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- 平尾誘起構造プロジェクト
総括責任者 平尾 一之
(京都大学 大学院工学研究科 教授)
研究期間:1994年10月~1999年9月
ガラスなどの非晶質材料は内部構造の自由度が大きいため、電場・磁場・光などの外部場によって新たな構造が誘起され、これまでにない様々な機能の発現が可能になるものと期待されます。本プロジェクトは、このような誘起構造の形成技術の探索と発現機能の追求、および誘起構造の理論設計を目指して研究を進めました。
その結果、フェムト秒・超短パルスレーザ光の集光照射により、ガラス内部の任意の位置に屈折率変化・イオン価数変化・結晶化・分極配向などの永続的な構造変化が誘起されることを見出しました。さらに、これらの構造変化を利用して、光導波・光メモリ・波長変換など様々な光機能を持つ三次元素子が得られることを明らかにすると共に、超高速の光誘起光スイッチを実現するなど、将来の超高速・大容量光情報処理技術をガラス材料で実現する道を拓きました。
高効率の光誘起屈折率変化を示す酸化ビスマス含有ガラスを開発し、これを用いてパルス幅150fs、繰返し周波数1.6THzの超短パルス・高繰返し光スイッチ動作を確認した。将来の超高速光通信システムへの展開が期待される。
フェムト秒パルスレーザー光をガラス内部に集光照射することにより、屈折率が永続的に増加することを発見し、任意の位置に低損失の光導波路を描画形成出来ることを実証した。三次元光回路素子への道を拓く新技術として期待される。
フェムト秒レーザー照射により、ガラス内部に微結晶やファイバー状の単結晶を析出・成長させることに成功し、波長変換などの機能を実証した。全く新しい結晶成長技術として今後の幅広い展開が期待される。
フェムト秒レーザー照射により、ガラス中の希土類イオンの価数を局所的に変化させることに成功した。さらに、このイオンのホールバーニング効果を利用して、4次元の超高密度光メモリーが実現可能であることを示した。
ガラス薄膜中に分散した色素分子を光誘起電場により周期的に配向させ、高安定な二次非線形光学効果を発現させた。これを用いて、新しい原理による画像記録・再生が可能であることを実証した。
ガラス構造計算に適した高精度シミュレーション手法を開発、石英ガラス等の電場印加による電子構造変化を定量的に評価し、光誘起構造変化に対する理論的考察を行った。この他、種々の誘起構造解析手法を新たに開発した。
▲ガラス中の誘起構造による第2高調波の発生
▲分子動力学シミュレーションにより作製できた非晶質構造のスナップショット