遺伝資源利用の際の留意点

大学、研究機関、研究者・学生等が遵守すべき点

〇提供国における共同研究機関の協力の下、提供国における最新の法規制を確認して、それを遵守する。

〇遺伝資源の提供者と利用者の間でCRA等の中で 相互に合意する条件( MAT: Mutually Agreed Terms)を締結する。

〇提供国の法規制に従い、政府機関から 事前の情報に基づく同意(PIC: Prior Informed Consent)(許可証)等 を取得する。(例:研究許可、アクセス許可、持ち出し許可等)

◇提供国の法規制を遵守するにあたり下記の点にも注意が必要

  • 提供国内における遺伝資源の取得と利用
    ←海外(日本)への持ち出しを伴わなくてもPIC・MATが必要となる場合がある
  • 薬草や農作物等に関連する伝統的知識の利用
    ←先住民及び地域社会の承認及びプロジェクトへの参加、またPIC及びMATが必要となる場合がある
  • 留学生・研修生による日本への海外遺伝資源の持ち込み
    ←提供国の国民も提供国の法規制を遵守して遺伝資源を取り扱う必要がある

ABS対応で誤解されやすい点

(誤解)学術研究における遺伝資源の利用はABSの対象とならない。

(正解)大学、研究機関における学術的利用(非商用研究)も対象となる。特に、個々のSATREPSのプロジェクトで生じる可能性がある “金銭的利益”と“非金銭的利益”を精査・分別・予想し、提供者と利用者の間で相互に合意することが重要である。

(誤解)提供国の遺伝資源を海外に持ち出さなければPICやMATは必要ない。

(正解)提供国内でのみ遺伝資源を取得・利用し、海外に持ち出すことがなくても、提供国の法規制の定めによりPICやMATが必要となる場合がある。

(誤解)核酸の配列情報、人工合成核酸、遺伝の機能的単位を有さない生化学的化合物(派生物)は遺伝資源には該当しない。
また、名古屋議定書が日本国において効力を生ずる日(2017年8月20日)以前に提供国から取得された遺伝資源はABSの対象外である。

(正解)提供国で遺伝資源を取得・利用する際は、提供国が定める適用範囲に従い、法規制を遵守する必要がある。 提供国における適用範囲が日本のABS指針における適用範囲より広いことがあるので十分な注意と対策が必要である。

(誤解)ABSにおける利益配分では金銭的利益が主な対象である。

(正解)“金銭的利益”と同等に“非金銭的利益”も重要な利益配分の対象となる。SATREPSのプロジェクトでは、多数の非金銭的利益配分(科学研究プログラムにおける相手国側との協働・研究成果の共有、相手国への技術移転、相手国の人材育成等)が含まれることが予想され、MATにおける非金銭的利益配分の取扱が重要であると考えられる。