相田ナノ空間プロジェクト

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総括責任者 相田 卓三
(東京大学 大学院工学系研究科 教授)
研究期間:2000年10月~2005年9月

 

通常、分子は多様な相互作用の環境に置かれていますが、雑多な相互作用の呪縛から解放すると、全く新しい性質が見えてくるかもしれません。本プロジェクトでは「分子間相互作用を高度に制御することにより、分子のもつ特性を引き出し、新たな機能を導く」という基本戦略のもとに、化学と他分野の境界領域を開拓することをめざしました。有機・無機を問わず、一義的に定まった空間に分子を孤立させるための道具としての特異なナノ空間の構築と機能開拓をねらって、ナノスケールの空間の新しい使い方を探索し、デンドリマーやメソポーラスシリカを対象とした研究を精力的に展開する一方で、超分子グラファイトナノチューブなど独自のモチーフを構築し、カーボンナノチューブのソフトマテリアル化に成功し、また超分子グラファイトナノチューブによる分子ソレノイドの可能性を提案するなどナノマテリアルデザインへの新しい道標を築くことができました。

成果

巨大分子の三次元空間形態が内部での光化学プロセスに及ぼす影響

車輪状ポルフィリンデンドリマーの周囲に配置した29個の亜鉛ポルフィリンユニットが可視光を捕捉し中央部に組み込んだフリーベースポルフィリンユニットにおよそ70%の励起エネルギーを運ぶ事をみいだした。更に共役ポリマーを内包したロッド状の水溶性デンドリマーが破格に高効率な光増感剤として働き、太陽光をエネルギー源として13%の量子収率で水を還元して水素を発生させることを見いだした。

紫外光下でのみ情報を読取る書換え可能なSecurity Paperの開拓

11族遷移金属間相互作用からなるピラゾールデンドリマーのカラム状集積体が、ゾル/ゲル転移にシンクロナイズして発光色を変化させることを見いだし、書換え可能なSecurity Paperを開拓した。

界面活性剤ミセルを鋳型とした新規なナノハイブリッドの開拓

ポア内にπ電子系ディスクが規則正しくスタックしたナノハイブリッドや内壁をペプチドで完全に被覆したメソポーラスシリカを開拓した。

カーボンナノチューブ(CNT)を用いたソフトマテリアルの開拓

イミダゾリウム系イオン液体にCNTを加え、乳鉢を用いてすりつぶすと系がゲル化することを見出し、CNTのソフトマテリアル化に成功した。このゲルを用いて、CNTで高度に補強された導電性高分子複合材料や空気中で長時間作動するアクチュエータを開拓した。

自己組織化によるグラファイトナノチューブの開拓

グラファイトの最小単位であるヘキサベンゾコロネン(HBC)を両親媒性化させると自己組織化し直径20nmのチューブを与えることを見いだした。壁はグラファイト状の構造からなり、酸化してホールを発生させると、導電性が発現する。このナノチューブはラセン型のテープがはりあわされることにより出来ており両親媒性HBCの一角に不斉炭素を導入すると一方巻きのラセン要素からできたナノチューブが得られた。このナノチューブは電気を通すので、電磁誘導現象をナノレベルで実現できる可能性がある。

 

研究成果

評価・追跡調査

プログラム

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