成果概要
未知未踏領域における拠点建築のための集団共有知能をもつ進化型ロボット群[4] 月溶岩チューブ探査ミッションおよび探査システム
2024年度までの進捗状況
1. 概要
この研究開発項目では、月面上に存在する溶岩チューブにおいて、2025年度以降のロボット探査の実現を目指し、探査ミッションの計画設計、探査システムの開発を行います。
探査ミッションの計画では、月面までの輸送機会(ロケットおよび着陸機)の検討を行い、溶岩チューブ縦穴へのシステムの投入方法、探査方式などを検討し計画を立案し、計画実現に向けたシステム仕様決定を目指します。またミッション計画に沿って探査システムの仕様を決め、探査システムの機械系、電気系の設計および宇宙環境試験等を実施し、月面ミッションで使用可能な探査システムとして実現します。探査システムは、投入カプセル(コンテナ)および小型探査ロボットから構成されます。探査ロボットは投入カプセル内部に格納され、カプセルごと着陸機へ搭載し、カプセルが現地投入されることになります。カプセルは展開し、ロボットを放出した後、外部との通信中継のステーションとなることを想定しています。これらカプセル、ロボットの実現においては、研究開発項目1,2,3の研究開発成果および準備検討結果にもとづき、各研究開発項目と連携して研究成果活用と各技術の月面環境試験を経て宇宙仕様化を検討し、月面環境で使用可能な探査システムとして設計します。
2. これまでの主な成果
1, 月溶岩チューブ探査ミッションおよび輸送方法の検討
月面溶岩チューブの縦穴および横穴に到達する方式に関して様々な可能性を想定し、民間を中心に着陸機の候補を選定し可能性を検討しました(ここで、打上げロケットに関しては着陸機に付随すると考えられます)。縦穴へ到達した後のロボットおよび通信システムの運用方法に関して、選択可能なオプションを検討し、可能な探査ミッションの手法における複数の選択肢を計画することで将来的な着陸機、予算等の状況に対応できるように検討を進めました。
2, 宇宙環境利用可能な制御装置の設計および宇宙環境対応電子部品の選定
月面探査が可能な探査機器の試作と試験により設計を固めるため、研究開発項目2の通信・制御装置の搭載を想定し、制御装置の振動、熱、放射線の各宇宙環境試験の実施評価を進めました。制御装置に関しては、ハードウェアが完成し、機能確認および環境試験を実施しました。探査機搭載の制御回路の開発は、課題2-1および2-2で研究開発を行っている進化型制御装置の搭載を検討し、機体設計に反映しました。進化型制御装置に関しては試作が終了し、動作試験を実施しました。
3,宇宙環境で機能する小型ロボットの仕様および設計開発
探査機のFlight Modelの設計に関しては、初期検討を実施しました。本プロジェクトで主に開発している試作ロボット(RED)をベースとした機体、日本初の月面着陸に成功したSLIMに搭載した小型探査ロボットLEV1の設計を継承した機体(LEV1 mini)の2種類の機体設計を実施しています。また、新規に提案した設計の機体に関しては、REDベース機に提案要素の搭載を基本方針として検討しています。また、小型ロボット搭載用の投入カプセルの設計については、着地後に探査ロボットの放出が可能な正対姿勢への移行が可能なこと、月面上で展開可能であることを考慮した設計を検討し、試作を実施しました。
4,小型ロボットの搭載ソフトウェア仕様設計
ミッション検討の内容に合わせて、小型ロボットに搭載するソフトウェア機能と運用管理の地上用ソフトウェアの設計を研究開発項目1の研究成果をベースとして実施しました。この一部を試作し、シミュレーションと実験にて確認して仕様を検討しました。搭載するソフトウェアに関しては、提案するモジュール構成タイプの進化型機能アークテクチャを課題2-3、2-4の研究成果を用いてより実践的なソフトウェアとして動作する様に設計を開始し、開発を進めています。
3. 今後の展開
最終的に小型探査ロボットにおいては、フライトモデルレベルの機体開発を行い、投入カプセルに関しては地上実験モデル程度の試作機を開発します。
