後藤磁束量子情報プロジェクト

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総括責任者 後藤 英一
(神奈川大学 理学部 教授)
研究期間:1986年10月~1991年9月

 

磁束量子は、情報処理の観点からみると、高速動作が可能、熱の発生が極めて少ない、空間を介した回路結合が可能という特性を秘めています。本プロジェクトでは、この磁束量子が情報信号の媒介となりうるか、さらには回路化、高集積化することにより超高速コンピューターとして使えるかについて探求しました。
研究により、パラメトロンの原理をもとに超伝導回路内の磁束量子に変化を起こさせる素子(磁束量子パラメトロン)を作成し、これを用いた回路で、16GHzの超高速スイッチング動作等を実現しました。さらに、磁束量子パラメトロンに適したコンピューターアーキテクチャの構築、レーザ光掃引による極微弱磁場環境の実現など、超高速情報処理体系の実現の手掛かりを得ました。

成果

磁束量子パラメトロンの超高速動作の実証

磁束量子パラメトロン素子を用いたシフトレジスタ回路で、15psの超高速スイッチング動作を実証した。

磁束量子パラメトロンの高機能論理回路の試作

コンピュータ用基本回路として、素子2個で加算器を形成可能な高機能論理回路(D-ゲート:トランジスタでは20~30個相当)を試作し、その動作を確認した。

チップ間磁気結合を確認

2枚のチップを積層させ、このチップ間の非接触信号伝達を磁気結合により実証した。

トラップ磁束の移動を実現

超伝導薄膜中に捕捉された磁束をガス浮上式磁束計で検出し、さらにレーザーで局所加熱しながら走査することにより、磁束を移動させることに成功した。

無発熱計算原理の提唱

磁束量子パラメトロンを十分に低速で動作させると、消費エネルギーは無限に小さくなることを見出した。即ち、情報の生成消失にエネルギーが消費されない原理を明らかにした。

循環パイプラインアーキテクチャの有効性の実証

複数のプログラムを平行して走らせながらパイプライン式に情報を処理する、循環パイプラインアーキテクチャが、従来型の約1.8倍の性能を持つことを実証した。

graph1

▲磁束量子パラメトロンの位置づけ

fig2

▲シフトレジスタ回路の16GHz動作特性

fig3

▲マイクロヒートフラッシュ法による磁束の移動

研究成果

プログラム

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