の構築 京都大学
医学研究科
教授
武藤 学
アルコール飲料は「百薬の長」と言われ、適量なら健康によいとされてきた。しかし、2019年のアルコールによる死亡は240万人を越え、世界全体の死亡の4.3%に相当する。世界的に「適量の飲酒量はない」とされる中、アルコールと健康問題を根本的に変える方策は未だ存在しない。アルコール飲料に関連するアセトアルデヒドは、世界癌研究機構(IARC)が、食道癌や頭頸部癌の明らかな発癌物質と指定しているとともに、骨粗鬆症や慢性疼痛など様々な疾患にも関連している。本提案では、個人差が大きいアセトアルデヒドを検診等で簡便に測定し、累積アセトアルデヒド量をスマートフォン等のアプリで管理することで、未発症者の健康管理をするとともに、アセトアルデヒドの代謝能を活性化するサプリメントを開発し、日常的にアセトアルデヒドによる生体内の傷害を軽減する健康社会を実現する。
令和4年度
(2022年度)
多光子励起イメージング向け超短パルスレーザ光源及び光学系の開発 大阪大学
大学院医学系研究科
教授
石井 優
多光子励起イメージングでは組織を切ることなく深部画像を直接的に取得できるため、生体組織のリアルタイムイメージングを可能とし、生体メカニズム解明への貢献が期待される。これまでの研究成果から、波長1,200nm付近の超短パルスレーザ励起により観察されるコラーゲン、ミオシン、チューブリンでの第二高調波、細胞核内物質の第三高調波を3次元画像化することでがん細胞の特徴を精度高く分析できることが判明したが、市場にはそのようなレーザ光源がほぼ存在せず、また光学系含め高価なものとなっており、汎用的な分析機器として研究用途に利用することが困難となっている。本研究では、レーザ光源の開発及び低コスト化、対物レンズ等の光学系、走査部、検出部、画像処理等の最適化等に取組む。
令和4年度
(2022年度)
独自のMI(マテリアルズインフォマティクス)アルゴリズムを用いた自律型材料評価システムの事業化 大阪大学
大学院工学研究科
教授
小野 寛太
カーボンニュートラルの実現に不可欠な全固体電池をはじめとする新材料の研究開発を飛躍的に効率化するため、AI およびロボットを活用した自律型材料研究開発システムを開発する。本研究開発課題では、材料研究開発のプロセスでボトルネックとなる材料の構造の評価・解析を自律化したシステムについてプロトタイプ作製および全固体電池材料での実証を行う。本研究開発課題で構築するシステムでは、研究代表者が開発した、独自のMIアルゴリズムにより、従来は熟練者が行なっていた高度な意思決定も含めて、人間の介在なく材料評価・解析を完結させることが可能となる。計測評価・解析は全てMIアルゴリズムにより実行されるため、本研究開発課題で構築したシステムを利用するだけで、全固体電池材料に関する情報を、高速かつ専門人材が実施するのと同等以上の品質で顧客に提供することが可能となる。材料研究開発に携わる企業において、材料開発における圧倒的な生産性向上に貢献し、不足する熟練技術者の業務負担も軽減することを目指す。
令和4年度
(2022年度)
柔らかな構造体の高精度造形を可能とする3Dバイオプリンタの開発 大阪大学
大阪大学大学院基礎工学研究科
博士前期課程/1年
粉谷 聖
本課題では、生きた細胞を含む高さ10 cm以上の柔らかな3次元構造体を高い精度で造形することを可能とする、3Dプリントシステムとそれを搭載する3Dバイオプリンタの開発に取り組む。具体的には、ゼリーやプリン程度の柔らかな構造物を3Dプリントする際には、構造物の自重による変形が造形面の位置を変動させる。これに対して、研究代表者は、インクを固化させる成分を含むサポート材とインクを交互に吐出しながら細胞含有構造体をプリントすることで、柔らかな構造体を精度よく造形する技術の開発に成功していた。一方で、現状では作製可能な大きさは2 cm程度であり、事業化のためには、高さ10 cm以上の構造物の作製を可能とするシステムへのアップデートおよびそれを搭載したプリンタの開発が必要である。
令和4年度
(2022年度)
構造物の法定点検の課題を解決するコンセプトベースで識別するAIを活用したインフラ点検システムの実現
2023年4月
「株式会社コクリエ」起業
大阪大学
産業科学研究所(兼)先導的学際研究機構 共創インキュベーションセンター
助教
鶴田 修一
日本のインフラ構造は老朽化が進んでいることに加え、インフラ構造物の定期点検を担う技術者が不足している。現在の定期点検は多くの人手とコストを要する近接目視を基本としているが、その代替手法として期待されているのが、AI画像診断である。本提案のコンセプトベースで識別するAIは、従来のAI技術では実現できなかった、AIの識別指標を可視化することができるため、構造物の健全度診断において、劣化状態に加え、立地や交通量などの環境要因も含めた総合的な判断を行う専門技術者の「暗黙知」を学習したAIを実現できる。これにより、誰でも簡単に専門技術者レベルの定期点検が可能となり、定期点検を行う技術者不足を解消することができる。
令和4年度
(2022年度)
有機ハイドライドの概念拡張に基づく「H2精製を兼ね備えたH2貯蔵技術」の事業化 大阪大学
大学院工学研究科
准教授
星本 陽一
日本は様々な炭素資源から安価かつ高純度なH2を製造・運搬する技術の開発を国策としているが、その実現には次の二つの技術的課題を解決する必要がある:【①製造】改質後に得られる粗水素(H2とCO、CO2などの混合ガス)からCO、CO2を除去するコストの削減、【②運搬】安全・安価にH2を運搬する有機ハイドライド技術の開発。
一方、申請者は粗水素のままで不飽和有機物を水素化できる触媒系を実現することで、粗水素から一挙にH2を分離・貯蔵・運搬する技術の実現可能性を実証した。本研究開発課題では、申請者の発見した技術を実用化に資するH2貯蔵率を有する有機ハイドライドへと拡張し、粗水素をフィードストックとして活用する革新技術の社会実装を目指す。
令和4年度
(2022年度)
スマートフォン動画と機械学習を用いた歩行機能モニタリングシステムの構築
2023年6月
「株式会社ayumo」起業
大阪大学
大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部国際医療センター
特任講師
森口 悠
高齢化に伴う介護負担が課題となる日本は、運動習慣の定着と身体活動量の増加を目標に掲げ健康寿命の延伸に取り組んでいる。中でもウォーキングは全ライフステージを通じた身体活動であり、健常な生活の基盤となる歩行能力の維持は健やかさの源泉ともいえる。本研究ではスマートフォンを使った動画撮影と深層学習モデルを組み合わせ、歩容から健康状態を推定する指標(健康歩行年齢や疾患スコア)を算出し、歩行の健全性を簡便にモニタリングする技術を開発する。これにより、健康増進に取り組む個人やヘルスケア・介護事業者に対して、健康および「未病」の見える化、さらに医療機関へ受診を要する状態の早期発見と見逃し防止を実現しながら、運動習慣の定着と生活習慣病の予防に資する歩容評価システムを提供する。
令和4年度
(2022年度)
「ロボット手術」および「立体内視鏡手術」支援用、高画質・広視域な大画面裸眼3Dディスプレイシステムの開発
2023年4月
「株式会社RealImage」起業
大阪公立大学
大学院工学研究科
教授
髙橋 秀也
特殊な眼鏡が不要な裸眼3Dディスプレイは、低画質で視域が狭いため普及していない。これらの問題を克服するために、申請者らはアイトラッキング技術を利用して、特殊な眼鏡が不要な高画質・広視域の裸眼3Dディスプレイを開発し、複数の基本特許を取得している。本研究開発課題においては、大画面3Dディスプレイの製造手法とマスク装着時も可能なアイトラッキング技術を確立し、裸眼3Dディスプレイの導入が期待されているロボット手術等の立体内視鏡を用いた手術用に、高画質・広視域で立体内視鏡画像をリアルタイム表示可能なシステムを開発する。開発した技術をもとに、3Dディスプレイにおいて国内で実績のあるメーカー(製造販売担当)との協業により、医療、設計・デザイン、教育、アミューズメント等の分野で市場参入を目指す。
令和4年度
(2022年度)
すべての女性にボーダレスな健康情報を提供するAMH迅速定量検査キット開発とアフターケアアプリ開発 大阪公立大学
大学院医学研究科
博士課程大学院生
仁田原 裕子
妊娠を望む女性にとって、自身の卵巣予備能を知ることは、妊孕性のみならず自身の人生設計において重要な情報となる。アンチミュラー管ホルモン(AMH)は、女性の卵巣予備能―すなわち卵巣の中に残っている卵胞の数―の目安となるホルモンであり、血液検査で検査可能である。しかし現在、一般女性のAMH検査の認知度は低く、さらにAMH検査への主な門戸は不妊治療専門医療機関に限られており、検査への経済的・心理的ハードルが高い。すべての女性にAMH検査へのアクセスを提供するため、ラテラルフローデバイスを用いたAMH迅速定量検査技術を用いた、低コストかつ手軽に測定可能な検査キットを開発し、一般薬局での購入を可能とする。さらに、検査結果を登録・結果説明するアプリ開発も同時に行い、検査結果通知後のメンタルケアにも重点を置く。
令和4年度
(2022年度)
交流磁界と圧電素子による環境発電およびワイヤレス給電技術 大阪公立大学
大学院工学研究科
准教授
吉村 武
永久磁石と圧電発電素子を組み合わせ、交流磁界から電力を取り出すことができる素子の開発を行います。この技術により、電線に近づけるだけで電力を取り出せるIoT端末向けの電源や、生体にも適用できるワイヤレス給電を実現できます。原理検証や信頼性試験は完了しており、本研究では実用化に向けて電力回収回路、センサ、通信モジュールを組み込んだシステムの開発に取り組みます。汎用的な利用が想定される電池レスのBluetoothビーコン端末、CO2ガスセンサ、屋内位置情報システム等を実現し、実証実験やデモンストレーションなどを行える体制を構築します。本技術の実現に必要な部品はすべて民間企業で製造されており、ファブレスで素子を製造し、端末とシステムの両方を販売するビジネスモデルを想定しています。
令和4年度
(2022年度)
分子サイズで分離を可能とする高耐久性無機中空糸分離膜の事業化に向けた検討 関西大学
環境都市工学部
准教授
荒木 貞夫
本ベンチャーは、申請者が開発してきた無機膜技術をベースに、様々な分離ニーズに応じた最適な分離膜の提供を通じ、よりサスティナブルな社会構築に貢献することを目的としている。我々が提供できる無機中空糸分離膜は、従来品では使用できないプロセスへ導入の可能性があり、新たな市場創出や付加価値の提供を実現できると考えている。現在、分離膜には性能だけでなく、過酷な使用条件に耐えうる耐熱、耐薬品性も要求されている。そこで、本申請では、申請者が開発してきた高性能な無機中空糸分離膜の耐熱性、耐薬品性を明らかにする。これらの検討を通じて、劣化機構の解明や、耐久性向上の指針、性能の経時予測技術の確立を目指す。
令和4年度
(2022年度)
エアモビリティの信頼性向上のためのセンサ組込み小径転がり軸受による運転状態モニタリングシステムの開発 関西大学
システム理工学部
教授
谷 弘詞
ドローンや空飛ぶ車などエアモビリティの市場は今後指数関数的に増加していく。そのためエアモビリティの信頼性向上・安全対策は極めて重要である。モータの故障は転がり軸受に起因するものが多いが、エアモビリティに使用されているモータ軸受は小型なため、運転状態モニタリングによる故障診断は困難であった。我々は摩擦発電を用いた薄型センサを組込んだ小径転がり軸受を開発し、その軸負荷荷重やグリース劣化の検出が可能なことを検証した。そこでエアモビリティ用のセンサ組込み転がり軸受を試作実証する。その結果をベースに起業時には、モータ軸受運転状態モニタリングとエアモビリティ安定制御技術の開発、エンドユーザとの共同による用途別の応用技術の提供を進める。
令和4年度
(2022年度)
クリーンでローコストな水圧ロボットアームによる潜水作業の実証実験 立命館大学
理工学部 ロボティクス学科
教授
玄 相昊
危険な水中作業は多くのダイバーによる苦役で成り立っている。本研究は、安価で環境を汚染しない世界初の水圧駆動アームを搭載した水中ロボットを開発する。ロボットアームはRemotely Operated Vehicle(ROV)の製造販売を行う企業の協力のもとでROV本体に組み込む。潜水士の監修のもとで水中作業の実証実験を行い、その有効性を検証する。研究終了後、潜水サービス業者を含む各種工事業者に対して、ローコストで安全な水圧ロボットを提供するメーカーを設立する。その後、新会社は既存ロボットメーカーと協業することで、陸上を含むあらゆるフィールドへロボット技術を展開し、人々を苦役から解放するグリーンロボットのトップメーカーへの成長を目指す。
令和4年度
(2022年度)
AI 画像認識のモデル構築からデバイス適応までの自動化技術の開発とそれによる AI 格差の是正 立命館大学
理工学部 電子情報工学科
准教授
孟 林
現在、物体検出の主流であるAIモデル(YOLO等)は非常にサイズが大きく、導入デバイスが高価である。さらに、AI画像認識技術の実装には専門技術者が必要となるが、人材不足による確保の困難さと莫大な人件費がかかるなど深刻な問題が生じる。本申請は、AIのモデル構築からデバイスへの導入までの実装過程を自動化することを目指す。これによりAIの実装を行う専門技術者が不要となる。また、本申請における自動化技術の開発とモデル圧縮を合わせることにより、AI導入を望むすべての方がAI技術者を雇用せず、また手持ちのデバイスや安価なAIモデル搭載デバイスでAI導入が可能となるサービスを展開し、AI導入の格差是正へ貢献することを目指す。
令和4年度
(2022年度)
SDGsに配慮したアブラナ科露地野菜から始める花成自在制御法の開発と事業化 奈良先端科学技術大学院大学
先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域
教授
伊藤 寿朗
ダイコン、ハクサイなどのアブラナ科露地野菜は、花が咲くと野菜の収量や品質が著しく低下する。そのため、農業現場では日中の高温により花成が抑制されるという知見に基づき、多大な労力やコストをかけたトンネルビニール栽培がなされている。本提案では、アブラナ科モデル植物において申請者らが見いだした花成遅延物質の作用機構解析および構造活性相関解析を始めとして、微生物相や動物への安全性を担保した花成自在制御技術を開発する。本技術の普及により、海洋汚染の主因であるプラスチック製品の使用をなくし、SDGsに配慮した持続的生産体制を構築する。露地野菜生産者にとっての省労力化・設備費コストの軽減、消費者にとっての安定供給・栄養価面での品質向上を実現する。
令和4年度
(2022年度)
健康寿命の延伸に資する筋骨格ヘルスモニタリングシステムの開発と事業化 奈良先端科学技術大学院大学
先端科学技術研究科
准教授
大竹 義人
我が国は平均寿命が80歳を超える長寿社会となったが、人生最後の約10年間は他者に介護の負担を生じている。これは、保険医療費の増大や介護労働需要の急増につながる大きな問題である。その解決のため、厚生労働省が推進する健康寿命延伸の一つがフレイル対策であり、原因の一つである運動器障害は、要介護要因の25%を占める。これを早期診断するため、本研究代表者らが持つ医用画像認識の技術シーズを基に、筋骨格の詳細な健康状態チェックを簡便に行うシステムを開発し、事業化する。次に、先端医療機器が普及していない国や地域への事業展開を行う。また、ここで得られた筋骨格データを解析することで、スポーツトレーニングや加齢による筋骨格変化の解析、食生活や運動等の地域性あるいは遺伝子からの運動器の未来予測といった新たな市場への展開を進める。
令和4年度
(2022年度)
SDGsに貢献する多色化自発光植物(LEP:Light Emitting Plant)の研究開発と事業化
2023年9月
「株式会社LEP」起業
奈良先端科学技術大学院大学
デジタルグリーンイノベーションセンター
教授
出村 拓
ホタルや発光キノコなど発光生物が有する生物発光の仕組みを導入することで自ら発光する植物(自発光植物)の開発が進んでいる。研究代表者らはこれまでに、実験植物であるシロイヌナズナやタバコ、さらには樹木類であるポプラ(交雑アスペン)の自発光植物の作出に成功している。海外では米国ベンチャー企業Light Bio(LB)社が類似の技術によって緑色自発光植物の商品化を目指しているが、研究代表者らは多色化の技術において独自性を持つ。本研究開発では、自発光植物の事業化を加速するための試作品を製作するとともに、国内外のマーケティング調査、特許調査を行い、さらに、多色自発光植物をアピールするためのプロモーションビデオなどの宣材を制作する。そしてSDGsに貢献するユニコーン企業を目指す。
令和4年度
(2022年度)
細胞の回転運動を指標としたダメージレス細胞評価装置の社会実装に向けた研究開発 兵庫県立大学
大学院理学研究科
准教授
鈴木 雅登
本事業では、損傷なく非標識に単一細胞の活性化を検出する装置を開発し、安全安心な細胞移植治療の普及を目的にする。昨年度、本制度を利用して原理検証機を具現化し、T細胞が抗原と結合した際に生じる活性化の非標識な検出に成功した。一方で、細胞の活性化を検出する際に、細胞を高周波数の回転電場に短時間曝露させる必要がある。移植治療用への細胞の供給を目指す場合、電場に曝された細胞の長期的な安全性の担保が必要不可欠であることが有識者とのヒアリングから判明し、これが社会実装に向けてクリアすべき最後の課題である。そこで原理検証機に単一細胞の回収機構を付加し、回転電場に曝された細胞を回収する。そして遺伝子レベルでの発現量や一週間程度の培養速度を評価して本装置によって選抜された細胞の安全性を明らかにすることで、本装置を社会実装へつなげる。
令和4年度
(2022年度)
坂道でも平地のように車椅子を漕ぐことができるサーボブレーキ付き車輪ユニットの開発 関西学院大学
工学部
教授
中後 大輔
本研究では、パッシブシステム技術および人間工学に基づく漕ぎ動作判定技術を統合することで、傾斜路走行時における手動車椅子の走行安定性と直進性を確保し、車道への飛び出しなどの危険性を回避できる手動車椅子用走行支援システムを実現し、社会実装(事業化)モデルの検証を目的とする。研究代表者はこれまで、ブレーキ制御に基づくパッシブ支援型車椅子を提案し、試作機を用いた被験者実験を通じてその有効性を示すとともに、リアルタイムでの漕ぎ動作検出技術と動作推定技術を開発した。本研究ではこれらの成果をベースに、JIS規格の手動車椅子の車輪と交換するだけで走行支援システムとして機能するユニットを開発し、これを搭載した「サーボブレーキ付車輪ユニット」の製品企画・製造会社を設立するビジネスモデルの検証を実施する。