成果事例

可視光下で強い酸化力を持つ光触媒材料を発見—
人工光合成につながる成果

課題名

日中(MOST)「環境低負荷型浄化技術及び太陽光利用水素製造技術に関わる高機能光触媒材料の研究」(支援期間:平成19〜22年度)

研究者名

日本側研究代表者:葉 金花 物質・材料研究機構 光触媒材料センター センター長

中国側研究代表者:Zou Zhigang 南京大学 環境材料及び再生可能エネルギー研究センター センター長

概要

光触媒とは、太陽や蛍光灯などの光をあてると、周囲の物質から電子を奪い、強い酸化反応を起こす材料のことです。この酸化反応により、有機化合物や細菌などの有害物質を分解・除去することができるため、「抗菌」「防曇」「セルフクリーニング」などの技術に応用することができます。しかし、従来の代表的な光触媒材料である酸化チタンは太陽光の4%程度を占める紫外線にしか光触媒反応を示さないため、太陽光の約40%を占める可視光下でも機能する新たな材料の開発が求められてきました。


本事業において支援された日中の研究チームは、リン酸銀(Ag3PO4)が可視光照射下で極めて高い(既存の光触媒の数十倍)酸化力を発揮する光触媒材料であることを発見し、共著論文がNature Materials誌に掲載されました。


光触媒は水の光分解から水素・酸素を生成するため、化石燃料に代替するクリーンエネルギー源として注目されており、その機能が植物の光合成に類似していることから人工光合成とも呼ばれています。可視光を利用できる光触媒材料の開発は、人工光合成システムの開発に大きく結びつく成果です。


この研究交流では、日中の研究チームが互いに得意分野を役割分担し、中国側では新規材料が光触媒としてどの程度役立つかを検証し、日本側はそれらの材料の設計やバンド構造の考察などを担当しました。このような研究交流によって本事業の趣旨にふさわしい相乗効果が得られたと思われます。


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[左]可視光照射下でのメチレンブルー(MB)色素の分解実験。挿入図は、Ag3PO4を用いた場合のMB溶液の色の変化。4分でほぼ完全に脱色。 [右]リン酸銀Ag3PO4
(物質・材料研究機構ホームページより転載)

参考文献:Nature Materials 9, 559-564 (2010)