成果概要
未知未踏領域における拠点建築のための集団共有知能をもつ進化型ロボット群[3] ネットワーク知能RTプラットフォーム
2023年度までの進捗状況
1. 概要
この研究開発項目では、小型化により相対的に過酷になる環境をロボットが移動するためのメカニズムとそれを支える原理と仕組みを研究し、小型ロボットを設計、開発します。さらに、ロボット群と作業協動・支援する機能、ロボットや輸送対象を目標領域へ投入でき、各種機能・装置などを搭載できるロボットコンテナ(カプセル)に関する技術を研究開発します。
ロボット群を構成することで代替性によるリスク許容性向上、探査の効率化などが期待でき、そのために小型軽量化と低コスト化が望まれます。不整地移動ロボットの小型化では、複雑な機械構造は導入困難で物理的にも能力低下が発生し、周囲の環境は相対的に難環境化します。そのため、走行能力の回復が課題となるので、テラメカニクス(車輪と土壌の物理)を考慮した車輪や新たな移動方式の研究を行います。一方、軽量化に伴い跳躍エネルギーが小さくなり、機体の衝突エネルギーも低下するため、跳躍移動が有利になってきます。そこでテラメカニクスを考慮した跳躍移動方法を研究し、小型の跳躍移動機構を設計することで跳躍移動可能な移動ロボットを開発します。最終的に実際に宇宙で活動できるロボットとして開発を行います。
次に、ロボットの月溶岩洞窟への到達と長期活動のため、ロボット自身の現地投入、通信・電力の中継機能などの輸送などに使用可能なコンテナ(カプセル)に求められる機能を研究開発します。コンテナはロボット技術により自律的に変形展開し、搭載物を外に展開したり、人の活動拠点などになったりする機能が期待されています。さらには、ロボットによって輸送される時などではロボットと協働し、自身の輸送を補助する等の機能を持つのも期待されています。このための各種機能を折り紙や膜テンセングリティなどの技術を発展応用して研究開発し、設計・試作を経て技術を完成させ、群協働型のロボットコンテナとして開発します。これらのハードウェアに対して他研究開発項目の研究成果を統合することで、次世代の未踏峰難環境開拓のための「ネットワーク知能により高度に知能化された進化型のロボットプラットフォーム」を実現します。最終的に、月ミッションで活躍可能なロボットを実現します。
2. 2023年度までの成果
研究開発項目1「進化型ネットワーク知能システム」で用いる実験機として小型跳躍ロボット「RED2」を開発しました。跳躍動作のシミュレーションにより各種設計値を確定し跳躍姿勢や跳躍軌道を最適化しました。また跳躍ユニットの小型化も実現し、車輪の形状を変更して不整地への対応性能を向上させました。様々な路面環境での試験、実際の溶岩洞窟での試験などを通して性能を確認できました。月面の溶岩チューブ内を探査・調査を想定した実験により実践的なデータを収集し、これを設計にフィードバックした結果から新たなロボット機体の設計構想をまとめました。40台以上のロボットによる群構成や誘導探査実験を研究開発項目1とともに実現しました。
また、ロボットコンテナのプロトタイプを設計し、コンテナ展開技術と手法の確認、ロボットの展開実験、ロボットによる輸送試験を行いました。そして、その結果から新たなロボットコンテナの設計構想をまとめました。


3. 今後の展開
研究成果を発展させて小型ロボットに搭載する表面移動機能と跳躍移動機能のさらなる研究開発を進めます。とくに、新提案の表面移動方式の性能解析とロボットへの利用を実施します。そして改良した二つの移動機能を統合し、月面での探査を想定した小型ロボット(フライトモデル)と地上での総合試験を想定した小型ロボット(地上モデル)を設計開発します。これらのモデルは実際に月面の溶岩チューブ探査を想定した機体として開発し、宇宙仕様機として実証実験を進めます。また、地上モデルでは、様々な環境にお行ける群の協調行動の実証評価を行います。
コンテナでは、ロボットを搭載格納する機能、落下時の衝撃をエアバック等で緩和する機能などを機能を検討し、月の溶岩チューブへの投入カプセルとしての基本機能を研究開発します。さらに、群ロボットの活動をコンテナ側から支援する協働機能も検討していきます。データや電力を中継する機能、気体の膨張力や折り紙を利用したインフレータブル構造機能などを研究開発と利用検討をしていきます。
これらの結果を用いて月面重力環境を想定し、溶岩チューブ内に拠点を構築するためのシナリオを計画していき、その構想を盛り込んで開発していきます。
