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領域の成果「持続可能な多世代共創社会のデザイン」研究開発領域 キーワード集

共創融点

交流が進んで相互の信頼感が醸成され、何か新しいことを前向きに協力してやってみようとする動きが出てくる段階。この段階を超えると、共創的な活動が加速化する。多世代共創活動を実行するには、この融点を下げることが重要。

現代社会は多様な人々から構成され、人・状況・環境等によって融点は異なる。個人への信頼感、活動の意義を証明するエビデンスや実績等は、融点を下げる効果がある。

(提案者:大守 隆/所属・関連プロジェクト:領域マネジメントグループ)

協発的発展[註1]

これまで、地域の文化や経済、そして開発などのすべての地域発展において、そのエリアに住む住民が直接参加すべきであるとする、内発的発展論が重視されてきた。しかしながら近年は過疎高齢化が進み、「農山漁村の内発性に期待をかける内発的発展論や主体形成論」[註2]が困難になってきており、「相互行為による協働・協発による互恵的発展」[註3]が期待されるようになっている[註2]

協発的発展とは、地域の活性化に際して、域外の多世代・多様な人々との協働などによって創発的状況を築くプロセス。具体的には、都市農村交流や移住者、新たな技術や文化との関わり合い等を通して地域の発展を促してゆく。

[註1] 青木辰司(2008)「グリーン・ツーリズム―実践科学的アプローチをめざして」日本村落研究会編『グリーン・ツーリズムの新展開―農村再生戦略としての都市・農村交流の課題―』農山漁村文化協会

[註2][註3] 守友祐一氏が文科省の研究会で報告した資料より引用
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/shiryo/attach/1310884.htm

(提案者:大和田 順子/所属・関連プロジェクト:領域マネジメントグループ)

公園化

公園化とは、「限定された人々や活動のために用いられている公共施設等の既存の空間を、多世代、多様な人々が集い、自己の責任で思い思いの活動を楽しみ、望むときには互いに交流できる、開放的でアクセスしやすい空間とすること」を意味する。

重要なのは、集う人々が空間の所与の目的のみに縛られずに空間・時間を共有することによって、その空間の持つ価値を各々に見出せることである。そのためには、飲食の容認、おしゃれさよりも居心地の良さを重視したデザイン、禁止項目を設定しないこと等が求められる。

(提案者:湯淺 かさね/所属・関連プロジェクト:堤プロジェクト

自分ごと

他人事の対義をなす語句。多世代・多様な人々がサステナブルな共創社会をつくりあげるうえで、社会や地域コミュニティの個々人が、直面する社会課題に対して、当事者意識を持って関わっていくこと。

社会課題を自分ごととして捉える人々が、その解決に向けて活発な協調行動をとることによって、ソーシャル・キャピタルが蓄積され、社会的効率性の向上に寄与する。

(提案者:大塚 耕司/所属・関連プロジェクト:大塚プロジェクト

資本基盤ストックの豊かさ

社会の持続可能性を確保するためには、それを支える各種資本基盤(人的資本、人工資本、自然資本、社会関係資本)の状態を適切に保つことが必要である。人口減少下では、これらのケア・メンテナンスのための労働(ケア労働)の人手不足が顕著になるおそれがあるため、各自治体レベルで、将来にわたって維持管理されるべき資本基盤量を見積もり、それらを維持管理するために必要なケア労働が確保するという資本基盤マネジメントを行うことが求められる。

(追補)

地域の持続可能性を高めるためには、その地域に育ち、一定の判断力を培っていて、自らの将来にまだ自由度を残しているエントリー世代(中高生等)に情報を提供し、将来世代の立場から意見を述べる機会を提供することが、人材の育成という観点と、大人世代の気づきという双方の観点から重要である。

(提案者:倉阪 秀史/所属・関連プロジェクト:倉阪プロジェクト

斜交関係

親子のような縦の関係や、同僚や同級生のような横の関係といった、結束性の強い関係(閉じた関係)ではなく、世代の異なる他人との交流関係を意味する。

斜交関係を構築する取り組みとして、多世代が気軽に、ありのままでいられる居場所を開設し、共に体験するイベントや学びの機会を提供することで、参加者が自然に斜交関係を築きやすい環境を創り出す方法がある。

居場所に参加した子供達は、参加していない子供達に比較して、斜交関係にある世代に対して、「本音で話せる」、「ありのままの自分を受け入れてくれる」、「相談する」というスコアが高いという調査結果がある。

(提案者:上田 洋平/所属・関連プロジェクト:渡辺プロジェクト

縮充

「拡大」の時代から「縮小」の時代に向かっているなかで、「縮小」はネガティブなイメージが強い。それに対して、「縮充」とすることで、コンパクト化により機能が充実するなど、ポジティブに捉えることができる。

公共施設マネジメントにおいて、複合化・多機能化、利用規制の縮小で、利用者を飛躍的に増やす(住民の要望に応える)施設マネジメントが重要である。

(提案者:南 学/所属・関連プロジェクト:領域マネジメントグループ)

多世代の居場所

子供からお年寄りまで、地域の多世代・多様な人々が集う開放的で心地よく交流できる場所。目的(例えば「子育て」)を同じくする場合と、集まること(例えば、飲食の機会、快適にデザインされた空間など)で交流が生まれる場合などがある。参加・交流には、幅広い利用者を誘引する「仕掛け」が重要となる。

また、居場所内において、催事を開催することにより相互の交流を促すことも可能であるが、参加者の自発性を尊重することが大切である。なお、訓練を受けたコーディネーターを配置し、利用者の自主企画策定や実践をサポートすることでモチベーションが高まる可能性がある。

(提案者:領域マネジメントグループ/所属・関連プロジェクト:渡辺プロジェクト藤原プロジェクト

多面的・重層的アプローチ

多世代、多様な人々に社会課題の解決に向けた活動の理解や参画を促すために、多面的な切り口から様々な働きかけをするとともに、これらの働きかけを粘り強く繰り返すこと。

幼児や学生、お年寄りを始め、一般市民の方々に対しては、敷居が低く、参加しやすい多様なイベントの実施を心がけ、専門的な知識を求める方々には、勉強会や専門講座といったプログラムを開催するなど、複層的な活動を継続してゆくことで、対象となる社会課題に向き合う人々の輪を広げてゆくことができる。

(提案者:島谷 幸宏/所属・関連プロジェクト:島谷プロジェクト

地域効力感

地域が抱える課題について、一人一人が解決に貢献できると、住民同士が自信を持てることを言う。

何らかの課題に直面した際に、自身が適切な行動を遂行することができると、自信を持てることを表す「自己効力感」を地域課題解決に応用した言葉。

地域効力感は、ソーシャル・キャピタルが適切に発揮されることにより生み出され、健全な地域自治を実現するための鍵となる。

(提案者:高嶺 翔太/所属・関連プロジェクト:後藤プロジェクト

生業景(なりわいけい)

地域の資源・環境を活かして価値を生み出す技能・技術をもとにした生業・活動(地技型生業)と、これを成立させる背景・立地性との融合により生まれる景観。

自然景や単一の作業景ではなく、生業・活動をとりまく環境や地域内外とのつながりを想起させる景や景群を指す。一定不変ではなく、動きや変化がある(立ち上る煙、動き回る人々など)。

生業景は、その場所・周辺・地域における産業構造、生活文化、人々の価値観が立ち現れたものであり、またそうしたつながりを意識化する概念でもある。

(提案者:大沼 正寛/所属・関連プロジェクト:大沼プロジェクト

文化境界

集団内部のメンバーで心理・行動傾向が共有される範囲。人は心理傾向や行動傾向を共有するメンバーと共同関係を持つことで、規範から外れた行動を互いに抑制し合う環境を形成する。しかし、そのような環境においては、心理・行動傾向を共有しない集団外部の人たちと境界を隔てた棲み分けが進行し得る。集団を越えた個々人の間で信頼関係を持つことで、集団内外の境界は解消し得る。

(提案者:福島 慎太郎/所属・関連プロジェクト:内田プロジェクト

まちなじみ

地縁社会を介した、親しい間柄、親しい間柄の人々、親しい間柄になる相互行為を意味する。

この「まちなじみ」が多様であればあるほど良い「まち」であると考えることができる。つまり、誰もが「知ることのできるまち」、「参加することができるまち」、「自己実現することができるまち」という、「誰も置き去りにしないまち」づくりにむけて、多様な「まちなじみ」が重要である。新たな移住者や高齢独居者、外国人など、社会的に孤立しがちな人々に対しては特にこのことが重要となる。

(提案者:後藤 春彦/所属・関連プロジェクト:後藤プロジェクト

ゆるやかなつながり

地域住民同士が気軽に声をかけ合えることができる関係性。排他的ではない、ゆるやかなつながりが形成されることで、他者を受け入れられる、開放的で風通しの良い住民関係を築く基盤となる。

地方の小規模自治体では、来訪者に対して、子どもが「こんにちは」と来訪者に気軽に声をかけることで、和やかな雰囲気を醸成していることに注目する必要がある。都市部でも意識的に取り組むことで、地域のつながりが醸成される可能性が高い。

(提案者:根本 裕太/所属・関連プロジェクト:藤原プロジェクト



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