成果概要
社会的意思決定を支援する気象-社会結合系の制御理論[A-3] 海上における湿潤対流の変化技術の開拓
2023年度までの進捗状況
1. 概要
- 背景:
- 激しい気象に対して適切に介入を行い、その脅威を抑制しようとするとき、どのような介入手法を用いればよいかは、当然極めて重要な課題です。台風のような海上において発達する現象は海上で介入を行うことが望ましいです。今は存在しない新しい介入手法を理論研究との連携で創り出していく必要があります
- 目的:
- 理論研究に基づいて、台風を始めとする極端気象の未来を大きく変えるために、現実の大気に対して適用可能な介入手法を開発します。
- 手法:
- 海上の台風において大量に発生している個別の積乱雲に注目します。この積乱雲やそれをもたらす湿潤対流に多角的にアプローチすることで積乱雲を抑制することを目指します(図1)。海上での実施が可能な手法を模索します。

2. これまでの主な成果
- ① 2024年1月に本研究開発テーマは発足しました。他の研究開発テーマとの連携によって、図1に示すように海上の個別の積乱雲をもたらす気象システムに対し、大気上端と下端からそれぞれアプローチする戦略を策定しました。
- ②大気上端からのアプローチを実現するため、植物・菌類等由来の氷核活性物質の探索をしています。これを航空機等を利用して散布することで積乱雲をもたらす気象を制御することを目指します。類似のアプローチに比べて、環境への悪影響が小さく、なおかつ効果の高いものを設計することを目指します。図2はブルーベリーの枝内の氷核活性をまとめたものです。自然の環境では氷が形成されにくいような高温(-1.6℃)でもブルーベリー枝内では氷が形成できることが分かります。2023年度はレンギョウ枝などに含まれている氷核活性物質の解析、雪の下から分離した菌類などの解析を進めました。

3. 今後の展開
2023年度は本研究開発テーマの研究期間は3か月程度でしたが、積乱雲の上端からアプローチする手法について研究活動の立ち上げと初期的な成果を得ることができました。今後も効率よく雲・氷を大気中で作ることができる新規物質の開拓を進めていきます。
また図1に示した通り、次年度以降さらに多様な介入手法の研究が展開される予定です。特に他研究開発テーマにおける理論研究から、大気下端の大気の湿度に介入するアプローチは有望であると考えられているため、本研究開発テーマにおいて介入手法の開発を精力的に行っていく予定です。