低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2017-PP-14

低炭素電源システムの安定化と技術・経済性評価(Vol.2)
—ゼロエミッション電源システム構築に向けた技術開発課題—

概要

 再生可能エネルギーと蓄電池システムのコストは低減され、一部は商業的に成り立つ水準に到達している。しかし、再生可能エネルギーの大規模導入を許容する、経済的かつ信頼性の高い安定した電力系統システムを構築するためには、更なる技術開発が必要である。

 本提案書では、日本における電力系統の安定性を考慮し、再生可能エネルギーの大規模導入によるCO2排出量ゼロに向けた電源システムの発電コストを評価する。低炭素社会戦略センター(LCS)では、システム安定性を考慮した多地域電源構成モデルを開発した。このモデルに、将来の再生可能エネルギーの技術的・経済的評価が可能なLCSの製造技術データベース及び低炭素技術評価方法を適用して、以下の結果が得られた。基準年(2013年)とほぼ同等の発電コストで、2050年の電源システムからのCO2排出量を、2013年比85%まで削減することができる。特に、太陽光発電システム(PV)、蓄電池システム、省エネルギーが、経済性のある低炭素電源システムの確立に貢献している。年間電力消費量が800TWhのケースでは、電力供給量の30%以上を発電する290~360GWのPVが導入され、蓄電池システムの設備容量は、360〜510GWh(消費電力の10〜30%を供給)であった。一方、CO2排出量削減率を90%以上にすると、発電コストは急激に増加する。また、2050年以降のCO2ゼロエミッション電源システムの確立は、技術的には可能であるが、発電コストは現状の2倍程度になる。この場合、高温岩体地熱発電の開発、電力需要の削減、送電網システムの合理化、水素タービン発電のコスト削減などの検討が必要である。以上の結果に示すように、本提案書の方法論は、システム安定性を考慮した低炭素電力供給システムの定量評価に有効である。

提案書全文

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