成果概要

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社会的意思決定を支援する気象-社会結合系の制御理論[A-1] 「制御可能性」を導く新しい気象データの構築・解析と制御手法設計

2025年度までの進捗状況

1. 概要

背景:台風のような極端気象は大きなエネルギーを持つ複雑な現象です。目標8では十分小さな力で安全に、極端気象の未来を大きく動かす新しい理論の開拓が望まれます。

目的人工的な小さな外力で台風をはじめとする極端気象の未来を大きく変えるために有用な秩序だった気象現象を発見し、それを利用する気象制御理論を打ち立てます。

手法:最新鋭のシミュレーション技術と衛星観測を統合し、過去の大量の台風の3次元的な構造を再現するデータセットを作成します。そのデータを気象学的な現象理解による手法(プロセス駆動型アプローチ)、およびそのような気象学的知識を必要としない機械学習手法(データ駆動型アプローチ)を組み合わせて解析(図1)します。

図1
図1. 研究開発項目の全体像

2.   これまでの主な成果

① 台風のデータセットの作成に必要な技術基盤を整備し当面解析に必要なだけのデータの作成を完了しました。
② [プロセス駆動型アプローチ]台風内部の積乱雲をもたらす小さな水蒸気の空間的揺らぎが、台風全体の強度発達をもたらしているという新しい秩序を発見しました(図2)。こうした現象の理解を深め、具体的かつ実現可能な制御介入手法の提案を目指しています。

図2図2
図2. (左上)台風のシミュレーション、(右上)左上と同様だが、台風中心付近の積乱雲をもたらす水蒸気が特定の場所に集中しないようにシミュレーション中で仮想的に分散させた結果、(下)台風最大風速の時間変化。青い点線での時刻でのシミュレーション結果が上の2つの図に示されています。黒線が左上の、茶線が右上のシミュレーション結果を表します。水蒸気の空間的揺らぎが、台風全体の強度発達に大きな影響をもたらしていることを示す結果です。

③ [データ駆動型アプローチ]研究開発項目A-2で考案されたEnsemble Kalman Control(EnKC)と制御工学で考案されたモデル予測積分制御 (Model Predictive Path Integral(MPPI)を融合した制御数理を新たに考案し、その理論的な有効性を示しました(図3)。

図3
図3. 新しい制御数理Ensemble Kalman Guided Model Predictive Path Integral (EKG-MPPI)の概要。まずEnKCを行っておおむねどのあたりに介入すればよいかを「探索」し、その後より精緻なアルゴリズムであるMPPIを用いて介入の場所と強さを「特定」します。予測と制御が一体になったアルゴリズムであり、未来予測を行いながら制御を実行することが可能です。

3. 今後の展開

これまでに、小さなスケールの水蒸気の揺らぎが台風全体の強度発達をもたらしていることを示し、台風制御につながり得る、秩序だった気象現象が存在することを明らかにしました。また、研究開発項目A-2とも協力し、シミュレーションにより良い制御入力を自動で探索する効率の良い手法を見出すことができました。これまでの結果を統合し、突き詰めることで、具体的に大気に介入する装置を想定したシミュレーション実験を行い、台風制御に有効な手法を確立することに今後注力していきます。