遺伝子ベース作物生育モデルで気候変化に強い品種を設計

ハイブリッドモデリングによる環境変動適応型品種設計法の開発

(紹介動画)

紹介動画

研究代表者

中川 博視(農業・食品産業技術総合研究機構 基盤技術研究本部 研究管理役)

キーワード

イネ、ダイズ、発育、籾数、収量、生育予測モデル、ニューラルネットワーク、ゲノム、ハプロタイプ、品種設計


農業に及ぼす気候変化の影響を評価するために、作物生育モデルと気候シナリオを用いたシミュレーション研究が行われてきました。しかし、従来の作物生育モデルは、ゲノム情報を入力変数として扱うことができず、気候変化に適応する品種の設計を行うこともできませんでした。そこで、イネの環境適応性と収量に強い影響を与えることが知られている出穂期と籾数に関与する遺伝子のハプロタイプを考慮し、それらと気象データから任意地点の現在および将来気候条件のもとで収量を予測できるモデルの開発を目的として研究を行いました。まず、モデルの開発と検証のために、約150品種の日本イネ品種の全ゲノム配列を決定し、出穂期と籾数に関与する合計261遺伝子のハプロタイプを整理するとともに、コシヒカリと日本全国の水稲30品種を交配して得られた交雑集団を育成しました。それらの解析材料とゲノム情報を用いて、遺伝子ベースの作物生育モデルを開発しました。従来の発育予測モデルの構造を機械学習に取り入れた新たな出穂期予測モデルによって、出穂期遺伝子のハプロタイプから、未知の遺伝子型の出穂期を高精度に予測することが可能になりました。また、出穂期遺伝子のハプロタイプが限界日長や基本栄養生長性に及ぼす影響など、遺伝子の機能に関する定量的評価も可能でした。籾数については、メタボライトプロファイリングデータを利用して、圃場レベルでの籾数決定に強く関与している3プロセスを同定し、候補遺伝子群のハプロタイプ情報を整理してモデル開発に利用しました。遺伝子ベースの発育および籾数モデルを組み込んだ包括的生育収量予測モデルを構築するとともに、気候シナリオデータを使用して、現在と将来の気候条件で、出穂期関連遺伝子のハプロタイプ組合せが収量性に及ぼす影響のシミュレーションを行いました。また、出穂期遺伝子と籾数関連遺伝子に関するシミュレーションを行い、どの遺伝子の改変によって多収性がもたらされるか、また、それが気候変化によってどのような影響を受けるかについて例示することができました。今後、さらなる精度向上と外挿性の検証が必要ですが、開発したモデルを用いたシミュレーションによって、気候変化に対して頑健な品種の設計が可能であることが示唆されました。

もっと知りたい
 (後日終了報告書へのリンクを掲載予定です)

参考URL

https://www.jst.go.jp/kisoken/crest/project/1111090/1111090_12.html

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