採択プロジェクト

大学・エコシステム推進型 
拠点都市環境整備型

イノベーションデザイン・プラットフォーム

採択年度 研究開発課題名 研究代表者 概要
令和3年度
(2021年度)
新規国産ゲノム編集TiDの社会実装を目指した基盤技術開発 国立大学法人 東京工業大学
生命理工学院
教授
刑部 祐里子
未利用の微生物ゲノムから新しいゲノム改変タンパク質を見出し、新たな国産ゲノム編集技術“TiD”を開発しました。この新規の遺伝子改変分子ツールTiDを用いることで、欧米が保持するゲノム編集基盤技術を利用せずに、医療・創薬・バイオ資源・農業など様々な産業に応用させることが可能です。TiDの動作性をレベルアップさせ、様々な産業で利用する広範な生物種において効率よいゲノム編集技術利用を可能とさせます。新規ゲノム編集に関わる知財・技術シーズをパッケージ化し、従来技術では対応できなかった多用な生物種(動物、植物、菌)に活用します。新しいゲノム改変技術により、遺伝子・細胞治療などを含む医薬品開発、有用物質生産を目指したバイオプロダクションやバイオマス資源産業などの様々な産業へ応用を可能とする基盤技術を開発します。
令和3年度
(2021年度)
農業を即日DXさせるプロダクトサービス “農Sight”の開発 国立大学法人 東京工業大学
環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程
社会人学生
今村 悠樹
新規就農者の離農率の高さが問題視されている。インタビュー調査の結果、新規就農者は資金不足・知識不足・経験不足の3つの課題により、農業を続けることに大きな不安を抱えていることが分かった。そこで、農家の経験をデータとして蓄積し、新規就農者も利用できる簡便・安価な情報提供サービス”農Sight”を提案する。農Sightは3つの機能から構成される。1.土壌状態を含む環境データの収集とアドバイスを生成・提供する機能、2.農家同士の情報交換・情報売買を促すプラットフォーム(SNS)機能、3.過去データの管理・参照機能、である。特徴は、類似プロダクトが大規模農家をターゲットとした自動化・収益向上を目的としたシステムであるのに対し、農Sightは新規就農者を含む小規模農家をターゲットとし、経験不足による農業の失敗を防ぐアドバイスの提供に特化している点にある。
令和3年度
(2021年度)
熱源に置くだけ埋めるだけ! 熱エネルギーで直接発電する“増感型熱利用発電”
2023年2月
「株式会社elleThermo」起業
国立大学法人 東京工業大学
物質理工学院
准教授
松下 祥子
ゼロカーボンエネルギー政策を持ち出すまでもなく、温暖化含むエネルギー問題は世界の喫緊の課題だ。石油資源に依存せず、天候にも左右されにくい、熱から「直接」電気エネルギーを生み出す技術、増感型熱利用発電(Sensitized Thermal Cell、STC)を提案・研究・知財取得を行っている。まずは分散型電源、IoTデバイスへの社会実装から始めて実績を作り、最終的には放射性廃棄物の心配がない、土地が有効に使える発電所を構築し、子供たちに安心して渡せる未来を作り出すことが目標だ。現在はSTCを皆様に知っていただくためのサンプルセルレンタルを行っているが、本ディープテックを成功に導くためには、起業タイミングと、志を共有し・信頼でき・実力のある事業パートナーとの出会いが重要と考える。
令和3年度
(2021年度)
列車の混雑を見える化し、乗客が安く乗れるかつ混雑を緩和し、安心して移動できる社会の実現
2023年8月
「株式会社Nohs」起業
国立大学法人 東京工業大学
環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程
修士課程
早川 智義
コロナ前は満員電車。コロナ後は混雑に対する恐怖が芽生えた中で、通勤・通学における混雑緩和対策に国、各鉄道会社も取り組んでいる。しかし、列車の混雑をリアルタイムに解析し、かつ乗客の行動変容を結び付けることに成功した取り組みは、まだない。
IoTデバイスにより列車の混雑を超リアルタイムに解析→見える化し、乗客が、専用アプリ立ち上げや情報サイト閲覧することなく、「”改札口やホーム上”で、各車両ごとの混雑情報確認→判断→回避」まで、行動変容できるように情報提供し、混雑を緩和する。また、混雑緩和に協力した乗客にはインセンティブを与え、”より”行動変容が起こるようする仕組みを構築する。
令和3年度
(2021年度)
材料科学者の目線で開発するベイズ最適化のクラウドサービス 国立大学法人 東京工業大学
物質理工学院
特任助教
中山 亮
材料開発は日本の産業を支える重要な研究領域の一つであり、日本の強みであった。優れた機能を持つ新材料の開発には、多次元の探索空間内で最適な合成条件を探さなければならない。今後、世界との競争に打ち勝つためには、研究者の勘・コツ・経験により合成条件最適化を行うという従来のやり方では困難である。つまり、現在、研究開発の進め方の変革が求められている。そのための手法として、機械学習の一種であるベイズ最適化が注目されている。しかし、材料研究者がベイズ最適化を活用するにあたって、データ管理、Pythonの習得、ベイズ最適化のアルゴリズム内のパラメータ設定など多くの問題が存在する。そこで、大学や企業の一般的な材料研究者・技術者がExcelのようにベイズ最適化を使いこなせるようになることを目指して、材料科学者の目線で開発したベイズ最適化のクラウドサービスの開発を目指す。
令和3年度
(2021年度)
スモールデータAIによる医用画像診断支援システムの多品種短期開発 国立大学法人 東京工業大学
科学技術創成研究院 バイオメディカルAI研究ユニット
教授
鈴木 賢治
深層学習には大量のデータ(1万〜10万例)が必要であり、これが医療分野での最大のボトルネックとなっている。このボトルネックを解決し、100例程度のごく少数データ(スモールデータ)で学習可能な独自の深層学習モデルを開発することに成功した。本スモールデータ深層学習を用い、医用画像から病変を検出し診断を支援するAIシステムを開発する。大量の症例が集められず、他の研究機関等が未着手の疾患を対象に、連携病院との共同研究を通じて医療AIのプロトタイプを開発し、今まで開発が不可能であった希少疾患に対するAIを開発可能であることを実証し、多くの疾患を網羅するAIを短期・低コストで開発できることを示す。
令和3年度
(2021年度)
音楽が母子の睡眠導入に与える影響 -心地よい音楽は睡眠導入時間を短縮するか- 国立大学法人東京工業大学
環境・社会理工学院 社会・人間科学系
博士2年
川﨑 愛
心地よい音楽を聴くことでリラックス状態になるという報告が数多くされている(Bernardi L 2005 他)。また、音楽鑑賞時に自律神経系の反応は音楽と同期する(Luciano B 2009)。本研究では母と乳幼児に睡眠時にリラックスする音楽を聴かせ、音楽を聴かない場合と比較し、睡眠導入時間を計測する。心拍変動、自律神経バランスを心電計にて計測する。睡眠導入では自律神経を副交感神経が優位に働くように音楽で誘導する。実験で使用する音楽は事前にYouTubeにて公開している楽曲からアンケートを実施し、より人気の高いものを採用する。
令和3年度
(2021年度)
音響学的解析における認知症の検知技術を利用した事業検証 学校法人慶應義塾 慶應義塾大学
医学部 ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座
特任教授
岸本 泰士郎
これまでに音響学的な特徴を用いた機械学習モデルで2分程度の自由会話から認知症のリスクを同定する技術を開発している。同技術は特許出願済み、かつPCT出願済みである。しかし研究に使用されたデータは医療現場でのデータであり、「実際のビジネスシーン」での検証は行われていない。そこで、上記技術が実際のビジネスシーンでも活用可能であるか、また魅力的なサービスとして設計し得るかといった社会実装のための事業検証フィジビリティスタディを行い、技術の改善を行うとともに、どの程度活用し得るかの検証を行う。検証後、高齢者への営業シーンにおいての属人的、定性的な認知機能の判断を行なっている金融機関への導入を踏まえ、プロダクト化に向けた準備を行う。
令和3年度
(2021年度)
透析患者QOLを劇的に改善するインプラント人工腎臓Azinzoの研究開発 学校法人慶應義塾 慶應義塾大学
理工学部 機械工学科
教授
三木 則尚
国内34万人、世界260万人以上の慢性腎不全患者が受ける人工透析治療は、極めて完成された治療法である一方、週3回の通院や毎回の穿刺、厳しい食事・摂水制限のため、患者QOLが著しく損なわれている。そこで、患者QOLを劇的に改善すべく、通院回数を低減し、摂水制限を大幅に緩和するインプラント人工腎臓Azinzoの研究開発を行っている。特に、血液凝固防止を中心にAzinzoの最終設計を行い、プロトタイプ製作および動物実験により検証し、Azinzoの新規治療法としての実現可能性を証明し、高度医療機器であるAzinzoの製造販売業を行うベンチャー企業創出を目指す。
令和3年度
(2021年度)
サルコペニアに対する治療薬開発と老化創薬としての事業計画立案 学校法人慶應義塾 慶應義塾大学
医学部 精神・神経科学教室
特任講師
早野 元詞
サルコペニアは加齢に伴う筋肉量と筋肉力の低下させる疾患として2016年にWHOによって認定されている。Wnt経路を標的とした新規化合物「OK-1」および2種類の既承認薬「E-1」「E-2」によって筋肉量と筋肉力の治療効果が確認されている。OK-1、E-1、E2の作用機序(MoA)の詳細の確認と、それによる標的患者の層別化(TPP)、バイオマーカー探索を実施する。さらにOK-1の経口剤開発に向けた有効性確認、E-1新規化合物開発に向けたin vitro研究を行う。サルコペニア診断を行なっている医師と連携し、サルコペニア患者のニーズを調査する。また予防を含めた老化創薬のビジネスモデル探索のため、病院、保険会社など海外の事例を含めて調査を行う。
令和3年度
(2021年度)
炭素繊維強化プラスチック部品の構造・力学を考慮したAIベース非破壊検査手法の開発 学校法人慶應義塾 慶應義塾大学
理工学部 機械工学科
専任講師
村松 眞由
検査技術者の高度な技能を要求せず、生産ラインへの導入に適した新しい炭素繊維強化プラスチック(CFRP)非破壊検査手法を提案し開発に取り組んできた。本手法では、CFRP検査サンプルに引張応力を加えた際の表面温度変動を赤外線計測し、機械学習ベースの逆解析モデルへ入力することで構造欠陥の有無と位置を予測する。これまでに有限要素法による数値シミュレーションデータを用いて本手法の概念実証を完了した。今後は板状CFRP試験片の赤外線計測実験、従来計測手法に対する提案手法の優位性評価、工場生産ライン特有の制約調査と提案手法への反映、自動車部品の性質を反映したCFRP試験サンプルの作成に取り組む。将来的には材料メーカーや自動車メーカーを顧客に、非破壊検査に用いるハードウェアをリースで、ソフトウェアをSaaSで提供するビジネスを行っていく。
令和3年度
(2021年度)
酸化ストレスを利用した新規抗がん剤の開発
2022年6月
「株式会社FerroptoCure」起業
学校法人慶應義塾 慶應義塾大学
医学部 先端医科学研究所 遺伝子制御研究部門
特任助教
大槻 雄士
現代は二人に一人が、がんになる時代となっている。がん治療はここ数年で飛躍的に発展し、その生存率もかなり改善されている。しかし、肺がんや肝臓がん、膵臓がん等の生存率が低い難治性のがんも存在する。これら難治性がんにおいて、その治療抵抗性メカニズムにがん幹細胞の存在が重要であるとされており、抗がん剤、放射線治療、免疫療法などの治療を行っても、がん幹細胞が生き残ることで再発の起点となることが示されている。
そして、その治療抵抗性メカニズムとして酸化ストレスを引き起こす活性酸素に起因する鉄依存性細胞死(フェロトーシス)を回避する機構が重要であることをつきとめた。さらに、がん幹細胞のフェロトーシス抵抗性を標的とする治療法(フェロトーシス誘導療法)の開発に成功したので、これを用いた難治性がんの新規治療法を確立する。特に、難治性がんの一つである進行性肺がん患者を対象とし、アンメットメディカルニーズを満たす新規治療法の確立を目指す。
令和3年度
(2021年度)
リンパ系疾患のMRI診断および治療を同時に実現する新規ドラッグデリバリーシステム用薬剤の開発 学校法人慶應義塾 慶應義塾大学
大学院理工学研究科
大学院生(博士課程)
矢野 浩作
脳内リンパ系は、アルツハイマー病の診断および治療法の開発の突破口になり得るにも拘わらず、生体における脳内リンパ系のリアルタイム観察法は確立されていない。なぜなら、磁気共鳴イメージング(MRI)を用いたリンパ系イメージングのための造影剤が存在しないからである。リンパ管はその径の細さゆえ、直接造影剤を注射で注入することが極めて困難である。また、造影剤としての粒子が間質からリンパ管内に選択的に取り込まれて最終的に排泄されるためには、直径3nm以上かつ10 nm以下のサイズが必要とされる。しかし、既存造影剤や薬剤の大きさは1 nm未満であり、間接注入もできない状況にある。そこで、生体適合性が高く化学的に安定な直径5nm程度の親水性ナノダイヤモンド(CND)粒子に焦点をあて、それに対してMRI視認性および抗腫瘍効果を有する物質を複合することで、容易な皮下注射によりリンパ系のMRI診断および疾患治療を実現するプラットフォームの開発を目指す。
令和3年度
(2021年度)
画期的なレンチウイルスベクター増産法を浮遊細胞培養系に適用できることを実証する 国立大学法人 東京医科歯科大学
ウイルス制御学分野
教授
山岡 昇司
遺伝子治療用レンチベクターの産生コスト軽減は喫緊の課題である。レンチベクター産生細胞に少量の転写活性化因子等を共発現させることで、単位細胞あたりの産生量を飛躍的に増大させる独創的新技術を発展させ、工業的応用可能性を高めるために浮遊細胞培養系での本技術の有効性を確立して、起業へ向けた事業の優位性と独占性の根拠を得る。
令和3年度
(2021年度)
歯ぎしりの病態解明のための咬合圧・咬筋筋活動測定システムの事業化検証 国立大学法人 東京医科歯科大学
歯学部附属病院 矯正歯科外来(咬合機能矯正学分野)
医員
大森 浩子
歯ぎしり(ブラキシズム)は、歯がどんどんすり減ってしまったり、顎関節に痛みが出たりする、顎口腔領域における悪習癖の1つである。是正指導等を受けても、改善するのが難しく、そもそも夜間であると自覚もなく、無意識下なので、やめようと思っても、なかなかやめられない。そこで、我々は、上下顎の歯が、どの程度接触しているのか、接触部位、強さ(圧)や持続時間と、咬んだ時に発火する咬筋筋活動を把握する必要があると考えた。夜間を含む長時間、検査室等でなく日常生活の中で測定可能システムを開発し、起業へ向けた事業の優位性と独占性の根拠を得る。
令和3年度
(2021年度)
バイオ靱帯の実用化におけるサイズと強度の改善 国立大学法人 東京医科歯科大学
大学院医歯学総合研究科総合研究科
教授
淺原 弘嗣
腱/靱帯は、筋と骨を正確かつ強靭に結ぶことで機能を発揮する組織であり、その障害、疾病は患者に日常生活の著しい低下を強いる。しかしながら、腱靱帯の代替となりうるバイオマテリアルやiPS細胞・組織幹細胞を利用しての腱・靱帯疾患・傷害治療の技術開発は、まだ十分でない。我々の今までに開発した体外での腱細胞および腱組織誘導技術を応用、発展させ、ヒトiPS細胞から作成したバイオ靱帯の形状をカスタマイズする手法と、強度を更に向上させる技術開発を行うことで、臨床応用のための材料学的特性の目標に到達したバイオ靱帯を作成し、その実用化を目指す。
令和3年度
(2021年度)
唾液採取から生活習慣病予防情報が得られるデータ蓄積システムの構築・生活習慣病予見のための幸福度パラメータ群の特定 国立大学法人東京医科歯科大学
大学院医歯学総合研究科 口腔基礎工学分野
教授
青木 和広
唾液から得られる情報から、科学的根拠をもって幸福度パラメーター群を特定する。幸福度と癌リスクとの関連性や、鬱(および精神疾患)発症の予知方法を確立する。さらに、幸福度パラメータを加味することで、口腔内細菌叢の乱れが癌の未病状態を予見するバイオマーカーになり得るか実証する。
唾液採取による未病診断サービスの事業化を目指す。特に癌の発症前段階(ステージ0前)の未病状態の検出と、鬱および精神疾患の発症前予知診断サービスを主とする事業モデルのポテンシャル検討を行う。幸福度診断という入口で、健康診断を受診しない層も含め広く訴求し、健康関連事業の付加価値サービスとして位置付ける。唾液を使った幸福度測定と銘打ち、未病診断を行い、未病改善を指導し、QOL向上に導き、国の予防事業インフラを目指す。