成果概要

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スケーラブルで強靭な統合的量子通信システム[3] 量子信号の中継・変換を実現する量子メモリ・量子中継

2025年度までの進捗状況

1. 概要

本研究開発項目では、光・マイクロ波などの電磁波と物質の量子系間の変換およびそれに基づく量子中継の研究開発を実施しました。
開発技術は、可視域の光子と結合する量子メモリ系希土類添加物Pr:YSOやルビジウム原子、マイクロ波と結合する量子メカニカルメモリ、そして量子メモリと光をつなぐ周波数安定化や量子トランスデューサー技術などです。これらの開発は、量子メモリ間の量子もつれ生成、さらに量子中継、超伝導量子コンピュータと量子通信の接続へとつながります。

2. これまでの主な成果

量子中継ネットワークに向けた多重化量子メモリ開発

Pr:YSO結晶吸収スペクトルに量子メモリ領域を多数生成し、図1のように50以上のメモリ領域を作製しました。

図1
図1:Pr:YSOに形成されたメモリ領域
中継用量子メモリ光源安定化技術の開発

量子中継において量子メモリと結合するために光源の周波数安定化技術開発を進めました。特に今年度は、もつれ光子伝送用レーザーの周波数安定化と高信頼性光コムの開発を実施しました。その結果、もつれ光子伝送用レーザーの周波数変動を1 kHz以下に抑えることに成功しました。また、光コムのキャリアエンベロープオフセット周波数の位相同期を実現しました。

スピン波によるもつれ光子発生の確実性向上に関する研究

ルビジウム原子をレーザー光で冷却して捕捉し、その内部状態をレーザー光で精密に制御することで、量子メモリの動作に必要な原子の制御が可能となりました。また、量子メモリの動作に不可欠な、原子集団から放出された光子を単一光子検出器で検出することに成功しました。さらに、光と原子の間で効率よく量子情報をやり取りできるようにするために、高性能な鏡を使って光子を閉じ込めるための光共振器を構築しました。また、複数の量子もつれ状態を1つの量子メモリに保存するための、独立な複数の書き込みモードを整備し、最大で18モードの書き込みが可能となりました。

量子メカニカルメモリの開発

 デバイスの集積化や微小化に向け、様々な光・音波導波路形状や共振器が伴ったLN薄膜デバイスの開発を行いました(図2)。これらの性能はデバイスの光・音波損失によるため、ファブリケーションプロセスの向上や最適化をこれまで同様行いました。音波デバイスでは幾つかの低温測定(T=300 mK)も行い、薄膜内音波共振器では寿命10 μs(Q~2×10^5)と長寿命のフォノン励起が確認されました(図3)[1]。マルチモード導波路内の様々なBrillouin散乱の観測も行いました[2]。量子トランスデューサーを念頭においた電気光学変調器の開発では、200 GHzを超える超高周波・超広帯域変調器の開発・測定を行いました[3]。また、冷凍機へのデバイス導入のための電気配線や光入力機構(グレーティングカプラ)を伴ったチップの開発およびその性能評価も行いました。

[関連論文]
1. arXiv:2603.11293(2026)
2. Optics Express, 34. 12304 (2026)
3. 2024 IEEE Photonics Conference (IPC) (2024)
図2
図2: 作成された光・音波回路
図3
図3: 高Q値薄膜メカニカル共振器回路の透過スペクトラ

3. 今後の展開

開発している量子メモリや周波数安定化技術を導入した量子メモリ間もつれの実証を含む量子中継技術へと発展させていきます。また量子メカニカルメモリ・量子トランスデューサーの開発を通じて、超伝導量子コンピュータの量子通信環境との接続へと進めます。