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環境調和型ハイブリッド光エネルギー変換材料
東京工業大学炭素循環エネルギー研究センター 助教授
伊原 学
 太陽電池などの光エネルギー変換材料の本格的な普及を考慮すると、充分な資源量があり、毒性がなく、たとえ流出しても環境への影響が少ない環境調和型の材料で構成されている必要があります。また、光エネルギー変換材料に求められる物性としては、(1) 適切な領域に光吸収領域を持つ、(2) 光吸収係数が十分に高い、(3) 電子やホールの移動度が高い、(4) 欠陥が少なく電子とホールの再結合速度が低い、ことが挙げられます。本研究では、環境調和型の材料を用いて上記4つの条件を満たす材料を開発するために、新しい作製手法と新しい材料設計との観点から下記に示す2つのアプローチを行います。
1.(1)、(2)に特徴的な材料を薄膜にし、結晶欠陥を劇的に減少させることで(3)の欠点を補う。薄膜材料の欠陥の低減には、これまでに研究代表者らが太陽電池用Si薄膜の欠陥低減手法として新しく開発したZMC法を用いる。ZMC(Zone Melting Crystallization)法は、膜の結晶配向をそろえ欠陥密度を劇的に減少させることが可能である。
2.光吸収過程に必要とされる物性である(1)、(2)と電子、ホールの移動過程に必要とされる物性である(3)とを異種の材料で分担することができる半導体ハイブリッド材料を検討する。その際に量子サイズ効果および局所電場増強効果を利用して構成材料の物性制御を行う。さらに(4)を達成するためZMC法を使って欠陥密度の大幅な低減を図る。また、異種の半導体などの無機材料の組み合わせによるハイブリッド材料に加えて、色素などの有機材料と無機材料とのハイブリッド材料も検討する。つまり量子サイズ効果と局所電場増強効果という物理効果を使って制御された2種類以上の材料を複合化した低欠陥のハイブリッド光エネルギー変換材料を設計し作製しようとする新しい試みである。
 これら二つのアプローチが成功すれば、光エネルギー変換材料開発の新たな核となり低コストで高効率な太陽電池の製造へつなげることができるものと期待されます。

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研究成果
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高効率バイオリサイクル共生システムの解明
理化学研究所 中央研究所 環境分子生物学研究室  副主任研究員
大熊盛也
 自然界で効率よく資源をバイオリサイクルする共生システムを細胞・分子レベルで理解し、資源の有効利用について学びます。セルロースの高い分解能を有し、得られるエネルギーのほとんどを酢酸に変換して有効利用しているシロアリの腸内共生システムを題材に、共生による高効率性の要因を探ります。セルロース分解の副産物の酢酸へのリサイクルや窒素源の確保などシロアリの共生システムに特徴的な機能について、腸内の微生物間でどのような共生機構が働いているかを解明します。共生微生物は多くが未知の難培養微生物であるので、培養を介さない方法で個々の微生物機能の解析技術を開発し、腸内での局在・存在状態と機能をリンクさせて統合的に共生システムを理解します。高いセルロース分解能と水素生成能の要因も解明します。本研究は、自然界の複合的な共生システムを微生物機能のレベルで直接詳細に解析する先駆的な研究であると同時に将来の人工共生システム構築への基盤ともなるものです。

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表面に形状選択的活性点を持つ固体触媒
鳥取大学工学部 助教授
片田直伸
 固体触媒は資源の有効利用や環境低負荷化学プロセスの実現に不可欠です。本研究では、有機分子を鋳型としてシリカの化学蒸着(CVD)を行い、シリカで囲まれた反応場を構築し、表面に形状選択的活性点をもつ固体触媒をつくります。これはほとんど例のない、金属酸化物のみで構成された活性点を精密に設計する方法です。具体的にはつぎの分野への応用を通じて、固体表面に形状選択性を有する活性点を自在に設計する技術の確立を目指します。
(1)酸化スズセンサー上に異なる形状選択性を持つ反応場を作り、組み合わせによって分子形状を認識するセンサーシステムを構築する。
(2)酸化スズ燃焼触媒上に形状選択性のある反応場を作り、直鎖炭化水素の選択燃焼によって自立型クラッキングシステムを構築する。また反応場内に酸点を埋め込み、2,6-ジメチルナフタレンの選択合成、逆マルコニコフ付加に応用する。
(3)不斉化合物を鋳型とし、不斉合成に応用する。

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界面を反応場とした触媒的脱水縮合反応
神戸学院大学薬学部 助教授
国嶋崇隆
 アミドやエステルは、たんぱく質や脂質など私たちの身体を作る中心的な物質の主要構造単位の一つであり、医薬品や高分子化合物をはじめとする多くの化学物質においてもしばしば見られる重要な官能基です。本研究では、これらの構造を構築するための方法の中で最も一般的な脱水縮合反応の基質(カルボン酸、アミン、アルコール)のいずれもが、ミセルや膜などに集積しやすいことに着目し、多様な分子集合相によって形成される界面を反応場とする脱水縮合反応の開発を目指します。
 脱水縮合反応はその名の通り、本来無水条件下に行うべきものであり、主たる媒体が水である界面での実施にはもともと大きな問題がありました。研究提案者は、すでに水中で触媒的に進行する脱水縮合反応を開発しており、この反応を基盤にすれば、本研究の遂行が可能になると考えられます。すなわち、界面活性剤型触媒を用いれば、反応基質はもちろん系内で発生する縮合剤や活性エステル中間体も含め、反応に関わるすべての化合物が界面に集積して、一連の反応が効果的に進行するものと考えられます。
 具体的には、界面活性剤や触媒の使い分けによって基質の界面への吸着や取り込みを制御し、局所濃縮効果による反応加速はもちろん、規則正しい分子の配列や配向性に基づく様々な特異性や選択性を発現させ、医薬品を始めとする有機化合物の効率的な合成法を確立します。また、得られた知見を基に、リポタンパク合成酵素を始めとする、生物学的な機能解明に役立つ様々なモデルへと展開していきます。
 有機溶媒を使用しなくても難水溶性の基質を可溶化させることができる点も界面活性剤利用の大きな利点であり、開発を目指す反応は、省エネルギー社会にマッチした環境負荷の小さな経済的でクリーンな技術として期待が寄せられます。


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ホウ素の輸送を利用した生物制御と環境浄化
東京大学生物生産工学研究センター 助教授
藤原 徹
 ホウ素は植物の必須元素で、動物の有用元素でもあります。また、高濃度では殺菌効果を持っています。ホウ素が欠乏すると、農作物の収量や品質が低下したり、動物の分化が異常になります。一方、焼却灰や潅漑用水、飲料水には高濃度のホウ素が含まれる場合があります。ホウ素は生物にはホウ酸として取り込まれると考えられていますが,トランスポータは同定されていませんでした。私はホウ素の取り込みに必須なトランスポ−タBOR1を生物界において初めて同定しました。この遺伝子の相同遺伝子は植物、動物や酵母などの真核微生物にも共通に存在していて、生物界で普遍的にホウ素輸送を担っている可能性が高いと考えられます。本研究はBOR1遺伝子群の機能解析と機能強化を通じて、生物の環境中からのホウ素の吸収や生物体内での移行を制御する手法を世界で初めて開発することを目的としています。これによって生物(主に作物)の生産性を高めたり、環境から有害なホウ酸を取り除いて濃縮したり、家畜やヒトの健康増進に寄与することができるのではないかと考えています。

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情報変換・機能制御性を持つ分子刺激応答性ゲル
関西大学工学部 助教授
宮田隆志
 pHや温度などの外部環境変化に応答して構造変化する刺激応答性ゲルは,センサー機能・プロセッサー機能・エフェクター機能を同時に併せ持つ次世代型ソフトマテリアルとして注目されています。本研究では,抗原抗体結合や糖類−レクチン相互作用,DNA相補的水素結合などの生体分子間相互作用を認識デバイス部分として利用し,ゲル内に生体分子を組織化させることによって,特定の分子に応答する新規な分子刺激応答性ゲルの創製とその利用を目指します。本研究の狙いは,生体分子間相互作用を可逆的架橋構造として利用することにより,分子レベルの生体分子間相互作用をゲルネットワークの協同的性質を介してマクロ構造変化として情報変換させ,センサーデバイスとして機能制御できる新しいソフトマテリアルを創製することにあります。また,生体分子をリガンドとして用いた新しい分子インプリント法を提案し,鋳型分子を認識してネットワークが収縮する分子刺激応答性ゲルの合成も試みます。このように,本研究では,タンパク質や糖類,DNAなどの生体分子を組織化したバイオハイブリッドゲルを合成することによって,情報変換と機能制御性をもつ分子刺激応答性ゲルに関する新概念の確立を目的としています。また,このような分子刺激応答性ゲルの実用化を目指して,特定のシグナル生体分子や環境汚染物質などを感知して情報変換・機能制御できるセンサーデバイスや次世代型ドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発も試みる予定です。

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バンド構造制御による水素製造用高効率光触媒
独立行政法人物質・材料研究機構 主席研究員
葉 金花
 次世代エネルギー水素をいかにクリーンに且つ低コスト的に提供することが現代社会の抱えている深刻なエネルギー及び環境問題解決への最重要課題の一つです。光によって水を直接水素と酸素に分解する光触媒システムは、太陽光エネルギーの低コスト化学変換技術として長年期待されてきました。しかし、従来の光触媒では紫外線にしか応答できないため、変換効率が低く、実用が絶望視されていました。最近、提案者らは独自な視点と発想で結晶構造と電子構造を制御することによって、世界で初めて可視光での水の完全分解に成功し、クリーンエネルギーのクリーンな創出法に新たな道を示しました。本研究では、より高効率な太陽光エネルギー変換を達成するため、吸収波長のさらなる長波長化および量子収率の向上を目指し、バンド構造制御及びナノレベルでの表面構造制御を通じ、可視光照射下で高効率的に水分解できるナノ構造光触媒を構築すると共に、キャリアの励起、移動、電荷分離等水分解素過程の制御因子を検討し、飛躍的な変換効率向上を目標としています。本研究によって、エネルギー及び環境問題の根本的な解決策提供に寄与したいと考えます。

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