成果概要
未知未踏領域における拠点建築のための集団共有知能をもつ進化型ロボット群[5] ネットワーク知能システムの制御対象拡大と応用展開
2024年度までの進捗状況
1. 概要
この研究開発項目では、ネットワーク知能システムに対して、研究開発項目1~3で開発してきた小型ロボット群に代わる、別の新たな個体群をエージェントとして適用する研究開発を進めます。
ここでは、自己の制御誘導機能が制限され、機体制御性能が低い状態の同種で複数の小型ロボットをAIにより制御することで探査などの高度な作業をロバストかつ継続的に実現することを目指しています。特に下層AI(群知能)では、小型ロボットの制御性と精度の低さを想定し、ロボット単体の存在位置や制御状態などを考慮することなく群形成させる制御手法を検討し、個体の配置、制御状態などを考慮する必要はなく、ロボットが保有する制御パラメータも限定的であることより個体の状況によらないシステム全体の安定性を担保しています。すなわち、上位層AIに対して個体を意識させない制御手法を提供する点に特徴を有しています。さらにロボットより得られる位置や環境情報に大きな曖昧性が存在することを下位、上位のAIにて想定し、曖昧なデータの取り扱いとロバストな動作を実現します。このネットワーク知能システム、特に下位層AIが提供するシステムおよび制御的な枠組みと特徴を活かせる月惑星探査ロボット以外の制御対象への展開、様々なロボットシステム との協働スキームなどを検討し、人々の生活により密接な地上を中心とした応用展開の可能性を探ります。また検討に際して生じる様々な課題に関して議論し必要に応じて課題解決を目指します。
まず、新たな個体群として、機体自体に制御が不要であるが原理的に制御性が低い対象として、本課題ではサイボーグ化された生物(主に昆虫を扱うため「昆虫サイボーグ」と呼ぶ)を制御対象として選定し、ネットワーク知能システムからの制御実現およびサイボーグ技術の課題解決を検討します。
2. これまでの主な成果
昆虫サイボーグの制御・行動分析・ロボットとの協働という複合的要素を対象に、基礎設計から検証までの一連の研究開発を進めました。マダガスカルゴキブリを中心に、地上ユースに適した生物の選定と制御刺激の最適化を行い、実環境に近い地表環境下での行動データ収集を実施した。取得したIMUデータに基づき、地表地形を分類するための機械学習モデル(ランダムフォレスト)を構築し、高い分類精度を達成した。また、5体の昆虫サイボーグを用いたリアルタイム地表マッピングシステムを開発し、1時間以内に3 m × 3 m の探索エリアの半分以上をカバーする実証にも成功した。加えて、ナビゲーション精度を向上させるための感覚器(複眼・単眼)の無効化処理を施し、航行距離と時間をそれぞれ大幅に短縮するなど、制御プロトコルの最適化にも顕著な成果を挙げました。
3. 今後の展開
要素技術(刺激頻度削減プロトコル、ロボット走破ルートの最適化、サイボーグ群の協働制御)の基盤の構築を進め、研究開発を進めます。
