バイオポリティクス
人体を管理するとはどういうことか
米本昌平
中公新書 2006年
この本は、生命科学とどのように付き合うのかについて、様々な課題を挙げながら社会に問いかけている。例えば、2003年にヒトゲノムが解読されてから、研究者は、ゲノム情報を手がかりに人間の疾病を理解する方向に向かった。しかし、ここから個々人に見えてくるものは単一遺伝子による遺伝病を除いて、統計学的確率論の未来である。つまり、自分のゲノムが解読でき、病気とゲノムの関係性の研究が進んでも、将来、病気になるかどうかは天気予報のように%で表現されるだけで実際は判らないということだ。私たちは、この事実とどのように向き合うのだろうか。著者は、様々な誤解の後に付き合い方を学ぶのではないかと予想している。アメリカのようにすべて自己責任の世界に向かうのか、EUのように法律で統御するのか。さて、日本はどのようになるのだろう?
(明石圭子:長浜市健康福祉部健康推進課 参事)