成果概要
スケーラブルな高集積量子誤り訂正システムの開発[2] 量子ビット制御フロントエンドの先鋭化
2024年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目では、スケーラブルな高集積量子誤り訂正システムを実現するための量子ビットの制御と観測を行うフロントエンド(図1)の性能向上と小型化を目指す。

具体的には、(1)ディジタル信号処理を活用したシステム簡略化と信号品質の向上、(2)システムの高集積化による小型化、(3)複数ユニットの同期に必要なクロック分配の効率化、(4)エラーシンドローム解析バックエンドと連携して誤り訂正処理を行う観測およびフィードバック制御の実装、について個別に取り組んできた成果を、実際の超伝導量子ビットを用いて評価するために統合した。また、研究開発してきた技術を超伝導以外の方式の量子ビットの制御に利用するためのシステムアーキテクチャの検討を行なった。
2. これまでの主な成果
2023年度までに要素開発を行った技術を100量子ビット程度向けに評価できるシステムとして、信号処理ボード、制御ボード、筐体を開発した(写真1)。

2023年度までに開発した実験ボードおよび集積化したRF回路モジュールを用いて、実際の量子ビットを制御するためのシステムとして構築するために、モジュールのサイズの調整や統合化のために必要なボードの開発をおこなった。
エラーシンドローム測定用のFPGAファームウェアを100量子ビット向けの環境で利用できるよう複数の装置で同期して実行できるように拡張した。拡張ファームウェアを複数の制御装置上で動作させ、量子ビット制御時と同様の同期精度でエラーシンドローム測定処理を繰り返し実行できることを確認した。
加えて、超伝導量子ビット以外の量子コンピュータへの技術展開を目的として、イオントラップおよび中性原子を用いる量子コンピュータ向け量子ビットの制御システムの構成として、ヘテロジニアス構成の制御システムアーキテクチャを検討し(図2)、その有効性を評価するためのプラットフォームを実装した。

3. 今後の展開
2025年度では、これまでの研究開発要素をシステムとして組み合わせた100量子ビット程度向けの制御装置を用いて、実際の量子ビットの制御・観測をおこない、実環境における繰り返し動作や多系統の制御における同期精度、信号品質、フィードバック遅延などの観点で、性能を評価する。また、誤り訂正処理に必要な量子ビットの制御と観測ができる方式を確立し、エラーシンドローム解析バックエンドと組み合わせて誤り訂正が可能なシステムが実現できることを示す。
加えて、他の量子ビット方式の量子コンピュータに対して検討したアーキテクチャを、実際の量子ビットの制御に利用し、性能を評価する。