成果概要
スケーラブルな高集積量子誤り訂正システムの開発[3] 光/Cryo CMOS集積回路によるスケーラブルな古典-量子インターフェース
2023年度までの進捗状況
1. 概要
スケーラブルな量子コンピュータを実現するためには、室温環境-極低温環境をまたぐ膨大な配線をコンパクトにしつつ、古典-量子間で通信される膨大な量のデータを効率的に伝送する必要がある。本研究開発項目では、図1の通り、古典-量子の境界で動作する光/Cryo CMOS集積回路を開発し、高効率な情報伝送を実現する。キー技術として図1の①~④を開発している。進捗状況として、① 簡素な量子制御アーキテクチャの提案、② 光集積回路向け極低温測定環境の立ち上げ、③ Cryo CMOS向けPDKの開発、④ Cryo CMOS回路の設計技術開拓を行った。

2. これまでの主な成果
① Cryo環境向け量子制御アーキテクチャの提案
図2に示す簡素なRFパルス発生回路のアーキテクチャを提案した。超伝導量子ビットの制御波形の包絡線を大胆に簡素化することで、DAコンバータのサンプリングレートやメモリ容量を2桁削減できることを明らかにした。

② 古典-量子I/F向け光集積回路の極低温環境の立ち上げ
光集積回路の極低温動作特性を測定可能な測定環境を立ち上げた(図3左)。光通信モジュールのテストチップを設計した(図3右)。恒温槽環境下ではあるが、-65℃環境下での要素回路の動作を確認した。

③ Cryo CMOS向けPDKの開発
テストチップの測定結果を用いて、4 Kから300 Kという幅広い温度領域に対して、SPICEシミュレーションが可能となる機械学習ベースのトランジスタモデルを開発した(図4左)。従来のトランジスタモデルをスタート地点に、実用回路の4 Kシミュレーション環境を構築した(図4右)。

④ Cryo CMOS回路の設計技術開拓
極低温環境下で問題となるCMOS回路の発熱を極限までカットする低電力回路を提案した。極低温環境では、漏れ電流が激減する特徴を活用し、室温環境では応用先が限られるダイナミック回路をベースとしたCryo CMOS回路を汎用回路向けに開発した。また、図5に示す通り、特性ばらつき測定用のチップおよびFPGA基板を試作した。

3. 今後の展開
各要素技術の実測を通したコンセプト実証を行う。さらに、各要素技術の統合を積極的に検討し、提案システムの実証およびスケーラビリティ見積もりを狙う。