LCS-FY2019-PP-06
木質バイオマスエネルギーポテンシャルの地域分布(Vol.3)
—木質バイオマス総生産コストの低減—
概要
人工林は全国に分布し、木質バイオマスは多様な用途で利用できる資源であるが、利用は進んでいない。本提案書では木質バイオマスを持続的に低コストで生産するシステムの構築を目標とし、以下の3点について報告する。
(1)LCS既報の施業コストの検証 低炭素社会戦略センター(LCS)では、すでに各地域の針葉樹人工林を生産林として林業の施業コストを計算しているが、人工林分布を一様と仮定していた。この施業コストの妥当性を検証するために、本提案書では普通林の針葉樹人工林を生産林とし、実際の地形や材積などの詳細な地理情報に基づいて施業コストを求めた。県単位での、既報のコストと本提案書のコストは同等となり、LCS既報の施業コストを用いることができることがわかった。本提案書では普通林を生産林としたため、収穫量が既報の5~9割程度と少なくなった。しかし、本提案書と既報で、地域の材積は同等であるためにコストは同等となった。また、普通林においても林業経営の集約化が可能な規模が維持できた。
(2)運搬コスト 未着手であった木材の運搬コストの計算を流域の森林簿と地理情報に基づいて行った。集約化のもとでの運搬コストは現状の約1/2となった。また、総運搬距離の長い地域に連結型トラックを導入することで、運搬コストを4割低減できた。
(3)林業の生産コスト 施業コストと運搬コストを合算すると木質バイオマスの総生産コストとなる。各県の生産コストを計算したところ、全国の3分の1にあたる15の県で欧米の林業国と同等の5,000円/m3以下となった。また、林業作業用路網の整備費を概算したところ、全国平均の木質バイオマス生産コスト5,890円/m3の4%(210円/m3)であった。
以上をふまえ、(1)林業集約化への複数の自治体の連携支援、(2)林業を指導できる人材の育成と活用、(3)林業用路網整備への支援、(4)連結型トラックの開発・導入を提案する。
提案書全文
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