成果概要
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脳指標の個人間比較に基づく福祉と主体性の最大化[1] 社会における福祉と主体性の特定と更新
2025年度までの進捗状況
1. 概要
本課題の役割は、事実解明的研究(調査・実験)を導くプレ理論を構想することです。福祉・主体性にかかわるリストと定式化理論を構築し、「シティ・ケイパビリティ」の測定方法を開発します(課題1-1)。また、国立国会図書館の全文デジタルデータを活用し、福祉・主体性概念に関わるデータの解析を進めます(課題1-2)。
本年度は(1)ケイパビリティアプローチの実用化を図り、福祉と自由(主体性)の測定に挑戦しました。福祉は多次元空間で実現される「喜び」を、自由は個人が「志」を発揮できる選択肢の豊かさを捉えます。(2)大規模テキストデータの収集・整理作業と並行して、文化の幾何学アプローチと単語埋め込みモデルを用いて、福祉・主体性の主要軸を特定するための分を行いました。
2. これまでの主な成果
(1)ケイパビリティアプローチの特徴は、多空間(資源・利用能力・機能・効用)で、個人と社会を捉える包括性にあります。これが実用化されるとしたら、社会政策の検証と立案に大きなヒントを与えるでしょう(下図)。


本研究は、Out-Inケイパビリティ指標(上図)で個々人の福祉を測ったうえで、社会的選択理論の手法により、個人のケイパビリティを測定する方法を考案しました。
(2)福祉概念に関する計算テキスト分析の実施
国会図書館全文データ(国会図書館が所蔵する明治から1968年までに出版されたすべての図書、1989年までに出版されたすべての雑誌のデジタルテキストが含まれている)をデータとして、福祉・主体性の主要軸を特定するために計算テキスト分析の方法によって分析しました。具体的には、哲学、心理学、社会科学の広範な先行研究を徹底的にレビューし、Subjective well-being を中心としSafety、 Wealth他 12 の意味次元を、ウェルビーングの仮説的道徳空間の主要軸として特定しました。その上で、これら概念が実際に人々のウェルビーングに関する日常的な使用法を反映しているか、また道徳空間の内的構造がどのようになっているか、歴史的にどのように推移したのか、文化の幾何学アプローチを応用した単語埋め込みモデルによる分析によって検討しました。これらの次元どうしの相関関係を解析し、主観的ウェルビーングの中心性、実存安全的価値、ユウダイモニア的価値、表現主義的価値、制度的価値という4つの内部クラスターをなしていることも明らかにしました。

3. 今後の展開
- ケイパビリティアプローチの適用により、「スマートシティにおけるモビリティ構想」を具体化します。
- 「喜び」や「志」の脳指標 の開発に資するよう、ケイパビリティアプローチの使い勝手を高める。
- 文化の幾何学アプローチに基づく国会図書館全文データの分析を行い、哲学的・規範的に提案された福祉と主体性の概念を現実の人々の思考や態度に即して検討します。
(後藤玲子:帝京大学、瀧川裕貴:東京大学)