成果概要
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スケーラブルで強靭な統合的量子通信システム[4] 量子情報の分散環境が可能とする分散量子アプリケーション
2025年度までの進捗状況
1. 概要
2025年度(令和7年度)は、当プロジェクトが目指す多数の量子ノードから構成される量子ネットワークのテストベッド上でどれだけ量子性が発揮できているかを評価するための量子アプリケーションを考案しました。
併せて、量子インターネットを介してクライアントが複数の遠隔量子サーバから最適なサーバを選ぶ問題に取り組みました。実行時間はサーバ処理・古典通信・エンタングルメント分配の組合せで決まり、どれがボトルネックとなるかは状況により変化するため、選択は容易ではありません。これに対し、各層の簡易なテレメトリを統合した軽量な指標 Tmaxを提案し、シミュレーション評価により最良サーバ選択との実行時間差を10%未満に抑えられることを確認しました。
また量子情報処理に関して、量子センサネットワークの有用なアプリケーションを理論的に提案しました。具体的には、量子センサネットワークにおいて、空間的に離れた固体素子量子ビットを、光子を媒介にしてエンタングルさせて、振動磁場を検出する方法を提案しました。エンタングルした状態の持つ相関が検出効率を上げることを示しました。
2. これまでの主な成果
(1) 本年度は、当プロジェクトが目指すテストベッドで利用可能と想定される実験資源を使って、そのテストベッドでどれだけ「意味のある」量子情報処理ができるかを評価するためのアプリケーションの開発に注力しました。
そのため、これまで開発してきた、複数の量子ノードおよび量子リンクから構成される量子系を想定した遠隔CNOTの実装上の有効性を評価する理論をもとに、その諸仮定を再検討しました。また、当プロジェクトが目指すテストベッドにおいて想定される実験リソースとの整合性を評価し、アプリケーションの実装可能性を最大化する方向で量子アルゴリズムを設計しました。
(2) 量子インターネット上で遠隔量子サーバ群から最速のものを選択する問題を、サーバ処理・古典通信・エンタングルメント分配のうち状況によってボトルネックが切り替わる層横断的なランキング問題として定式化(図1)し、各層のテレメトリを統合した軽量な実行時間予測スコア Tmaxを提案しました。NetSquid でPB-VQEアルゴリズムを用いた評価により、最良選択との実行時間差を10%未満に抑えられることを示しました。
さらに、距離とエンタングルメント分配率の平面上で、Sobol 感度解析と組み合わせて運用領域ごとの支配的ボトルネックを同定することで、実装計画への設計指針を提示しました。

(3) 量子ネットワークにおける分散配置された量子センサと量子コンピュータのダイナミクスの解析について、分散型量子コンピュータにおける高精度化に成功しました。NISQにおける疑確率法を適用することで、比較的低いサンプリングコストで、離れたノード間のエンタングルメントを期待値レベルで生成する方法を提案しました。

(4)量子情報の効率化に関する研究では、光を用いた量子センサネットワークによる振動磁場検出の手法を提案しました。非局所的な相関を利用することで振動磁場の強度だけでなく、振動磁場が持つ空間的な情報を取得する方法を提案しました(図2)。
3. 今後の展開
本年度が、当プロジェクトの最終年度となりましたが、これまで得られた成果は、後継のムーンショットプロジェクトの目標達成に大きく貢献していくと期待しています。特に、ネットワーク型の量子コンピュータの実現や活用には分散型量子計算の知見が適用できます。これらの成果をもとに、大規模な量子コンピュータの実現を加速することで、社会をさまざまな観点から飛躍的に発展させていきます。