持続可能開発目標達成支援事業についてOutline

施策の目的

 持続可能開発目標達成支援事業(以下「本事業」といいます。)は、我が国の科学技術イノベーションを活用して途上国※1でのSDGs(持続可能な開発目標)達成に貢献するとともに、我が国発の研究成果等の海外展開を促進することを目的としています。途上国はイノベーションを起こす場としても注目されており、本事業を通じて協力相手国の社会課題の解決に取り組むことで、持続可能な開発を促進しつつ、我が国と相手国との良好な協力関係の構築に貢献することが期待されます。

施策の概要

(1)本事業の背景

 途上国におけるSDGs達成に向けて、規制や社会受容等の「壁」により実用化のステップに進めていない我が国の科学技術の研究成果について、現地での実証試験等を実施することにより成果の社会実装※2を促進することが求められています。実証試験等の実施にあたり、相手国政府やステークホルダーとの調整等を担う人材が参画することで、実装に向けた障壁の緩和を目指します。

(2)本事業の政策的位置づけ

 第5期科学技術基本計画(平成28年1月閣議決定)では、我が国の科学技術のポテンシャルを気候変動、生物多様性の減少、食料・水資源問題、感染症などの地球規模課題への対応や、途上国の生活の質の向上等に積極的に生かし、世界の持続的発展に主体的に貢献することが謳われています。
 このため具体的には、我が国は、大学や公的研究機関、産業界、さらには諸外国や国際機関と連携・協力し、地球規模課題解決のための研究開発を推進するとともに、得られた成果の国内外への普及と展開を促進し、国際社会の合意形成を先導する必要があります。国連では平成27年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」において、人間、地球および繁栄のためのより包括的で新たな世界共通の行動目標として「持続可能な開発目標(SDGs)」※3 を中核とする成果文書「Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development」が採択されました。
 また、統合イノベーション戦略2019(令和元年6月閣議決定)では、「SDGs達成のための科学技術イノベーション(STI for SDGs)の推進」が具体的施策として掲げられています。そして、SDGsの達成に資する我が国のSTIシーズ等の知的資産を国際的に展開し、世界のSDGsの達成に貢献することが求められている、とされています。
 これを踏まえ、本事業では、途上国等におけるSTI for SDGsを促進し、SDGsに積極的に対応して国際社会に貢献していく方針です。
 このほか、途上国との科学技術協力においては、これまでの援助型の協力から脱却し、社会的に包摂的で持続的なイノベーション(インクルーシブ・イノベーション※4)創出の枠組みを戦略的に確立し、各国との間でより対等なパートナーシップを形成することが重要です。加えて、国際的な人材のネットワークを強化していくことが重要であり、途上国との科学技術協力において、相手国政府、大学、公的研究機関、資金配分機関、企業等との連携を進め、相手国における若手研究者や産業人材の育成を図ることでインクルーシブ・イノベーションを推進する仕組みの構築を行うことが必要です。
 さらに、同基本計画には、科学技術イノベーションの基盤強化には、新たな知識や価値を生み出す高度人材やイノベーション創出を加速する多様な人材を育成・確保するとともに、一人ひとりが能力と意欲に応じて適材適所で最大限活躍できる環境を整備することが謳われています。国際共同研究をつうじて、グローバル化に対応した我が国の人材育成にもつながることが期待されています。
 また、同基本計画の推進に当たって重要な事項として、産学官の連携が挙げられます。同基本計画には、科学技術イノベーションを効果的に進めて行くためには、大学、公的研究機関、企業といった科学技術イノベーション活動の多様な実行主体の機能強化に向けた取組の充実と、産学官のパートナーシップの拡大が鍵となることが記されています。

(3)本事業の仕組み

 本事業では、図1にあるように国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が文 部科学省からの補助金を受け、途上国におけるSDGs達成に向けて、規制や社会受容等の「壁」により、実用化のステップに進めていない我が国の科学技術の研究成果について、現地での実証試験等を実施することにより、社会実装の促進を目指す本邦の研究機関等を支援するものです。実証試験等の実施にあたり、相手国政府やステークホルダーとの調整等を担う人材(以下「国際コーディネーター※5」という。)が参画する体制を組むことで、実装に向けた障壁緩和を目指し、我が国発の研究成果等の海外展開を促進します。

図1
図1 持続可能開発目標達成支援事業の実施体制

(4)本プログラムの主な流れ

(i)研究分野設定、提案募集

 途上国におけるSDGsの達成に向けて、プログラム全体の運営のとりまとめを行う運営統括(PD:プログラムディレクター)を配置し、研究分野における研究推進のとりまとめを行う研究主幹(PO:プログラムオフィサー)をJSTが定めます。

a. 運営統括(PD:プログラムディレクター)
本プログラムの運営全体の取りまとめ責任者であり、本プログラム全体の推進方針決定、研究分野間の調整、採択課題の決定、各研究課題マネジメントにおける重要事項の審議を行う推進委員会の委員長を務めます。
なお、推進委員会は運営統括・研究主幹から構成されます。
b. 研究主幹(PO:プログラムオフィサー)
研究分野の研究推進の取りまとめ責任者であり、採択課題候補を決定する評価委員会(推進委員会の分科会)を構成し、本委員会では主査又は一委員となります。採択課題決定後は、各研究課題の研究計画(研究費、研究チーム編成を含む)の調整、研究代表者との意見交換、研究への助言、課題評価、その他必要な手段を通じて担当する研究分野の研究マネジメントを行います。

 JSTでは国内の大学、研究機関等に所属する研究者を対象に研究提案の公募を実施し、研究主幹及び外部の有識者で構成される評価委員会にて研究課題を選定します。
 研究代表者はJSTへの研究課題の応募に当たって、相手国側研究者や関係省庁等のステークホルダーと十分に調整してください。

(ii)JSTにおける研究課題の採択

 JSTによる課題の選考や実施されるプロセスは、図2のとおりです。

図2
図2 本事業における選考から終了までの流れ

(iii)事業の実施

 研究課題を実施するに当たっては、研究代表者および研究参加者には、JSTとの契約(委託研究契約)に基づき活動いただくこととなります。研究代表者および研究代表機関には、研究課題・プロジェクト運営管理の全般にかかる総括としての業務遂行に責任を負っていただきます。

〇 本事業に関連する主な科学技術政策および参照先は、以下のとおりです。


※1 途上国
本事業における対象国は、別添1をご確認ください。
※2 社会実装
具体的な研究成果の社会還元。研究の結果得られた新たな知見や技術が、将来製品化され市場に普及する、あるいは行政サービスに反映されるなどにより、社会や経済に便益をもたらすこと。
※3 SDGs
Sustainable Development Goals
※4 インクルーシブ・イノベーション
本事業においては、特に途上国のポテンシャルに着目し、イノベーションのプロセスに途上国の人々を巻き込むこと。
※5 国際コーディネーター
在外研究員(日本側研究者)の派遣および外国人研究員(相手国側研究者)の受け入れに関する相手国政府との事務的なやりとりや諸手続き、機材の現地調達にかかる連絡調整等を行う人員です。研究活動そのものには従事しませんが、研究代表機関の研究者や共同研究者とともに日本側研究チームの一員として、課題の円滑かつ適正な実施のために、研究代表者をはじめほかのメンバーと充分な情報共有を行うことが求められます。なお、研究代表者が国際コーディネーターを兼務することも可能です。