成果概要
大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発[1] 量子コンピューティング
2023年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発テーマは、プロジェクト全体を統括して量子コンピュータをシステムとしてまとめる役割を担いますが、下図の三つ(#1、#2、#3)の具体的な研究開発課題に取り組んでいます。

一つ目は、シリコン量子コンピュータを大規模化する際のマイルストーンである量子ビットの「2次元量子ビットアレイ」化に関する研究です。二つ目は、この量子ビットアレイを高精度に制御し量子情報を高感度に読み出すために必要となる「量子ビット高精度制御・高感度読み出し回路」を開発します。三つ目は、システム全体をコンピュータとして動作させるための「システムアーキテクチャ」を開発します。これらによって、シリコン半導体技術の特徴を活かした大規模集積シリコン量子コンピューティングシステムの実現をめざしていきます。
2. これまでの主な成果
2次元量子ビットアレイ化に関する研究では、量子ドットアレイと、その制御に必要な直接周辺回路を混載するQCMOSプロセスを開発し、周辺回路が極低温領域(4K)で動作すること確認し、量子ドットの特性マップ(シュムプロット)を取得しました。小規模回路での検証においては、高速高精度な単電子ポンプに加え、ルーターを実証しました。[T. Utsugi et al., PRB, 11 December 2023]また、1量子ビットスピン操作を検討し、マイクロ波の印加時間を変えてスピン反転確率を測定することで、ラビ振動の測定に成功しました。[T. Kuno et al., APS, March 2024]


量子ビット高精度制御・高感度読み出し回路の研究では、極低温量子ビット制御チップ(CAC)、量子ビットアレイチップ(QBA)を設計・試作・評価し、量子ドットの特性マップ(シュムプロット)を取得の際に活用しました。
システムアーキテクチャの研究では、量子オペレーティングシステム(量子OS)を検討し、その機能として量子回路から量子デバイスの制御信号を生成する一連のソフトウェアフレームワークを開発しました。また、シャトリング量子ビット方式を検討し、量子ビット結合自由度の拡大とクロストーク影響の抑制の理論検証を行いました。
[https://arxiv.org/abs/2401.14683]


3. 今後の展開
FTQC実現に向けては常識にとらわれない様々なイノベーションが必要です。プロジェクト内外との連携によって、半導体技術を最大限に活用した量子ビットアレイ構造での量子ビット操作を実現し、さらにシステムレベル実装によってその高信頼・効率化に取り組みます。