既受講生の活躍

目利き人材育成プログラム
自らの知識や経験を共有化して、組織の強化を目指す 大阪工業大学 研究支援・社会連携センター 係長 森口 文博さん

「大学発ベンチャーの社会的役割と情熱」に魅了され、産学官連携の道へ

――産学官連携に係わったきっかけは何ですか?

 前職は金融機関で主に融資の窓口をしていました。そこで融資を求める企業の1つに、有機半導体を開発する大学発ベンチャーがありました。金融機関としては、実績もない大学発ベンチャーに対して融資するかを判断するのは難しいことです。ただ、創業社長が研究者でもあり「技術と製品を世の中に送り出したい」という熱意に満ち溢れていました。融資が決定したことをお伝えした時には大変喜んでくださり、その会社が開発を進めていく姿は、私の仕事に対する充実感を与えてくれました。これをきっかけに産学官連携活動に自分も携わってみたいと思うようになり、9年間務めた金融機関から転職しました。
 転職後のある年、産学のマッチングイベントである「イノベーション・ジャパン」で、その会社のPRブースを見つけました。「本当にここまで辿り着いたのか」と感動した瞬間でした。大学発ベンチャーがイノベーションを起こそうと奮闘するプロセスに資金面から貢献できたのは、今でも貴重な体験だったと感じています。

自分が学んだ知識や経験をしっかり共有できる組織作り

――産学官連携で主体的に取り組んできたことは何ですか?

 大学に入ってみると、異動が多い職場だと感じました。引継ぎの作業が全くないわけではありませんが、学んだことは標準化できないことが多いので受け渡しが難しいことがあります。業務体制がまだまだ整っていない組織もあります。だからこそ、次の担当者や組織のためにできることを意識して業務に取り組むことにしました。例えば、新しい人が携わる時に迷わないように、大学のスタンスなどを含んだ各種契約書の契約交渉のための逐条解説を作りました。また、広く知財について理解する機会を作るために、学内の関係者を集めた知財セミナーも実施しました。
 私自身が今でも判断に迷うことが出てきます。その迷いや判断を共有し、組織として蓄えていくことで、もっと業務を進めていくことができるように感じています。

大学発ベンチャーに関する研究で産学官連携に貢献したい

――挑戦していきたいことを教えてください。

 大学の今後を考えると、産学官連携部署が大事になってくると思っています。少子化により、私立大学は特に財政面で厳しい経営環境を迎えることになります。そこで、共同研究等の産学官連携を促進し、外部資金を獲得することにより、極端に言えば大学の経営を救うこともできるかもしれません。その中でも今後は大学発ベンチャーが重要な役割を果たすと感じていますが、「大学発」と付くだけでいろいろな制約も生まれます。営利組織ではない大学がどこまで関与するかも考えていかなければなりません。だから、私自身が大学発ベンチャーについて学ぼうと大学の博士課程まで進みました。大学発ベンチャーに関する研究を続けているので、この知識と経験を産学官連携業務に役立てていきたいと考えています。

仕事の取り組み方や仲間を与えてくれたのが「目利き研修」でした

目利き研修キャラクター
「えんぴつくん」

――目利き研修で培ったネットワーク、または目利き研修が業務にどう活きましたか?

 目利き研修を受講した時、全国各地の様々な組織から受講者が集まっていたことに驚きました。組織の大きさも様々で、業務に対する姿勢や仕事の工夫点などを伺えたのは刺激になりました。知識習得の観点では、産学官連携業務に携わる者の入口として基礎を学ぶことができる研究推進マネジメントコースが、非常に頼もしいコースだったように感じています。
 さらに、この仕事をしていくうえでの相談ができたのも大きかったです。研修後には受講者や講師との意見交換会が行われました。当時、製品開発や経営面などを学ぶために大学院に進むか迷っていた私に対し、野口義文講師が別の視点での知見があれば研究推進にも貢献できることをアドバイスくださり、大学院に学びに行くことを決意できました。大学発ベンチャーについての論文をまとめる時も目利き研修同期生にお世話になりました。目利き研修で培った受講生や講師とのネットワークは今も続いています。

相手の気持ちを知ることが目利き力向上への第一歩

――ずばり、“目利き力“とは?

 足りないと思う知識や技術は、意識して理解を深め習得するように努めてきました。もちろん大切な事だと思いますが、研究や開発に携わっているのは人間です。だからこそ、想いを込められるものだと思います。相手の気持ちや意思を理解しあらゆる可能性を探索して提示することこそが、本当の目利き力ではないかと考えるようになりました。そのためには小さな気付きを大事にすることが欠かせません。「小さな気付きから行動に移す」を繰り返し、産学官連携業務に貢献できるように今後も突き進んでいこうと思います。