採択プロジェクト

大学・エコシステム推進型 
拠点都市環境整備型

北九州SDGsイノベ―ション&アントレプレナーシップ プラットフォーム

採択年度 研究開発課題名 研究代表者 概要
令和3年度
(2021年度)
インバータ機器による電力系統の需給バランス調整技術(空気だけでなく電気も綺麗にできるエアコンという新概念の創出) 国立大学法人 九州工業大学
大学院工学研究院 電気電子工学研究系
准教授
長谷川 一徳
現状の電力系統インフラでは、“調整力不足”の為、太陽光発電源等を主力電源化とすることができない。そこで本提案では消費デバイス側、特にインバータエアコンによる調整力技術の開発を行う。これにより、消費デバイスが電力インフラの安定化役として参加可能となり、再生可能エネルギー主力電源化社会を実現可能とするレジリエンスな電力インフラを実現に貢献する。本プロジェクト期間中に、デモシステムの構築を行い、大学キャンパスを活用した小規模実証への道筋をつける。
令和3年度
(2021年度)
深層学習訓練用データセットの半自動生成手法とエッジ向けニューラルネットワーク 国立大学法人 九州工業大学
生命体工学研究科
教授
田向 権
本プロジェクトでは、メイン技術シーズとして認識システム構築に必要なデータセットを半自動生成するシステムを提供する。またサブ技術シーズとして、メイン技術シーズで構築したデータセットを活用して、実際に認識可能なエッジAIデバイス(FPGAやマイコンで構成された小型AIコンピュータ)を提供する。AI技術はその学習のために膨大な労力をかけてデータセットを構築する必要があるため、事実上中小企業で扱うことが難しい。本プロジェクトでは少量多品種な商品を扱う中小企業をターゲットに、素人でも容易にデータセット構築可能な環境を提供する。またサブ技術シーズでは、メイン技術シーズで生成したデータセットで学習したAIモデルを搭載したエッジAIデバイスを提供する。このエッジAIデバイスには、レザバーコンピューティング等適切なAIモデルを搭載し、AIの活用に知見のない中小企業や計算機設置に難のある環境でAIを活用できるサービスを展開する。
令和3年度
(2021年度)
食の安全を守る「食中毒菌センサ」のビジネスモデル構築と市場開拓 公立大学法人 北九州市立大学
国際環境工学部 環境生命工学科
教授
礒田 隆聡
食我が国では2021年6月から、全食品事業者に対してHACCPに準じた衛生管理が義務化された。これは従来の抜き打ち検査と異なり、各工程で温度、異物、細菌検査等を実施し記録する管理手法である。特に細菌検査は24時間培養し、目視で菌数を数えるコロニーカウント法が主流である。そこで代表者は検査時間を90分に短縮できる新たなセンサ技術を開発した。食品衛生検査の世界市場は数兆円規模と試算されている。本研究は、いつでも・どこでも・誰でも検査が可能な携帯型の食中毒菌センサを試作・検証し、食品加工や病院、学校、介護施設等への社会実装を想定した市場調査とビジネスモデルの構築を行う。
令和3年度
(2021年度)
脳機能賦活を誘起する手指リハビリテーション支援統合システムの企業化について 公立大学法人 北九州市立大学
環境技術研究所
教授
松田 鶴夫
高齢化社会の加速に伴い脳機能疾患患者数が拡大し,後遺症等疾患としての麻痺により、精神的な意欲の減退や社会復帰を逡巡する人々が増えつつある社会状況の中で、「いかに自立して健康で暮らせるか」というQOLを考慮した「健康寿命」への欲求に対する支援は、各種運動機能疾患を持つ方にも共通なニーズである。リハビリテーション(以下、「リハ」と省略)による機能回復は多くの病院で行われ、機能回復例も多く報告されているが、その効果の再現性が個々人に大きく由来することから、回復の程度もまちまちで、前記ニーズを満足するようなリハ支援統合システムは存在しない。
本研究ではヒト大脳をシステムの一部として組み込む手法を考案し、大脳皮質機能損壊に起因する複数の上腕手指麻痺患者に対して試作機を用いたフィールドテストの結果から、従来よりも高効率なリハ支援を可能とするシステムを開発した。これらを病院・介護施設やリハ施設に提供することを視野にビジネス展開を構築する。
令和3年度
(2021年度)
匂いによるがん診断技術の高度化及び包括的先進医療技術の確立 公立大学法人 北九州市立大学
国際環境工学部
教授
李 丞祐
がんの早期発見は、死亡率の低減や発病の初期段階での効果的治療に欠かせない国を挙げての重要な医療課題である。これまで口腔がんに特異性を示す27種類の揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound,以下「VOC」)の特定に成功し、唾液に含まれた匂い成分のVOC群から口腔がんを非侵襲的で簡便・迅速に診断できる新しいがん診断技術を発明し、現在、その他がん(膵がん、肝がん等)に対象範囲を広げた臨床研究を進めている。国や個人の医療費負担増の観点からもがんの早期発見への社会的ニーズは高く、新たな医療産業としてその潜在的市場規模が大きい。新たな成果に基づいた特許出願を含め、がん診断に特化した個人向け検査・診断サービスへの事業化につなげることを目標とする。
令和3年度
(2021年度)
クルマエビ抗体様蛋白質Dscamを用いた診断法・治療法の開発 国立大学法人 長崎大学
熱帯医学研究所
准教授
久保 嘉直
哺乳類抗体は診断や治療に広く応用されている。しかし哺乳類抗体は2つの遺伝子産物から作られるため、遺伝子工学による単離と改良が困難である。そのため哺乳類抗体を用いた診断法・治療法は高額となり、社会保険財政を圧迫するという問題がある。一方、これまで下等動物は抗体を持たないと考えられていたが、最近、甲殻類において、感染した病原体に依存して多様性が変化し、病原体に直接結合するという抗体と同じ働きを持つ蛋白質Dscamが発見された。Dscamは1つの遺伝子から作られるため、遺伝子工学による単離と改良が容易である。我々は、ヒト病原体ラッサウイルス抗原を接種したクルマエビから単離されたDscamが、ラッサウイルスに結合することを突き止めた。一方、Dscamにはヒト・ホモログが存在し、ヒト化したクルマエビDscamを用いた治療法も考えられる。本研究では、クルマエビDscamを用いた診断法・治療法を開発し、産業展開することを目指す。
令和3年度
(2021年度)
皮膚病変を伴う成人T細胞白血病に対する免疫エフェクター細胞療法の事業化 国立大学法人 長崎大学
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野
教授
室田 浩之
成人T細胞白血病(ATL)は九州・沖縄地方に多いウイルス性疾患である。しかし、抗がん剤や細胞移植など現行の標準医療に抵抗性の症例も多く、予後は悪い。これまでに申請者らのグループは、γδ型T細胞が効率的に成人T細胞白血病細胞を傷害することを確認し、細胞輸注療法が可能であることを見出してきた。今回、長崎大学病院発ベンチャーを設立し、これまでアカデミアで構築してきた細胞療法の技術を医師主導型治験の枠組みで臨床応用することにより、新規医療事業を展開し、アンメットメディカルニーズに対処する細胞医療モダリティーを確立する
令和3年度
(2021年度)
底生ザメ由来ナノボディ抗体の開発と事業化 国立大学法人 長崎大学
先端創薬イノベーションセンター
センター長・教授
田中 義正
現在難病指定されている自己免疫疾患などの多くの疾患においては、細胞内タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)が創薬標的になることが多い。しかし、現存の低分子医薬品および抗体医薬品開発技術では、細胞内PPI阻害剤を開発することは困難である。これを解決する医薬品モダリティーとして、ナノボディ抗体がある。難治性疾患を治療できるようになれば、市場規模は10兆円以上と見込まれる。また、現在、高価な治療薬であるヒト化抗体および完全ヒト抗体を、ナノボディ抗体に置き換えることができれば、近い将来起こると予想されている医療経済の破綻を解消できる可能性がある。また、医薬品開発以外にもナノボディ抗体の事業化形態として、抗体試薬市場や臨床検査薬市場への参入が見込まれる。