成果概要

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脳指標の個人間比較に基づく福祉と主体性の最大化[5] 個体間比較可能な報酬の主観的価値表現の齧歯類神経システムの包括的理解

2025年度までの進捗状況

1. 概要

広範囲を観察できる顕微鏡や集積度の高い特殊な電極を使って、ネズミの脳活動を測定しています。顕微鏡による観察では、蛍光物質を発現させることで、神経活動を可視化して調べています。そうすることで、動物たちがどのような報酬や欲求を感じているのかを理解しようとしています。また、人間の意思決定の理解につながるような行動課題の開発と、それを用いた神経活動の計測・解析を進めています。

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図1:動物個体ごとの差を神経計測によって調べる。

2. これまでの主な成果

(1)ヒトの喜びの理解につながる、齧歯類での古典的条件づけにおける報酬の主観的価値表現に関する脳指標の計測

報酬の主観的な価値を調べるための研究で、古典的条件付けという実験を行いました。すなわち、音を鳴らすと水が出るような課題をネズミに与えました。すると、ネズミは音に対して予測的に舐める行動を示すようになりました。ネズミの脳の活動を見るために、脳の中で特定の物質が光るようにしました。そして、顕微鏡と電極を使ってたくさんの神経活動を同時に調べると、水報酬やそれを期待させる刺激に対して様々な神経活動が見つかりました。また、ネズミの喉が渇いている時と乾いていない時で、神経活動がどのように違うのかについても調べています。これにより、それぞれの動物にとって、飲み水の価値が異なる状況で、脳活動がどのように変化するかを検討するための実験・解析を進めています。

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図2:神経計測に用いる顕微鏡(左)と計測により得られた大脳皮質広域の報酬関連活動(右)。
(2)ヒトの志の理解につながる、齧歯類での報酬への欲求のシステム的理解を目指した、オペラント条件付けで欲求を計測できる行動課題の開発及び脳指標の計測

ラットを用いて、報酬が欲しいために行動を起こす欲求の神経メカニズムについて調べています。ラットは人間と違って言葉で自分の状態を報告できないため、2つの選択肢のどちらを選択した後にどれだけ待つかという行動から、動物の判断に対する確信度を推定する課題の開発を進めています。この課題は、顕微鏡や電極による神経活動記録と組み合わせることができるため、報酬を目にした時や判断を行った時に、動物の内部状態が行動に影響を与える仕組みを調べるための実験基盤として利用できます。ラット用の仮想現実環境も開発しています。
また、神経活動を記録した脳の場所を正確に比較するため、記録後の脳を透明化し、三次元的に撮像して、標準的な脳地図に位置合わせするための解析手順も整備しました。

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図3:報酬を待つ時間を確信度指標として取る(左)。課題成績は確信度指標(待ち時間)に相関する(右上)。開発中のVR空間での動物の移動の様子(右下)。

3. 今後の展開

報酬の主観的価値の脳内表現を、高密度・高解像度に計測し、検討を進めています。報酬の価値が変化したときに、報酬に対する脳の活動がどのように変化するかを調べます。また、欲求や確信度についての考察を深める上で役立つ行動課題をさらに整備します。さらに、個体間で価値に関する神経表現を比較するための理論的検討と、神経活動データを共通の枠組みで扱うための解析基盤の整備も進めます。

(田中康裕:玉川大学)