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先見性のある研究開発戦略の提言・実現

研究開発の新たな潮流の創造促進2018年度更新

研究開発戦略センター(CRDS:Center for Research and Development Strategy)とは

研究開発戦略センター(CRDS)は、国の科学技術イノベーション政策に関する調査、分析、提案を中立的な立場に立って行う組織として、平成15年7月に、独立行政法人科学技術振興機構(当時の名称)に設置されました。

「戦略プロポーザル」や「研究開発の俯瞰報告書」等の成果は、JSTのみならず、文部科学省、内閣府等の政府関係機関に情報提供され、関係府省での各プログラムや科学技術基本計画等の科学技術イノベーション関係施策の策定に役立てられています。

CRDSの活動の基本

CRDSのあるべき姿
CRDSは我が国および人類社会の持続的発展のため、 科学技術振興とイノベーション創出の先導役となるシンクタンクを目指します。
CRDSの任務
  • 1. CRDSは国内外の社会や科学技術イノベーションの動向及びそれらに関する政策動向を把握し、俯瞰し、分析します。
  • 2. これに基づき、CRDSは課題を抽出し、科学技術イノベーション政策や研究開発戦略を提言し、その実現に向けた取組を行います。
任務の実行にあたって
CRDSは我が国産学官の関係者、社会のステークホルダー、更には外国関係機関と積極的に連携、情報・意見交換を行います。
そして、得られた成果については、外部に積極的に発信します。
集合写真

「元素戦略」

「元素戦略」は、科学者の議論から生まれた「元素の機能を最大限に発揮することで、夢の新材料を実現する」というビジョンを具体化するために、化学、物理、金属、セラミクス、鉄鋼などの学会、大学、研究所、企業などと連携して、CRDSが戦略プロポーザルとしてとりまとめたものです(2007年10月発行)。希少元素の減量・代替・循環・規制、および元素の新機能探索を国として推進すべきという提案でした。

関係府省に対しても「元素戦略」の必要性を説き、産学官の様々な関係者の協力を得て、2007年に文部科学省の「元素戦略プロジェクト」が、経済産業省の「希少金属代替材料開発プロジェクト」との密な連携で研究開発をスタートしました。その後も関連施策が次々とできました。

「元素戦略」は、資源の限界を克服し、新たな物質材料の基盤技術を拓き、さらには我が国の産業界はもとより世界の産業にも貢献することを目的とし、現在なお展開を続けています。

「元素戦略」とは
  • 1. 資源限界を超えて持続可能な社会を目指す戦略
    • 産業に資する材料セキュリティ、鉱物資源セキュリティ
    • 省エネ・環境に資する材料技術
    • 「元素」に焦点 → サイエンスベースで目的を達成
  • 2. 新たな物質材料基盤技術を拓く戦略
    • 「新材料設計・探索」手法の確立
    • ナノ・材料分野における研究開発のための日本固有の戦略
    • 強力なリーダーと、融合・連携・横断を推進する新体制
  • 3. 世界から尊敬され、かつ国益をもたらす戦略
    • サイエンスをベースとした人類や世界への貢献
  • 4. 5つのフォーカス
    • 減量、代替、循環、規制、新機能
「元素戦略」関連の研究開発政策
図:「元素戦略」関連の研究開発政策
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CRDSが発行した関連報告書

「マテリアルズ・インフォマティクス」

先端材料の開発は我が国のエネルギー、医療、素材、化学など多くの産業を活気づける源です。これまでは経験と勘に裏打ちされた実験的手法が大きく貢献してきましたが、新物質の発見から材料としての実用化まで非常に長い時間と費用を要する状態が続いており、本過程を加速・短縮するための方策が求められていました。

米国では、2012 年に国家的な取組みとして、“Materials Genome Initiative”がスタートしましたが、CRDSでは、2006年からこの方向性に着目し、議論していました。2013年に再度フォーカスし、物質・材料の「設計」に必要な新たな方法論として「マテリアルズ・インフォマティクス」についての提案を行いました(2013年8月戦略プロポーザル発行)。物質・材料の物理的・化学的性質に関する多様で膨大なデータに対して、従来の理論科学、実験科学、計算科学に加えて、第4の科学であるデータ科学を駆使することで、革新的な機能性材料や構造材料等を創製するための科学技術的手法とその重要性を提案したものです。

その後、関係府省や関係機関において、データ駆動型(情報統合型)の材料研究プログラムの創設等(下記参照)の形でCRDSの提案内容が活用されており、これまでの物質・材料科学をデータ駆動型へと変革させる新世代の材料研究開発の潮流を生み出しつつあります。

戦略プロポーザル「マテリアルズ・インフォマティクス」の活用事例
  • 第五期科学技術基本計画「統合型材料開発システム」(平成28年1月)
  • JSTイノベーションハブ構築支援事業「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ(MI2I)」(平成27年7月)
  • 物質・材料研究機構 「情報統合型物質・材料研究拠点」設立
  • JST戦略的創造研究推進事業(さきがけ)「理論・実験・計算科学とデータ科学が連携・融合した先進的マテリアルズ・インフォマティクスのための基盤技術の構築」(平成27年10月)

これらの施策は、内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「革新的構造材料」のうちのマテリアルズインテグレーション、経済産業省・エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」と連携すべき、とされています。

4つの手法をフル活用
図:4つの手法をフル活用
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出典:情報システム研究機構 北川源四郎機構長
CRDSが発行した関連報告書

「マイクロバイオーム」

CRDSでは、ヒトの上皮(口耳鼻腔、消化管、皮膚、呼吸器、生殖器など)に存在する細菌、真菌、ウイルスなどの集団であるマイクロバイオーム(微生物叢)に着目し、関連する様々な生命現象・疾患の理解の深化と革新的な健康・医療技術の創出を目指した研究開発戦略を提言しました(平成28年3月戦略プロポーザル発行)。

マイクロバイオームは、生体局所の恒常性維持のみならず、全身の恒常性維持とも大きく関係することが近年明らかになっており、生命現象の本質的な理解における重要な研究対象です。また、ある種の治療困難な腸疾患では、マイクロバイオームの改善(便移植)が劇的な治療効果を示しており、今後も様々な疾患に対するブレイクスルーとなる可能性が期待されます。また、マイクロバイオームの変化は疾患の発症、重症化に先立って起こると考えられ、健康状態の評価や改善などにつながる技術開発も期待されます。これらを通じ、健康寿命の延伸、医療費の最適化、産業競争力の強化などへの貢献が可能と考えています。。

その後、CRDSの提案内容が関係機関における新たな研究開発プロジェクト等の発足に活用されました(下記参照)。さらに、産業界やメディア、学会など多方面にその影響が波及しており、CRDSの提言に端を発したマイクロバイオームに関する取り組みが次々と広がっています。

戦略プロポーザル「マイクロバイオーム」の活用事例
  • 文部科学省 平成28年度研究開発目標「宿主と微生物叢(そう)間クロストーク・共生の解明と健康・医療への応用」(平成28年3月)
  • AMED-CREST、PRIME「微生物叢と宿主の相互作用・共生の理解と、それに基づく疾患発症のメカニズム解明」(平成28年4月〜)
  • AMED-LEAP「腸内細菌株カクテルを用いた新規医薬品の創出」(平成28年9月〜)
  • 上記の他、大手製薬企業等19社が参画するコンソーシアムの発足、本提言に関して専門誌からの寄稿依頼やメディアからの取材依頼が相次ぐなど、多方面に影響が波及している。

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