成果概要

スケーラブルで強靭な統合的量子通信システム[5] 技術を統合・実証していくテストベッド・統合実装

2023年度までの進捗状況

1. 概要

本プロジェクトの要でもあるこのテストベッドは将来的には大学・国立研究所・企業等の研究機関に利用してもらい、量子コンピュータネットワークに関するハードウェア・ソフトウェアを実際に稼働するネットワークに導入して試験・実証することを可能とし拡張性のある研究・開発を行う拠点となることを想定して開発を進めています。特に実現したいことが2点あり、「量子光学・光技術を統合・システムエンジニアリングして拡張性のあるネットワークシステムを作ること」及び「実際にこの量子ネットワークシステムで複数の量子コンピュータを接続して1つのコンピューティング環境として分散型量子計算を実行可能にすること」です。接続する量子コンピュータの種類は将来的には任意の種類のものを接続できるようにすることを想定しており、プロトタイプとして光接続しやすいイオントラップ型量子コンピュータが接続できるよう研究を進めています。

図1. テストベッドで実現する分散型量子コンピュータ
図1. テストベッドで実現する分散型量子コンピュータ

2. これまでの主な成果

2022年度から本プロジェクトは開始され2023年度にかけて何もない部屋から始まった拠点整備・基盤作りが完了(図2)し、他の項目で研究開発された技術のこのテストベッドへの導入が始まりました。

図2. 開始当初(2022年10月)(左)と現在(2023年3月)(右)
図2. 開始当初(2022年10月)(左)と現在(2023年3月)(右)

現在では3つのもつれ光子対生成ノードとそれらから任意の2ノードを選択して接続するためのベル測定を行う原理実証のための量子ネットワークを開発しており、それぞれのノードや機器をソフトウェアによる制御・監視ができるように開発を続けております。(図3)

図3. 開発した量子ネットワークシステムの構成 (左)ベル測定を行うためのハードウェア構成 (右)制御・運用するためのソフトウェア構成
図3. 開発した量子ネットワークシステムの構成 (左)ベル測定を行うためのハードウェア構成 (右)制御・運用するためのソフトウェア構成

現在は量子ネットワークの通信リソースであるもつれ光子対の生成と評価を行っております。
光接続可能な量子ノードをテストベッドに導入することを見据え、量子ネットワーク向けのイオントラップ量子ノードの開発も進めています (図4)。

図4.(左)開発中のイオントラップ量子ノード(右)イオン捕獲のための電極チップ
図4.(左)開発中のイオントラップ量子ノード(右)イオン捕獲のための電極チップ

3. 今後の展開

光技術を用いて量子コンピュータを物理的・論理的に相互接続し、スケーラブルで負荷耐性・障害耐性もある強靭な量子コンピュータネットワークシステム・アーキテクチャを実証します。これを通して、多数の量子コンピュータでネットワークを形成し、一つの大きな分散処理システムとして機能させることを目指します。
他のプロジェクトで開発された量子コンピュータや量子インターフェースも導入できることを想定しており、より大きな量子コンピュータネットワークシステムを形成し、誤り耐性がある量子計算が実行できることを目指します。