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- 伏谷着生機構プロジェクト
総括責任者 伏谷 伸宏
(東京大学 農学部 教授)
研究期間:1991年10月~1996年9月
海の生物の多くは、その一生において、卵から孵化した幼生が浮遊生活後、岩などに付着、続いて変態して幼体となる着生という過程をもちます。この海に特有な現象のメカニズムを化学情報伝達の面から解明を試みました。
まず、ムラサキイガイなど4種類の幼生の飼育に成功するとともに、幼生の付着行動を詳細な画像解析や新たに開発した生体内カルシウム濃度イメージング法などで解析し、多くの新知見を得ることができました。一方、幼生細胞の分画と電気生理との組み合わせにより、新しい細胞機能解析の途を開きました。フジツボについては、化学信号の認識、神経系と二次メッセンジャーを介する情報伝達による付着行動の開始、セメント物質の分泌および変態という一連の情報の流れと機能発現をほぼ明らかにできました。また、さまざまな着生誘起・阻害物質を単離・構造決定しました。
ムラサキイガイ(軟体動物)、ベニクダウミヒドラ(腔腸動物)、アカフジツボ(節足動物)などの実験室内での幼生飼育法を確立した。
成体由来の着生誘起物質の単離に成功した。セメント分泌機構を含む付着行動および変態にかかわる幼生体内情報伝達システムを明確にし、多角的に着生機構の解明が進んだ。
クダウミヒドラ幼生の着生行動の詳細な解析により、刺胞発射と付着との関係および微生物被膜による付着行動誘起などを明らかにするとともに、コケムシ幼生の着生行動を明確にした。
海綿、ウミウシなどの海洋生物から、フジツボのキプリス幼生の着生を強力に阻害し、かつ、毒性がきわめて弱い新規の低分子化合物50種以上を単離・構造決定した。
蛍光標識による生体内金属イオン濃度のイメージング、顕微鏡下での高速ビデオ解析、電気生理学的手法、およびAFMによる微生物被膜解析法などから新しい幼生行動解析法を開発した。
マボヤ幼生の変態誘起物質としてマボヤ、海綿などから数十種の化合物を単離・構造決定した。また、変態時の各種金属イオン、プロテアーゼ、およびタンパク質合成系の関与を明確にした。
▲フジツボの生活史
▲海産ヒドロ虫類ベニクダウミヒドラ
A.ポリプ(♂) B.ポリプ(♀) C.遊出したアクチヌラ幼生