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- 小池フォトニクスポリマープロジェクト
総括責任者 小池 康博
(慶應義塾大学 理工学部 教授)
研究期間:2000年10月~2005年9月
「フォトニクスポリマー」とは、ポリマー物質学と光学を融合することにより生まれた新しい光機能性ポリマーのことを言う。光の偏波またはフォトンが、高分子の鎖やその集合体、高次構造、更に巨大な不均一構造とどのような関わりを有するかをその起源まで遡って検討することにより、既存の概念では予測し得なかった新機能を創出し、それらの基礎研究を基に、光通信等のフォトニクス分野において、新しいシステムを構築しうるフォトニクスポリマーを提案し、実証している。家庭内にギガビット超の高速通信をもたらすGI型プラスチック光ファイバ、及び高精細ディスプレイ材料に大きな変革をもたらすゼロ複屈折性ポリマー並びに光散乱ポリマー導光体等が実用段階にまで至っており、更に高精細・大画面ディスプレイに直接超高速GI型プラスチック光ファイバが繋がれた”Fiber To The Display”システムの実現へ向けた研究を進めている。
Fiber to the Displayの実現
高精細・大画面ディスプレイまで直接ギガビットを超える大容量情報伝送が可能な高速GI型プラスチック光ファイバ(GI型POF)及びギガビットネットワークシステムの開発を行っている。高速通信用GI型POFは、POF材料として適した新規材料の分子デザイン及びその合成を行う一方、高速化へ向けた最適屈折率分布設計及び伝送特性解析を重ね、1Gbpsを上回る高速光ネットワークを想定したシステム仕様に基づいた広帯域化に成功、10Gbps超の高速伝送を実現している。更に、スター型トポロジーを用いた病院内ネットワーク及びマンション内高速ネットワークを構築し、システム提案も積極的に行っている。
ポリマー中に無機ナノサイズ針状結晶を添加することによりポリマーの複屈折を相殺する方法を提案し、実証した。これは「ナノサイズの材料による複屈折制御」という、学術的にも新たな領域を切り拓くものであり、複屈折性の正負いずれの複屈折性を有するポリマーに対しても、大きな複屈折低減を可能にする。ポリマーの複屈折は、液晶ディスプレイなど偏光技術を利用する光学デバイスにおいて、その品質、製造コストの両面で課題となっており、本技術により液晶ディスプレイの高品質化、低コスト化の実現が期待される。これまでに高輝度な液晶ディスプレイバックライトとして高く評価されている光散乱ポリマー導光体の大型化への対応、及び新しい輝度向上フイルム等の偏波制御デバイスの開発へ向けた研究と併せ、既存の高精細・大画面ディスプレイのシステム自体に大きな変革をもたらす新たなシステム構築へ向けて研究を進めている。