国際科学技術協力基盤整備事業「日本‐台湾研究交流」における新規課題の決定について

令和6年2月9日

 JST(理事長 橋本 和仁)は、国際科学技術協力基盤整備事業「日本-台湾研究交流」注1)において、台湾行政院国家科学・技術委員会(NSTC)注2)と共同で「AIシステム構成に資するナノエレクトロニクス技術」分野に関する研究交流課題の募集および審査を行い、新規課題の採択を決定しました。

(1)「画像診断バイオセンサとAIoTの融合による喉頭がん早期スマート監視」
(研究代表者:福井大学 学術研究院工学系部門 准教授 坂元 博昭、国立成功大学 医工学科 教授 莊 漢聲)
本研究は、喉頭がんの早期スマート監視技術の開発を目的とするものです。スマートフォン画像を用いて口腔内のガンマーカー分子を測定し、その結果をクラウドに集約してAIによるスマート監視へ発展させます。簡便に喉頭がんを発見・監視するとともに、蓄積されたデータから適切な診断や処置を可能とするシステムを目指します。

(2)「「大気汚染」×「医学」を繋げたAIoTによる新しい予防医療の創出」
(研究代表者:琉球大学 理学部 助教 島田 幸治郎、国立台湾大学 環境工学大学院 教授 蕭 大智)
本研究は、地球温暖化による大気汚染が原因で発病すると報告されている健康被害を解決するために「環境科学」×「医学」のAIoT開発を目的とするものです。大気汚染データや大気汚染との関連が報告されている病気の疫学調査データおよび細胞試験により、大気汚染と病気の関連性をAI解析して新しい予防医学を創出することを目指します。

(3)「AIとIoTを融合したホログラフィック生体流体センシングとパーソナルケアへの応用」
(研究代表者:千葉大学 大学院工学研究院 教授 下馬場 朋禄、台湾師範大学 電子光工学科 教授 鄭 超仁)
本研究は、従来の顕微鏡よりも多様な情報を取得できる小型ホログラフィックカメラにAI技術を組み合わせたAIoT型パーソナルヘルスケア装置の開発を目的とするものです。安価に生体の多様な情報を取得できるIoTデバイスにより、高齢化社会の医療負担の軽減を目指します。

(4)「エッジコンピューティングおよび商用体重計を用いたカフレス血圧測定および栄養管理システムに関する開発」
(研究代表者:会津大学 コンピュータ理工学部 上級准教授 朱 欣、朝陽科技大学 コンピュータ科学・情報工学部 卓越教授 劉 省宏)
本研究は、エッジコンピューティングおよび商用体重計を用いてカフレス血圧を推定し、また体重、体脂肪率およびカフレス血圧から高齢者向け自己ケア用の栄養管理システムおよび運動管理システムを開発することを目的とするものです。高齢者が家庭で栄養管理および運動管理を自ら行うことで、健康増進に貢献することを目指します。

(5)「日本と台湾の糖尿病高齢者における工学技術を利用したサルコペニア予防のための栄養介入策の構築」
(研究代表者:神戸大学 大学院保健学研究科 准教授 山口 裕子、台北医学大学 看護学部 准教授 顏 心彥)
本研究は、日本と台湾の糖尿病高齢者を対象に、サルコペニア予防のための栄養介入策を構築することを目的とするものです。摂取した食事などのライフログをスマートフォンで管理するアプリや骨格筋機能測定機器等のAI技術の開発を行い、高齢者糖尿病と骨格筋機能低下との悪循環を栄養介入によって断ち切ることを目指します。

今回の研究交流課題の募集では15件の応募があり、これらの応募課題を日本側および台湾側の専門家により評価しました。その結果をもとにJSTおよびNSTCが協議を行い、研究内容の優位性や交流計画の有効性などの観点から、日本と台湾がともに支援すべきと合意した5件を支援課題として決定しました。日本側と台湾側ともに令和6年4月に支援開始を予定しています。研究期間は支援開始から3年間の予定です。

注1)国際科学技術協力基盤整備事業「日本‐台湾研究交流」
2007年9月にJSTとNSTCの前身である国家科学委員会(NSC)の間で覚書を締結しました。JSTとNSCは、2008年度(平成20年度)に「ナノデバイス」分野の研究交流課題の共同公募を実施して以降、「バイオエレクトロニクス」分野、「バイオフォトニクス」分野で公募を実施しました。2014年(平成26年)にNSCの台湾科技部(MOST)への改組に伴いJSTとの協力もMOSTに引き継がれ、JSTとMOSTは、「IoTのためのセキュリティ技術」分野、「セキュアでディペンダブルなIoTポータブルデバイスのための研究」分野、「超高齢社会における高齢者のケアと支援のためのICT」分野、「AIシステム構成に資するナノエレクトロニクス技術」分野で公募を実施してきました。2022年(令和4年)にMOSTのNSTCへの改組に伴いJSTとの協力もNSTCに引き継がれ、2023年(令和5年度)に「AIシステム構成に資するナノエレクトロニクス技術」分野で公募を実施しました。
日本‐台湾研究交流ホームページURL: https://www.jst.go.jp/inter/program/kiban/gather/taiwan.html
注2)台湾行政院国家科学・技術委員会(NSTC:National Science and Technology Council)
NSTCは、台湾科技部(MOST)が2022年に改組されて発足した機関です。改組により、MOSTが担っていた科学技術発展の促進、学術研究支援、サイエンスパーク発展に加えて学術研究と産業発展のさらなる連携を促進し、科学技術発展に尽力するファンディング機関としての機能を果たしています。
NSTCホームページURL: https://www.nstc.gov.tw/?l=en

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