成果概要
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スケーラブルで強靭な統合的量子通信システム[2] 量子光の精緻な制御を可能にする量子光通信技術
2025年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目では、量子コンピュータネットワークシステムの統合実証に向けて、主に量子ネットワークのハードウェア面で求められる要素技術の開発を行ってきました。特に量子もつれ光を使って量子計算ノード間を量子的に接続するハード技術は分散型量子コンピュータ実現のための根幹技術のひとつであり、アーキテクチャ、量子メモリ、全体システム実証といった他の開発テーマと密に連携しながら研究開発を進めました。
技術的には2つのアプローチから研究に取り組んでいます。1つは、2つの光子が量子的に干渉する「2光子干渉型」の量子もつれ光源の開発と、分散型量子コンピュータシステムの構築です。2光子型は比較的に技術が確立している方式で、システム実証の開発テーマと連携し、本研究開発項目で開発された技術を実装した分散型量子コンピュータシステムの原理実証を進めました。
もう1つは、0光子(真空)と1光子の量子重ね合わせからなる「1光子干渉型量子もつれ光」を用いたネットワーク構築です。この方式は、位相同期など2光子に比べ高度な技術の開発が必要になりますが、光損失に耐性を持つ、波長多重型の量子メモリと親和性が高い、など優れたポテンシャルを持った次世代の量子光技術です。開発要素は多岐にわたっており、たとえば、1光子型量子もつれ光源やその評価(測定)方法、量子もつれ光源間の位相同期技術、量子もつれ交換方式、光子ルーティング法の設計などの研究を行っており、将来的な量子コンピュータネットワークの実現を目指した基盤技術を開発してきました。

2. これまでの主な成果
様々な種類の量子ノード間を量子もつれ光で効率的に接続する技術を確立するためには、量子もつれ光の波長変換、量子メモリの波長と通信波長の間をつなぐ量子もつれ光源、量子もつれ光の周波数安定化や狭帯域化、光損失耐性のある伝送方法、多者間の量子もつれの伝送・配布などの要素技術が重要となり、これまでそれぞれの開発に成功しています。図2はその一例で、2光子干渉型・1光子干渉型双方の利点を生かすために本プロジェクトで独自開発した「2光子・1光子ハイブリッド型量子もつれ光源」による効率的量子もつれ伝送実験です。ハイブリッド型量子もつれ光は、もつれの片側は光子の有無の重ね合わせ(1光子干渉型)、もう片側は光子の偏光の重ね合わせ(2光子干渉型)からなる量子もつれ状態で、損失耐性のある前者を効率的な量子もつれ伝送に用いることで、分散量子コンピュータにおいて利便性の高い後者の量子もつれを効率的に配布することが可能になります。実験ではハイブリッド型量子もつれ光源を2つ準備し、量子もつれ交換プロトコルを行うことで、損失のある通信路でつながれた2地点間での効率的な2光子干渉型の偏光量子もつれの伝送に成功し、従来の偏光量子もつれのみで行う量子もつれ交換では実現不可能な伝送レートの実現に世界で初めて成功しました。こうした成果は、それ自体が新技術の実現であるとともに、プロジェクト内の様々な開発テーマを支える基本要素技術となっています。


3. 今後の展開
本研究開発では、プロジェクト全体のシステム実証実験に必要な様々な量子光通信技術の開発を進めてきました。今後はこれらの技術を統合した分散量子コンピュータの光接続技術や、より広範囲な応用を持つ量子ネットワーク技術の実証への展開が期待されます。