採択プロジェクト

大学・エコシステム推進型 
拠点都市環境整備型

京阪神スタートアップ アカデミア・コアリション

採択年度 研究開発課題名 研究代表者 概要
令和3年度
(2021年度)
抗体配列進化追跡法を用いた抗体創薬プラットフォームの構築 ー新興感染症抗体開発のPOCー 京都大学
工学研究科
准教授
松田 知成
感染症患者の血液から有用抗体を取得する試みは多く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の抗体もすでに取得されている。しかし、既存法ではファージディスプレイなど、抗原を用いる実験操作が必須であり、抗原が判明してからでないと抗体開発に取り掛かることができない。一方、我々が開発した「抗体配列進化追跡法」は、抗原を用いず、患者血液の遺伝子解析だけで抗体スクリーニングできるため、新興感染症に際して、病原体不明でも抗体開発に取り掛かることができ、パンデミックに至る前に治療抗体を準備することができる。本研究では、これを実証するため、COVID-19患者血液の遺伝子解析のみで、治療抗体が取得できるか検討する。
起業については、クリニカルバイオリソースから様々な有用抗体を開発し、製薬企業にシーズ導出することで対価を得る、研究開発型の抗体創薬プラットフォームビジネスを目指す。感染症の他、癌についても研究を進める
令和3年度
(2021年度)
シリコンの三次元微細構造を利用したアルカリ金属ガス封入セルの実用化検証 京都大学
工学研究科
学生(博士後期課程)
清瀬 俊
間近に迫るBeyond 5G/6G社会の実現のためには高精度な時刻同期が必須であり、インターネットに接続されたあらゆるモノ(エッジデバイス)で高精度かつ安定な時刻信号の獲得が要求される。これを実現するデバイスとして、アルカリ金属の量子力学的な共鳴現象を利用する「原子時計チップ」が期待されている。原子時計チップの構成要素であるガスセルは、反応性の高いアルカリ金属と不活性ガスを小さな容器に封入した部品であり、時刻精度を支配することから「心臓部」と言われている。本課題は、従来のガスセル製造プロセスにおいて課題となっていた小型化と時刻精度の課題を、新奇の「シリコン立体加工技術」で解決する。これにより、数十mm3以下のサイズで、1日の時刻誤差が1μs以下(1000年で1秒の誤差)を達成するガスセル製造プロセスを実証し、開発技術を実用化に向けて推進する。
本技術は、原子時計チップにとどまらず、高精度磁気計やジャイロセンサを含む慣性センサなど、社会基盤を支えるキーデバイスの開発、生産に不可欠であり、速やかな事業化、ベンチャー化により市場投入を図る。
令和3年度
(2021年度)
人工肛門患者の社会復帰を促す、高機能排便制御デバイスの開発
2022年5月
「株式会社Eudaimonix」起業
京都大学
医学研究科 医学専攻 消化管外科学
博士課程2回生
谷 亮太朗
人工肛門は排便を制御できない。そして、患者は現状、袋に便を貯め続ける、というソリューションのみで、社会活動にも影響が及び、QOL(生活の質)の低下もきたしている。この訴えは患者団体のアンケートでも見られており、離職など仕事内容に影響が出た割合は30%以上である。これは日本の人工肛門患者20万人に換算すると、年間6万人にも及ぶ。それに対して、想定しない排出のための漏れ、匂い等に伴うトラブルにより生じる患者の社会的課題の発生頻度を低減し、患者のQOLを改善するデバイスの開発を行っている。これにより患者は現状の人工肛門管理と同等の出費、侵襲性にも関わらず、劇的な生活の変化を手に入れることが可能になると考えている。
令和3年度
(2021年度)
ヨウ素担持DNA結合色素とナノ粒子を用いた新技術 京都大学
高等研究院 物質-細胞統合システム拠点
特定教授
玉野井 冬彦
私達は新規の放射線治療を開発している。従来の放射線治療ではがん細胞に放射線をあててDNAの切断を起こしがん細胞を殺す。私たちのアプローチではがん細胞にヨウ素などの元素を取り込ませ一定のエネルギーを持つ単色X線をあててオージェ電子などの低エネルギーの電子を放出させてDNAの二重鎖切断を引き起こす。こうした新技術を基盤にしたベンチャー、産業の創生を目指したい。
令和3年度
(2021年度)
個人・社会のwell-being回復に向けた認知行動コンサルティング事業の確立
2022年5月
「CoBe-Tech株式会社」起業
大阪大学
人間科学研究科
准教授
平井 啓
社会や組織で生じる社会課題に対し、認知および行動の双方から対象者をグループ化する認知行動セグメンテーションを主として用い、それぞれのセグメントに合わせたナッジを構築することで、社会課題の特性に応じた効果的なソリューションを提案する。
本事業では、「がん検診受診向上のための行動変容アプローチ」(平井,2015)にて上記の手法を実施した「認知行動コンサルティング・アルゴリズム」を確立し、今後さまざまな対象に拡大していくために、まずは喫緊の課題である、在宅・リモートワークにより生じる高ストレス者を対象にアルゴリズムの有用性を実証することを目的とする。そしてプラットフォームとなるアルゴリズムをもとにコンサルティング事業を確立した後、さらなるアルゴリズムの活用、新たなコンサルタントの養成、IT系パートナー企業の参画を経たwebサービス活用などにより、事業拡大を目指す。
令和3年度
(2021年度)
配管自動検査ロボットによるインフラ点検システムの開発 大阪府立大学
大学院工学研究科 物質・化学系専攻
教授
金野 泰幸
【研究開発】研究代表者は大阪府立大学研究推進機構に設けられたものづくりイノベーション研究所にて広く大阪府立大学工業高等専門学校とも連携し多様な環境下で使用可能なインフラ点検対応ロボット開発を機構や材料面から進めてきた。とりわけ、「第5回廃炉創造ロボコン」(福島県双葉郡)では過酷環境下でのインフラ点検応用を検討し、日本原子力研究開発機構理事長賞を受賞した。これらの経験から本SCORE申請チームはインフラ設備に数多く存在する配管設備点検の重要性に着目してきた。配管は高温媒体や化学薬品が縦横無尽に設備内を駆け巡っておりインフラや製造設備の神経網といえるものである。しかし、その点検を行う場合は、容易に目視や移動ができない等の問題がある。本SCORE申請チームは接続部や支持部などが点在する配管システムに対して接続部や支持部を自動的に判断して自走点検し映像や情報を取得する独自の過酷環境対応ロボットシステムを開発中であり本事業を通じた研究開発により事業化の検証を行う。
【ビジネスモデル】ビジネスモデルとしては①70万の橋梁や1万を超えるトンネルなど公共インフラを持つ自治体、さらには②全国数万社に上るプラント設備企業を顧客として、自走点検ロボットシステム販売に加えてプラント点検サービス事業を提供する。
令和3年度
(2021年度)
看護技術自己トレーニングシステム ~コロナでもちゃんと身につく看護技術トレーニングシステム~ 大阪府立大学
大学院人間社会システム科学研究科
教授
真嶋 由貴惠
これまで看護技術は実習室で一斉に練習を行う形式で、限りのある教員数で見回り指導を行って伝達してきた。我々が開発してきたeラーニングシステムは、①「自己学習」による「看護技術手順の確実な習得」と、②「自分の看護技術の内省(リフレクション)」から構成されている。知識面では、映像を活用しつつ、自身の看護技術実施映像を客観的に見て熟達者と比較することによりリフレクションさせ、熟考から看護技術のトレーニングへと学習を進めることを意図している。実証実験を行った結果、このシステムにより正確な手順の習得が可能になることが分かった。今回の新型コロナウィルスのパンデミックでも経験したように熟練者を確保することは急務である。このeラーニングシステムは看護学生や70万人に上る潜在看護師などが迅速に自己学習可能になるため、ビジネス化により普及を加速化する。
令和3年度
(2021年度)
ナノ光アンテナを利用した微生物迅速検査の実用化加速 大阪府立大学
大学院 工学研究科
客員研究員
西井 成樹
食品・医療・医薬品分野で実施されている微生物検査は培養工程を有する検査手法に依存しており、自動化が困難で労務費の比率が多くなるため検査コストが高留まりしていること、また結果を得るまでに1~2日を要するなどの課題がある。さらに、人手に頼る作業が多いことから測定者の熟練度によって結果に差異を生じるため擬陽性や偽陰性のアーチファクトがつきものであった。我々は、金属ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴を活用した簡便で迅速かつ安価な微生物検査法の開発により、食の安全の確保、および感染症の脅威から社会生活を守るビジネスを加速する。
令和3年度
(2021年度)
熱中症早期検知デバイスのPOC創出に向けたシステム開発加速とバイタルデータ実計測 大阪府立大学
大学院工学研究科 電子・数物系専攻
教授
竹井 邦晴
近年、熱中症による病院への緊急搬送例が急激に増え社会問題となりつつある。実際、企業へのヒアリング(約30社)を通して、顧客の「建築現場で働く従業員の熱中症を防止したい」といった要望が強くあることを確認してきた。我々は多機能フレキシブルセンサによってこの熱中症の初期症状を検知することで当該課題を解決する。有力顧客の一日一人100円台なら取り入れたいという意見から、サブスクモデル(一人3千円/月)でのウェアラブルパッチを提案する。本研究課題では、この熱中症早期検知に向けた誰もが自由に利用できるシステム(アプリを含む)開発とそれを用いた被験者からの多種バイタル計測を行う。これらデータを解析することにより、熱中症早期検知のPOCを確立させ事業化へと加速させる。
令和3年度
(2021年度)
AI導入による建築積算監理業務効率化のための革新的支援システム 大阪府立大学
大学院人間社会システム科学研究科
教授
中島 智晴
【研究開発】近年、建築分野においても作業のICT化が進み、作業データはCADなどの導入で大幅に電子化されてきた。しかし、現実的にはデータ構造の特殊性からデータベースの一元化が図れておらず情報検索業務に莫大な時間を要している。また、監査をはじめとする業務確認作業は自動化が最も困難であり、依然として手作業で過去の工事案件を調べており、ICT化の恩恵を受けることが全くできていない。そこで、本研究では建築の重要業務である積算業務(建設工事にかかる費用を事前に算出する業務)に用いる積算データに焦点を当てる。研究代表者は、建設案件の複雑な構造を踏まえて多岐にわたる単位価格情報から最適な単位価格情報を瞬時に選択できる複数の人工知能技術を開発してきた。本成果を用いて建築積算管理業務の作業効率の革新と働き方改革への貢献を目指す。
【ビジネスモデル】まずは現在共同で研究を実施している自治体を対象として建築監理業務のAI支援サービスを提供する。その後、1700を超える全国自治体をはじめとして数多くの建築案件を抱える10万を超える中小規模の設計会社に対してサービス提供を展開し、事業拡大を図る。
令和3年度
(2021年度)
視覚障がい者向け車輪付きガイドナビの機構改良と多対多の遠隔見守りシステムの開発 大阪市立大学
大学院工学研究科
講師
今津 篤志
車輪で接地する装置を用いて視覚障がい者の単独歩行を支援するガイドナビシステムを開発し、リースと見守りサービスによるビジネスモデルを目指す。
2輪の杖型、4輪のシルバーカー型、2輪の杖型+2輪の補助輪型の装置を作成し、それぞれのユーザー体験を確認する。これまでは2輪の杖型を開発していたが、寄りかかって体重を支えたい高齢の方や、2輪の杖型で蛇行してしまう方のために、より確実に案内に沿って歩けると思われる4輪のオプションを開発する。
また、サービス運用時を想定して、複数の当事者の歩行を複数のガイドヘルパーが見守る多対多の複数見守りシステムを開発する。さらに、遠隔ガイドヘルパーが同時に見守ることができる人数を増やすために、自動案内手法と異常検知手法の改善を行う。
令和3年度
(2021年度)
複雑形状物の色彩・光沢・再帰反射の同時非接触測色システムの開発 大阪市立大学
大学院 生活科学研究科
教授
酒井 英樹
色彩や質感を計測する測定器(色彩計、光沢計、3Dスキャナ)は数多く出回っているが、表面に凹凸や光沢のある物に対しては測定誤差が生じやすい。そのため、食品や化粧品、繊維、印刷物、さらに厳格な色の品質管理が求められる工業製品の生産現場では、熟練者の目視による外観検査が未だに欠かせず、生産・流通現場でのDX化の妨げの一因となっている。
本課題では、既存測定器では対応できない、水や油等が表面に付着した対象物や光沢ある対象物等を正確に画像データとして捕捉できる非接触測色技術を開発し、これまで客観化が難しかった物体の外観を高精度で測色的な画像情報として手軽に扱えるようにすることで、目視工程の代替実現などの新たな価値を多方面に提供する。
令和3年度
(2021年度)
監視動画の解析による歩容認証を用いた施設の人物追跡、入退出監視システムの開発 大阪市立大学
大学院工学研究科
准教授
中島 重義
老人向け施設などで、認知症の利用者がスタッフの知らないうちに施設を出ていくことがある。このための監視装置と、スタッフに知らせるアラーム機能を備えた入退出管理システムを開発する。
研究開発として、開発した歩容認証アルゴリズムに、高齢者を被験者とした歩容動画から歩容認証アルゴリズムの追加構築を行い、さらに、web監視カメラを用いた実証精度検証を行う。また、ビジネスモデルとして、高齢者向け住まいの入退出管理を検討する。そのために、2021年度に歩容認証アルゴリズムのシステム開発を開始し、また、高齢者向け住まいへの導入可能性、有用性の調査も開始する。
令和3年度
(2021年度)
有価金属や有害金属の除去・回収を可能とする低環境負荷型高性能金属吸着材料の開発 大阪市立大学
大学院工学研究科 化学生物系専攻
教授
東 雅之
低環境負荷型金属吸着材料の開発は、環境中からの有害重金属の除去による安全な水環境の維持や、都市鉱山に眠る金属の回収などによる循環型社会の実現に貢献する。
我々はこれまでに、食品酵母と食品添加物を用いた簡便な反応により酵母をリン酸化することで大幅な吸着能力改善に成功している。さらに、負電荷を有する有害金属酸化物除去のため、酵母をカチオン化することでセレン酸等の有害金属の除去にも効果があることや、このカチオン化酵母が活性汚泥等の凝集効果を有することを確認している。リン酸化酵母、カチオン化酵母共に死菌を用いるため環境中に酵母が拡散する心配はない。本研究では、吸着能力のさらなる改善と、模擬実廃液等での効果を確認することで実用化を目指す。
令和3年度
(2021年度)
DNAナノテクノロジーを活用した迅速・簡易的な細菌検査キットの事業化検証 関西大学
化学生命工学部
教授
葛谷 明紀
地球温暖化の影響によるとみられる微生物やウィルス等の活発化が進むことで、危険性の増大が指摘されている。食材や調理後食品の食中毒菌や衛生指標菌を検査することで、腐敗・変敗等の防止、食中毒菌の有無を確認することが食品の安全安心の確保には重要であるが、既存の検査では、1検査につき数千円の費用と4日~1週間程度(サンプル送付日数込み)の時間がかかる。
我々は「核酸配列特異的に構造変化し比色するDNAナノ構造体技術」の開発に成功し、約1時間での検査結果判明、コストを現状の1/5とする細菌検査キットの実用化が見えるところにきた。本研究開発では、細菌16S rRNAの増幅法の開発、細菌種特異的に比色するDNAオリガミナノデバイスの設計、および衛生検査市場調査や事業者のニーズの把握を通じて、ビジネスモデルの検証を行う。
令和3年度
(2021年度)
橋梁の構造健全性診断および生産設備の故障診断のための自立型振動センサの開発 関西大学
システム理工学部 機械工学科
教授
小金沢 新治
交通インフラや生産設備を効率的にメンテナンスするために、それらの構造健全性を自動的にモニタリングするシステムが注目されている。我々は、橋梁の健全性診断システムのコア技術として、既存の橋梁にも電源工事無しに簡単に導入できるように、自前で発電した電力によって動作し続ける自立型センシングデバイスの開発を行っている。これまでの研究の結果、車両通過に伴う発生電圧を分析することで、橋梁の固有振動数や振幅を高精度に検出できるとともに、橋桁の静的変位量を測定することができ、構造の健全性診断に活用できることがわかった。今後、このデバイスの市場の拡大を狙い、生産設備の故障診断や工場・家屋のような建築物の構造健全性に応用できるよう開発を行うとともに事業化の検討を行う。
令和3年度
(2021年度)
ポリプを起点としたサンゴの高効率増殖による二酸化炭素の固定化 関西大学
化学生命工学部
教授
上田 正人
近年、深刻なダメージを受けているサンゴ礁は、天敵の駆除や断片移植などにより、その再生が試みられているが、有効な回復手段は確立されていない。我々は、サンゴ片から大量のポリプ(骨格をつくりだす軟組織)を単離し、基盤に定着させる技術を見出し、適応できる種類の拡大とその高効率化を進めている。サンゴの骨格は炭酸カルシウムであり、その増殖は二酸化炭素(CO2)の固定化に繋がるため、大量のCO2を排出している企業や環境保全に興味を示す個人顧客に対して、サンゴ増殖の起点となるポリプを接着した基盤やその設置・管理サービスなどを提供し、サンゴ礁再生への参画を提案する。B2BとB2Cを並行し、ブルーカーボン(海洋生態系に蓄積される炭素)でカーボンニュートラルの達成を援助する。
令和3年度
(2021年度)
圧電組紐で新しいコミュニケーション体験の創生YUWAERU圧電繊維を活用したプロダクトおよびサービス開発による新しい体験提案 関西大学
システム理工学部
教授
田實 佳郎
曲げ・捻り・引っ張りによって電気が生じる紐状の極細センサ「圧電組紐*」を活用し、時間や距離を超えて、人と人、動物、植物、コミュニティ、伝統工芸や新しい文化をつなぐブランドを立ち上げる。その最初のサービスプロダクトを開発。現時点では存在しない生活に溶け込む形態のIoTを目指す。本ブランドを起点とし、新しいIoTのビジネス(Fashionable IoT)として、縦横に展開し、日本だけでなく世界中に発信していく。
*シーズ:関西大学が独自に開発したsustainableなgreen plasticよりなる圧電繊維により構成
令和3年度
(2021年度)
蚊のバイオミメティクスによる無痛針穿刺と微細血管認識とを融合した自動注射システム 関西大学
システム理工学部機械工学科
准教授
鈴木 昌人
人体皮膚表面の微細な血管を小型カメラで撮影し、取得画像から人工知能(AI)により血管の位置や深さを自動抽出するシステムの開発、およびそれを利用した自動採血システムの開発を行う。通常の撮影システムでは微細血管と皮膚の皺や体毛とを区別し難いが、我々が開発した特殊照明を用いることで血管のみ撮影に成功している。また、我々は蚊の針を模倣した微細な無痛針(外径130µm、内径90µm)の開発にも成功している。これらを融合させて人に全く痛みを感じさせず、かつ自動で血液を採取可能なシステムの開発を目指す。また、穿刺装置部を小型化させた携帯型の無痛採血デバイスの開発にも挑戦する。
事業化に向けて、これらの開発成果を集合させたデモンストレーション用のプロトタイプ機を協力企業と共同で作製し、Demo Day にて投資家向けにプレゼンテーションを行う。
令和3年度
(2021年度)
キャビテーションプラズマ殺菌水による植物病害菌防除技術の開発 兵庫県立大学
大学院工学研究科
准教授
岡 好浩
世界人口が増加し農業生産性の向上が求められる一方で、農薬抵抗性病原体の出現、農業従事者の安全性、消費者の食に対する安全意識の高まりから、農薬に依存しない新たな植物病原体の防除技術が求められている。農薬の代替となる新たな植物病原体防除技術として活性酸素を利用する方法が注目されている。本研究開発課題では、液中プラズマの一種であるキャビテーションプラズマ技術を活用して、水のみを原料としながらも活性酸素の効力により高い殺菌効果を有する農業用殺菌水を開発する。安心安全な病害菌防除技術を創造し、殺菌水製造装置または殺菌水を生産者に提供すると共に、消費者に安心安全な農作物と繋がる喜びを提供する。
令和3年度
(2021年度)
持続可能社会実現のための珪藻の大量産生と販売 兵庫県立大学
大学院理学研究科
准教授
菓子野 康浩
珪藻は太陽光を使って、CO2を医薬品やサプリメントに期待できるフコキサンチンやEPA/DHAといった高付加価値有用物質、あるいはバイオ燃料にもなる油脂に変換し、またそのために、養殖餌料として価値が高い。そこで、その有用物質を中心にした事業、すなわち、高額なフコキサンチンの利用や高付加価値食品を軸にした事業を展開する。より栄養価の高い高付加価値魚介類を養殖するため、珪藻を餌料として養殖産業に提供する。また長期的には、エネルギー産業への珪藻の高度培養技術のライセンス化を事業化する。このようなビジネスを実現するために、現在までに培ってきた珪藻の培養技術を高度化し、遠隔モニタリングシステムを含む安定高密度大量培養技術として確立するため、IoTとリンクした実機設計のためのデータセットを取得し、PoCを確立する。
令和3年度
(2021年度)
アミノ多糖系バイオ凝集剤の微生物生産の事業化検証 兵庫県立大学
大学院工学研究科
教授
武尾 正弘
バイオ凝集剤は、化学系凝集剤に比べ、生産コストや資源量の観点からほとんど使用されていないのが現状であるが、化学系凝集剤は環境負荷が大きく、バイオ凝集剤への将来的な転換が期待されている。本事業は、シトロバクター属細菌の生産するアミノ多糖系バイオ凝集剤の生産の事業化を実践するものである。
この多糖は分子量1000万を超えるキトサン類似構造を有する高分子で、酢酸を基質に本属細菌により培地中に分泌・生産される。凝集剤生産菌の育種法が確立したため、その生産性の向上や安全性の確保を目指すとともに、30Lクラスのバイオリアクター2機による小規模生産、次いで1000Lクラスのバイオリアクター2機による大規模生産の2段階の事業化のビジネスモデルにより実用化を目指す。
令和3年度
(2021年度)
標識不要な単一高機能化細胞の評価・単離回収装置の開発 兵庫県立大学
大学院理学研究科
准教授
鈴木 雅登
申請者は、蛍光染色や磁気標識せずに薬剤刺激に対する細胞応答の計測法を発明した。個々の細胞を電場によって回転させ、その速度から評価する。本申請ではこの成果を基にした原理検証機を具現化する。1,000個の細胞の回転速度を自動計測し、個々の細胞の機能を非標識で評価する。本装置によって抗原刺激に伴う免疫細胞の応答の非標識な検出を実証する。
ビジネスモデルは細胞移植用細胞(CAR-T細胞、抗体分泌B細胞)の作製受託事業である。ユーザより細胞群を受け取り、その中から高機能細胞を選別し提供する。細胞の選別の際に、標識や染色がないためそのまま移植ができる。
令和3年度
(2021年度)
ビッグデータ駆動型眼球運動トレーニング社会の実現に向けたコンテンツ・プロトタイプ開発 関西学院大学
工学部情報工学課程
教授
山本 倫也
視力ではなく、眼球の運動の問題で「読み」や球技が苦手な児童が多いことや、成長が止まる中学生以降でも眼球運動のトレーニングでその問題が改善されることが報告されている。一方、欧米と比べてその普及は大幅に遅れている。このデジタル化・自動化に関するシーズ技術を、「アート×テクノロジー」のアプローチで社会に広く普及展開させるスタートアップの起業に向けて、本研究開発では、1.魅力的なコンテンツの開発、2.家庭・学校に届けるプロトタイプの開発、3.データ駆動型のトレーニングのためのプラットフォーム開発を行う。速やかに起業し、軌道に乗せ、必要とする子どもにトレーニングの機会を届けるために、期間内にユーザテストを行い、ビジネスモデルの検証・精緻化を進める。
令和3年度
(2021年度)
心理統計にもとづく対象ごとの感性価値指標を活用した感性評価サービスの開発 関西学院大学
工学部・感性価値創造インスティテュート
研究特別任期制教授
渋田 一夫
現代社会においてモノやサービスは充足されつつあり、機能,信頼性,価格などの価値だけでは商品が売れなくなってきている。関西学院大学では、心理統計をベースにした「感性価値指標化アーキテクチャ」を構築した。さらに、これを利用した企業との共同研究の中で、自動車、家具インテリア、家電、衣服、飲料、化粧品、生活雑貨、観光、人事など、さまざまなモノやサービスに関する感性価値を表す指標を獲得してきた。感性に訴える商品の設計指針を提供するために、市場ごとの感性価値指標を活用した感性評価サービスをWebサービスとして事業化する。サービスの対象は企業の商品開発やマーケティングなどの部門である。
令和3年度
(2021年度)
世界平和に向けた廃熱回生発電事業 関西学院大学
大学院 理工学研究科
先進エネルギーナノ工学専攻
修士課程2年
長谷 智美
本プロジェクトでは「ありふれた熱から創生できるエネルギーで世界から戦争を無くす」を最終目標として、これまで回生が困難だった200℃以下の廃熱から発電する技術を世界に届ける。
日本の総廃熱エネルギー量は、国内の年間発電量にも匹敵するといわれている。その多くはタービンを回すことも、温度差を作って発電させることも難しい200℃未満の低品位廃熱である。この課題に対して、強誘電体の性質を応用し、廃熱を電力資源に回生する新たな技術を開発してきた。電力・廃熱ともに元々は化石燃料を源としているため、世に溢れる廃熱を電気に回生すれば、燃料消費を最小限に抑えることができる。化石燃料への依存度を軽減し、資源由来の争いを世界から無くすことを究極の目標とする。
本年度は、この技術を実証するためのデモ機の作製及び、廃熱量が特に多い電力・パルプ産業をターゲットとした市場調査、想定顧客先への技術導入戦略の立案を到達目標とする。さらに、再生可能エネルギー100%を目指すオピニオンリーダーと接触し、エネルギー問題解決への取り組みを学ぶことで、本プロジェクトの事業戦略を練る。