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- 高柳粒子表面プロジェクト
総括責任者 高柳 邦夫
(東京工業大学 大学院総合理工学研究科 教授)
研究期間:1994年10月~1999年9月
物理学者ファイマン教授は、日進月歩するコンピュータで125個の原子からなる記憶ドットを夢見ました。物質が1mmの百万分の一の大きさであるナノメートルスケールになるときに、表面効果によってあぶりだされる新現象や新構造について探索を行いました。
超高真空電子顕微鏡に走査型トンネル顕微鏡を組込んだ新装置を開発し、ナノメートルの太さの金属ナノワイヤを作成し電子伝導が量子化されていることを示しました。また、金ナノワイヤの原子配列の電子顕微鏡観察から、金属ナノワイヤがカーボンナノチューブやDNAと同じように螺旋構造をもつことを示しました。さらに、金原子が一列に並んだ中空に浮かぶ鎖を作ってみせ、金属といえどもナノスケールでは絶縁体に変わりうることを理論的に示しました。シリコンでもナノ粒子の生成、あるいはナノワイヤの生成を試みるなど、固体結晶とは全く異なる構造や性質を有する”粒子表面物質”実現へ向けての未知の領域を切り開くことができました。
粒子表面の性質を探るため、”その場”観察の出来る電子顕微鏡として、 超高真空電子顕微鏡に走査型トンネル顕微鏡を組込みSTMとTEMの同時観察を可能にすると共に、時間分解能1ミリ秒のTV観察ができる新装置を開発した。
超高真空電子顕微鏡中でトンネル接触により金原子1個列の原子鎖を生成し、コンダクタンスが物質によらない1/12.9kΩの値を示すことを観測した。また固体よりも長い原子間距離で安定に存在することから金が絶縁体になる可能性があることを理論的に示した。
超高真空電子顕微鏡中で金の数原子列以下のナノワイヤーの像を観察した。原子列が3本、4本のナノワイヤーは表面効果により固体の金の結晶構造とは異なりカーボンナノチューブと同様のらせん構造を持つことを示した。
極低温下で動作する走査型トンネル顕微鏡を開発し、格子欠陥の少ないSi表面を作成した。この表面上にアルミの1次元鎖を配列させて量子ボックスを作成し、π*電子を閉じ込めることに成功した。
Siクラスターが安定に存在する原子数、魔法数について、理論的に追及した。レーザーアベレーションのプロセスを解析し光学測定からプルーム中で起きているナノ秒の新しい衝突過程を見出した。
レーザーアブレーションとガス中蒸発法により原子数が数百から数千のシリコンナノ粒子を大量に生成する条件を探索し、フランクアタック法で粒子サイズの選別がサイズ偏差20%以下で出来ることを示した。
▲粒子表面の概要
▲金原子4個で構成された原子鎖