近代医学のあけぼの
外科医の世紀
ユルゲン・トールヴァルド
小川道雄/訳
へるす出版 2007年
現代医学の源流は19世紀にある。特に、それ以前の手術は想像もできないほど凄惨で、そして多くが悲惨な結末となる治療法だった。19世紀に感染対策や全身麻酔が開発され、外科手術を学問という枠組みで捉えることが可能になった。本書は一般読者向けにドキュメンタリータッチで展開するこの時代の外科医達の物語である。そして冒頭で紹介される米国の田舎でのある病気の世界初の手術成功例は、医療者と患者が互いの納得を確かめ合う医療として行われた事実を伝えている。この事実は我々を勇気付けるし、21世紀の医学や医療を考える上でとても貴重な資料である。外科医の翻訳による読みやすい日本語で、多くの方が一気に物語に引き込まれる一冊。
(行岡哲男:東京医科大学救急医学講座 主任教授)