既受講生の活躍

目利き人材育成プログラム
何を軸にして検討しているかを”見える化”すると、次に取り組むべきことが明確化できる 国立研究開発法人産業技術総合研究所 社会実装本部 企業連携部 企業連携推進室 連携主幹 久納 弘幸さん

偶然見つけた求人情報から、予備知識ゼロで産学官連携の世界へ飛び込む

目利き研修キャラクター
「えんぴつくん」と
「目利きんぐ」

――産学官連携に係わったきっかけは何ですか?

 大学の文学部を卒業後は、ドラム演奏のプロミュージシャンを目指して音楽活動や物流関係の会社に勤めていて、産学官連携に携わるような仕事をするとは全く思っていませんでした。そんな中、地元で偶然見つけたのが「佐賀大学TLO」の求人情報です。父親が大学の技術職で働いていたため、比較的身近に感じられてはいましたが、仕事の知識はゼロに等しかったので、採用通知は予想外でした。事務職採用で産学連携コーディネータではありませんでしたが、言われた仕事はどんな内容でも愚直にやると決めていました。やがて、コーディネータを支援する仕事に携わるようになり、自分が主体となって動けるように変わっていきました。大きな志を持って始めた訳ではありませんが、産学官連携の仕事は、業務の難しさを感じる中で少しずつ手応えややりがいを実感することができるようになり、今日まで続けてきています。

分析スキルを高めて自ら動き、実績を積むと相手からアクションがある

目利き研修キャラクター
「目利きんぐ」

――産学官連携で主体的に取り組んできたことは何ですか?

 佐賀大学の時は新人だったこともあり、新しい技術や研究成果等から社会実装へ繋がるような具体的なミッションを任されることはありませんでした。しかし、いくつかの機関での仕事を経て、現在所属する産総研は、日本の国内の産業に資するようなプロジェクトが多いです。社会課題の解決を図るような大型のプロジェクトの中には産総研だけでは実現できない場合もあります。だからこそ、様々な方との付き合いが大事になると考えています。
 私自身が心がけているのは、特許の分析や技術動向、マーケティング分析等について、何を軸にして分析・検討しているかを“見える化”して紹介できるように準備をすることです。 “見える化”することによって、相手に話を聞いてもらえ、交渉においても役立つことが分かりました。そうやって経験値を積むうちに、連携実績のあった企業やコーディネータの方々からアクションがあったので、さらにニーズをうまく引き出し、双方にとってプラスになるような工夫をしています。

培った産学官連携のスキルを活かして、いつか地元に新たな産業を根付かせたい

目利き研修キャラクター
「えんぴつくん」

――挑戦していきたいことを教えてください

 今まで培ったスキルを活かして、企業と公的な研究機関の間に入り、架け橋になるような活動をしたいと思っています。そのためには、知見とスキルをより高める必要がありますので、これまでの自身の事例をまとめると共に、「IPランドスケープ」の取り組みをうまく活かせないかと考えています。産総研には特許に関するツール等もあるため、使いこなして分析をしっかり行っていくことで、自身の提案に取り入れつつ、事例集にも盛り込んでいきたいと思います。
 また、産学官連携の仕事を始めたきっかけが地元の佐賀県でしたし、微力ながら地元へ貢献できないかと考えるようになりました。農業や水産業に代表されるような第1次産業の比率が高い佐賀県ですが、自身の手がけたプロジェクトで新たな産業が地元に根付くことを今後の目標に掲げています。

知見を得られるだけでなく、心強い仲間に出会えるのが目利き研修

目利き研修キャラクター
「目利きんぐ」

――目利き研修で培ったネットワーク、または目利き研修が業務にどう活きましたか?

 予備知識ゼロで産学官連携業界に入った私にとって、目利き研修で知見を得られたのは非常に大きかったです。初めて目利き研修を受講した時は、契約交渉について深く学べたことが印象的で、現実的な交渉内容に踏み込んでいることに驚きました。また、全国各地の様々な組織から参加した受講生と、事前課題や現在の取り組み等、意見交換ができる場があることが非常にありがたかったです。同様の目標を持っている仲間がいることが心強く、それぞれが取り組んでいる課題について議論するのも刺激的でした。
 現在は、グループ討議講師の立場で引き続き参加させてもらっていますが、研修内容は毎年同じものではないですし、受講生の視点や熱量も毎回異なりますので、私自身が受講しているように感じる時もあります。1つのテーマを一緒に検討することによって人間関係も築くことができますし、産学官連携に関する仕事をしているなら、まずは参加してみた方がよいと思います。

目利き力として必要なのは、勇気を持った挑戦と多角的に考える視点

目利き研修キャラクター
「えんぴつくん」

――ずばり、“目利き力“とは?

 うまくいかないことが多くあるのに、やって当たり前と思われることも多々あり、なかなか「ありがとう」と言ってもらえないのが産学官連携の部署なのかもしれないと感じています。しかし、目を背けずに果敢に飛び込んでいけば、自分の見る目も養われていくし、自ら積極的に分析することで、理解度も随分と違ってくると実感しました。産学官連携の世界に飛び込んだばかりの頃は、先輩の存在も大きかったです。目標とする人や的確なアドバイスをくれる先輩、仲間を見つけることで、自分にはない新たな視点や気づきを得られました。つい思い込んでしまうこともありますが、ブレーキをかけてくれる存在がいるのは非常にありがたいです。果敢に挑戦する勇気と的確な分析から多角的に考える視点の2つが目利き力として必要だと思います。