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- 水谷植物情報物質プロジェクト
総括責任者 水谷 純也
(北海道大学 農学部 教授)
研究期間:1988年10月~1993年9月
植物は自らの意志で動けないので化学物質により他の動植物から自分を守ったり、他を攻撃していると考えられます。プロジェクトでは、この生物間相互作用において情報をやりとりしている化学物質(植物情報物質)の探索とその作用・生成機構、生態系における振舞いなどについて探求しました。
研究では、植物の防御機構に関与している誘導性抗菌物質や摂食阻害物質などを多数見いだし、その動態と機能について検討を行いました。また、葉面に着生している細菌が植物二次代謝産物のケイ皮酸を抗菌性スチレンに変換していることを確認し、新しいエコシステムモデルを提唱しました。さらに遺伝子レベルにおける生態化学的役割についても検討を行い新しい知見を得ました。この他、昆虫へのマイクロダイアリス法の適用や植物情報物質の導入に有用な小型微粒子銃の開発などを行いました。これらの研究から、自然の理にかかった新たな農薬・医薬等の開発や 産業面への応用が期待されます。
南米原産の植物を用いて、植物の葉が傷害を受けたときに生成するヒドロキシケイ皮酸が着生細菌により植物病原菌などに有害な抗菌性スチレンに変換される「着生バクテリアが仲介する植物と周辺微生物間のエコシテムモデル」を提唱した。
クレス発芽種子から分泌される新しいアレロバシー物質を発見した。この物質は二糖でヒモゲイトウの下はい軸を著しく伸長させ、レピジモイドと命名された。また、このレピジモイドは植物の生長促進効果があることが明らかにされた。
圧縮ガスを駆動力に用いた、簡易で小型の微粒子銃を開発し、DNA、RNAおよび低分子の植物生長物質などの広範囲にわたるサイズの生体分子を植物へ導入することに成功した。
ナス科の植物をモデルとして、カプシジオールの生合成反応を研究し、そのキーエンザイムとして誘導性 P-450 の分離に成功し、その関与を明らかにした。
昆虫の摂食行動の解明をねらいとして、マイクロダイアリシス法を用いてハスモンヨトウの体液の連続サンプリングを行い、生理活性アミン類の動態を明らかにした。
ダイズ幼苗を試料に用いた化学発光分析法により、そのファイトアレキシンの誘導には活性酸素の発生の後の膜脂質の過酸化反応が関与していることが示された。
▲着生バクテリアが介在する植物の防御システムの一例
▲植物情報物質を含む野生植物の一例(ハマナス)