成果概要

スケーラブルで強靭な統合的量子通信システム[5] 技術を統合・実証していくテストベッド・統合実装

2024年度までの進捗状況

1. 概要

本プロジェクトの要でもあるこのテストベッドは将来的には大学・国立研究所・企業等の研究機関に利用してもらい、量子コンピュータネットワークに関するハードウェア・ソフトウェアを実際に稼働するネットワークに導入して試験・実証することを可能とし拡張性のある研究・開発を行う拠点となることを想定して開発を進めています。特に実現したいことが2点あり、「量子光学・光技術を統合・システムエンジニアリングして拡張性のあるネットワークシステムを作ること」及び「実際にこの量子ネットワークシステムで複数の量子コンピュータを接続して1つのコンピューティング環境として分散型量子計算を実行可能にすること」です。接続する量子コンピュータの種類は将来的には任意の種類のものを接続できるようにすることを想定しており、プロトタイプとして光接続しやすいイオントラップ型量子コンピュータが接続できるよう研究を進めています。

図1
図1. テストベッドで実現する分散型量子コンピュータ

2. これまでの主な成果

2022年度から本プロジェクトは開始され何もない部屋から始まった拠点整備・基盤作りが2023年度にかけて完了した後、2024年度では基本光技術のテストベッドへの統合が完了し物理実験で検証を行いました(図2)。

図2
図2.テストベッドの様子

現在では3つのもつれ光子対生成ノードとそこから任意の2つのノードを選択してベル測定を行えるようになっていることを確かめており、これは異なる量子ノードにある単一光子同士を遠隔で接続し量子リンクを形成できていることを意味し、さらに現在の古典コンピュータネットワークと同様に必要に応じて接続先のノードを切り替えられるようになっていることを意味します (図3)。

図3
図3. 開発した量子ネットワークシステムの構成 (左)3つの量子ノード+1つの量子スイッチノードの量子リンク形成および切り替えを検証するハードウェア構成 (右)制御・運用するためのソフトウェア構成

光接続可能な量子ノードの開発も行っており、イオンの捕獲とレーザー冷却に成功しました(図4)。

図4
図4.捕獲されたストロンチウム原子イオンの蛍光像

3. 今後の展開

光技術を用いて量子コンピュータを物理的・論理的に相互接続し、スケーラブルで負荷耐性・障害耐性もある強靭な量子コンピュータネットワークシステム・アーキテクチャを実証できるよう、拡張性の高い制御機構および通信プロトコルの確立を目指します。これを通して、多数の量子コンピュータでネットワークを形成し、一つの大きな分散処理システムとして機能させることを目指します。
他のプロジェクトで開発された量子コンピュータや量子インターフェースも導入できることを想定しており、より大きな量子コンピュータネットワークシステムを形成し、誤り耐性がある量子計算が実行できることを目指します。