科学オリンピックだより 2010 vol.6

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国際生物学オリンピックレポート
オリンピックの軌跡

 
 
生徒たちを支えた教師の物語
 

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「科学オリンピックだよりvol.4」
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生徒を導くには、本人のやる気と同様に、教師の強い意志が大切です。 石井規雄先生
石井規雄先生(千葉県立船橋高等学校)
国際生物学オリンピックで日本人初の金メダルを獲得した大月亮太さん。 彼を2年間にわたって指導してきた石井規雄先生に、独自の指導方法や、 ともに挑戦する教師にとって何が大切かをお話ししていただきました。
 私が指導を始めたころの大月くんはバスケットボール部に所属していたこともあり、生物学オリンピックへの出場を本気で考えてはいませんでした。ところが国内予選の『生物チャレンジ』で高い評価を得て、頑張れば自分も日本代表になれるかもしれないという思いが、彼の背中を押したのです。  われわれ教師は「全国レベルで自分の力を試せる機会」として生徒の参加を促すと良いと思います。じつは多くの参加国では代表選手の成績によって特典があるのですが、日本にはそうした制度はなく、生徒自身が挑戦する意義を見つけることがとても重要となるからです。 ただ、教師にとって指導の時間を作るのは大変ですし、 時間を上手に使う必要があると思います。私の場合、学期 中は週2〜3回の特別授業を組み、夏休みには教室を開放し生徒をサポートするような指導をしています。生徒の挑戦を支えたいと思ったら、教師はまず、生徒に何を伝えたいのか自問自答すると良いでしょう。私はやはり教えることが好きで、生物の本質的な面白さを伝えたいという思いがあります。自然への理解を深め、自然全体のつながりを発見し、物事の見方が変化していくとき、生徒たちの目は輝いています。 生物学オリンピックに挑戦するには生徒自身の努力は重要ですが、教師として何をしたいのか強い意志を持ち、それを実践することも同じように大切だと思います。
さまざまな経験や仲間との交流を通じて、人として成長できるすばらしい機会です。 奥田宏志先生
奥田宏志先生
(日本代表チームリーダー 芝浦工業大学柏中学高等学校)
代表選手の選考や強化トレーニングなど、準備段階から長期にわたって 日本チームを支えてきた奥田宏志先生に、生徒たちが 国際生物学オリンピックに挑戦する意義ついて語っていただきました。
 生物学オリンピックに出場するまでの間に、生徒たちはいろいろな先生方のお世話になり、普段の高校生活では学べないことを吸収し、人として大きく成長していきます。 いざ国際大会の舞台に立つときには、日本の代表として恥ずかしくないようにという強い気持ちがみなぎっていて、スタッフとして胸を張って送り出してきました。彼ら、彼女らの成長の過程に関われることは、とても大きな喜びです。 また大会を通じて、かけがえのない友人たちと出会うこともできます。生物が好きな生徒は学校では何百人の うち数人かもしれませんが、世界中からここに集結する生徒たちはみんな生物が大好きです。しかも今年は過去の国際大会に出場した日本代表の先輩たちが応援に駆けつけ、世代を超えた仲間同士の絆も生まれました。 生物学オリンピックには生物学の知識や思考力を競う試験があるので、学力偏重のイメージを持たれがちです。しかし実際には、生徒の人間的な成長やいろいろな人との交流こそが大きな財産になると思います。10年後には、今の代表の生徒たちが大会の運営や引率をしているかもしれません。今後のさらなる成長が楽しみです。
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