未来の私たち
21世紀の科学技術が人の思考と感覚に及ぼす影響
スーザン・グリーンフィールド
伊藤泰男/訳
NPO科学技術社会研究所 2008年
科学技術が進歩したとき、私たちの生活に何が起きるか? 神経生理学の専門である著者が、情報、バイオ、ナノテクノロジーの融合技術を対象に、その社会への影響を幅広くかつわかりやすく書いた好著である。何よりも読ませるのは、科学技術の進歩により、人間の思考や感覚(たとえば男女関係や愛情表現にまで)がどのように影響を受けるかを、専門知を駆使して説得力ある文章で書いているところである。21世紀後半の人間はどのような生活パターンで何を考え、何を幸せと感じて生きているのか。とにかく、その未来図にはいったんは驚かされるが、ふと考えると、確かにそのような未来が十分にあり得る、と思うことばかりである。科学技術と社会の関係を考える上で、貴重な示唆を与えてくれる一冊である。なお、訳者は東京大学原子力総合研究センターの元教授。
(鈴木達治郎:内閣府原子力委員会 委員長代理)