採択プロジェクト

大学・エコシステム推進型 
大学推進型

神戸大学

2020年度

 (グレー網掛)は終了課題です。所属・役職名はすべて採択時のものとなります。

採択年度 研究開発課題名 研究代表者 概要
令和2年度(2020年度) 気象モデルWRFを用いた洋上風況調査手法の実用化
2020年11月「レラテック株式会社」起業
神戸大学
海事科学研究科
教授
大澤 輝夫
洋上風力発電所建設に向けた風況調査においては、数値モデルを用いて風況シミュレーションを実施することが一般的になりつつある。これまで陸上の風況調査で多くの実績を有する数値流体力学(CFD)モデルに比べて、風況が大気安定度に大きく依存する洋上においては、熱力学的過程を考慮できる気象モデルの使用が合理的であると考えられる。しかしこれまで両モデルの洋上風況推定精度を直接的に比較した研究例はほとんどない。そこで本研究では、申請者らが研究を進めている気象モデルWRF(the Weather Research and Forecastingmodel)の精度をCFDモデルと比較することにより、その有用性を立証すると共に、WRFを用いた洋上風況調査の実用化に向けた実務環境整備に取り組む。
令和2年度(2020年度) ヒトiPS細胞の心筋細胞分化に及ぼす 血管新生促進ゲルの開発 神戸大学
工学研究科
准教授
大谷 亨
人工多能性幹細胞(iPS細胞)から心筋細胞を分化誘導する分子メカニズムや効率の良い誘導方法の開発は、体内正着度に優れた正常な心筋細胞製品化に貢献すると考えらる。研究代表者はこれまでに、ポリエチレングリコールとヒアルロン酸の組み合わせたヒドロゲルを用いて細胞成長因子を生体内に埋植することによって、動物の体内において血管内皮細胞なしで血管新生を効果的に誘導し、細胞分化が誘導させることを世界で初めて明らかにしている(特願2018-89002)。本研究では、この予備的成果をもとに細胞成長因子のゲルからの放出性と細胞増殖との相関性を明らかにするために培養細胞増殖実験を行う。さらにiPS細胞から分化誘導された心筋細胞に対するゲルの影響を検証するする。これらより、血管新生促進ゲルのパラクライン効果を利用した再生医療の臨床応用への足がかりとなる効果を検証する。
令和2年度(2020年度) 可食性コーティングに用いるフィルム開発 神戸大学
農学研究科
教授
野村 啓一
青果物の貯蔵法としては,CA貯蔵やMA貯蔵が広く行われているが,それぞれ大掛かりな設備が必要なことや,化石燃料を使用するなどの問題点がある。可食性コーティングとは,生分解性の可食性薄膜フィルムで青果物をコーティングし,その貯蔵期間の延長を試みる方法で,SDGsが掲げられている今日にふさわしい貯蔵法といえる。特にコーティング素材としてペクチンなどの食品産業廃棄物由来の多糖を用いることで,より環境にやさしい貯蔵法の開発につながる。しかしながら,用いるフィルム素材と青果物の組み合わせに関する一般則がなく,その手法の開発は極めて効率が悪い。本研究では,モデル系で種々のフィルムの大まかな特性を解明し,その結果に基づいて実際の青果物に適用・解析し,一般則を明らかにするとともに,食品全般への応用の可能性も明らかにする。
令和2年度(2020年度) 高性能・超低消費電力プロセッサアーキテクチャの開発 神戸大学
大学院理学研究科
教授
牧野 淳一郎
本研究では、申請代表者がこれまで開発してきた高性能演算アクセラレータである GRAPEシリーズをベースに、その改良アーキテクチャを開発し、他企業に提供できる形にすることで商業化することを目指すものである。
既に、プリファード・ネットワークスと共同で開発した GRAPE-PFN2 (製品名としては MN-Core、また計算機システムの名称はMN-3)は推論だけでなく学習にも対応したAI(深層学習)向けプロセッサとしては現在世界最高の 1.2Tops/W(1 ワットあたり1 秒に1.2 兆演算)の電力あたり性能を実現した。また、汎用のプロセッサとしても、消費電力あたりの性能のランキングであるGreen500の今年6 月のリストで 21.1Gflops/W を達成し、第一位となった。
本研究では、GRAPE-PFN2のアーキテクチャにさらに改良を加え、コンパイラ等のソフトウェアスタックとともに提供可能とすることで、高性能計算のためのプロセッサシステムの基礎を作ることを目標とする。
令和2年度(2020年度) CT画像解析に基づく大動脈解離のAI診断を用いた診断システムの開発
2022年6月「株式会社ビヨ・ファーマ」起業
神戸大学
医学部附属病院
助教
辻本 貴紀
本研究では非造影のCT画像を基に大動脈解離を正確に診断するアルゴリズムを構築し、専門医の有無にかかわらず全ての施設で大動脈解離の正確な診断を行うことができることを目的とする。大動脈解離の診断では、診断の時間的制約が高く、地域による診断格差が致命的になりうる。この点において大動脈解離の診断アルゴリズムのいち早い確立が望まれる。当院での豊富な大動脈解離のCTデータ及び治療経過を基に高精度のアルゴリズムを構築し、CTの診断ソフトウェアの一つの機能として世界にシェアを拡大すれば、急性大動脈解離により命を失う患者を減らし、医療従事者の負担軽減にもつながる。そしてそのアルゴリズムを核とした大動脈解離のAI診断を用いた診断システムを開発することが目的となる。
令和2年度(2020年度) 三角柱マルチリモコンの製品化事業 神戸大学
大学院保健学研究科
准教授
長尾 徹
マルチリモコンは複数市販されているが、多くはテレビ対応のみが多く、かつ、家電購入時に添付していたリモコンが破損した場合の代替えとして購入されていると予測される。テレビリモコンは地上波デジタル放送が開始されてから、多機能・多ボタン化しており、利用者が普段使わないボタンが存在したり、誤って押下した時に復帰する方法が分からないなど、高齢者等にとっては大変複雑な機器となっている。高齢者であっても容易に利用可能で、操作に知識や熟練を必要としないマルチリモコンを開発し製品化を目指している。
令和2年度(2020年度) 生体由来波形データおよび画像データを使用した疾患診断用マルチモーダル人工知能(AI)の開発 (プロトタイピングおよびバリエーション追加試験)
2021年7月「株式会社Mediest」起業
神戸大学
大学院医学研究科
大学院生(循環器内科)
西森 誠
研究代表者は、医療情報の中で生体由来波形データ(心電図等)をベースとした人工知能モデルの開発・研究を行ってきた。また、複数のモダリティ(波形データおよび胸部レントゲン写真等の画像データなど)の医療情報を同時に使用する疾患診断用マルチモーダル人工知能モデルの開発・研究も行っている。今回は、本学附属病院の症例を用いて作成したAIツールの実用化にむけ、(i)学習サンプルデータの追加、(ii)アプリケーションの実装(プロトタイピング)、(iii)他院でのバリエーション追加試験、(iV)他疾患でのバリエーション追加試験を行う。
令和2年度(2020年度) 超音波振動を応用した体内埋め込み型医療機器ワイヤレス給電システムの開発 神戸大学
海事科学研究科
(兼) 未来医工学研究開発センター
准教授
三島 智和
ペースメーカや人工臓器など体内に埋め込まれた医療機器へ非侵襲にて電力を伝送する装置として,超音波振動を利用した非接触ワイヤレス給電(UWPT)システムを開発する。磁界共鳴方式と比較し人体への影響が少ない一方で,伝送電力の増大が実用化への課題となっている。その解決策として,共振形電力変換回路を新たに導入した小型・高効率・低ノイズのUWPTシステムを考案し,試作器を構築して人体を模擬した給電環境にてその実用性を評価する。本プログラムを通じて得た成果をもとに,埋め込み機器利用の患者および医療現場への実用化をはかる。
令和2年度(2020年度) 性ステロイドホルモン増大による新規2型糖尿病予防法の開発
〜免疫調節システムに着目した基礎的メカニズムの解明〜
神戸大学
人間発達環境学研究科
准教授
佐藤 幸治
加齢により血中の性ステロイドホルモン濃度は低下し、それに呼応して、2型糖尿病の発症率は増加する。糖尿病や肥満症の発症は炎症マーカーの上昇や免疫機能低下とも関連していること、性ステロイドホルモンは抗炎症作用を有することを踏まえると、性ステロイドホルモンが、炎症反応や免疫機能を介して糖尿病の病態を制御している可能性がある。これまでに、血糖値の低下に炎症反応を制御する遺伝子の増加が骨格筋糖代謝調節経路の活性化に関与していることを網羅解析により明らかにしている。本研究では、性ステロイドホルモン濃度を増加させる栄養成分であるジオスゲニンや筋収縮が、炎症反応を制御する関連遺伝子の増加を介して2型糖尿病の予防・改善に関与していると仮説を立て、2型糖尿病予防のための新たな生活習慣の改善策を提示する。
令和2年度(2020年度) 環境DNA分析手法を用いた生物調査手法の事業化に向けた研究 神戸大学
人間発達環境学研究科
准教授
源 利文
研究代表者の源は環境中のDNA情報を用いた生物調査手法の研究を最も初期から進めてきたパイオニアであり、現在も国内外の研究をリードしている。環境DNA分析の事業化については、すでに魚類の網羅的検出などの分析を提供している企業もあるものの、その分析精度にはばらつきがある。本研究では、パイオニアである神戸大学発の、高精度なサービスの事業化に向け、(1)コンタミネーションの防止策の導入による解析精度の向上、(2)関連業界からの要請の大きい、魚類以外の分類群を対象とした新たな分析手法の開発を行う。また、ビジネスモデルの策定に向け、潜在的な顧客からヒアリングを行う。
令和2年度(2020年度) 乳幼児期手話言語獲得支援における映像教材の開発、ならびに動画配信のもたらす効果の実証 神戸大学
人間発達環境学研究科
教授
河﨑 佳子
聴覚障害をもつ乳幼児を中心に、手話言語の獲得を必要とする子どもたちとその家族を対象に映像教材を作成する。映像教材の内容、手話表現、よみとり通訳(日本語)の表現等について詳細な打ち合わせを行い、収録、編集作業を経て映像教材を完成させる。
完成した映像教材を、テスト配信によってNPOや協力施設が支援する家族に提供し、アンケート調査や聞き取り調査をとおして評価を得る。調査結果を分析して改善に役立てる。開発した映像教材は、教材内容を共同開発したNPOと協議の上、DVD販売やインターネット配信によってその商品化を検討する。
令和2年度(2020年度) 消費者の深層心理を探求するための技法の開発
~コラージュ法に焦点を当てて~
2021年3月「株式会社日本消費者深層心理研究センター」起業
神戸大学
人間発達環境学研究科
准教授
伊藤 俊樹
マーケティングリサーチにおいては、従来アンケート調査等を用いた量的研究が主流であったが、消費者の心理を質的に研究する流れも近年出てきた。本研究では、臨床心理学において人の無意識を知るために用いられる技法である投影法を用いることによって、従来の質的分析を更に一歩進めて、今まで探ることのできなかった消費者の深層心理・無意識を探る技法を確立することを目的とする。投影法には色々あるが本研究では、特に臨床心理学で用いられるコラージュ法を消費者の深層心理を探求する技法として応用し、消費者の深層心理・無意識を探求する技法として実証的に研究し、消費者の深層心理・無意識を探求する有効な技法として確立することを目指す。
令和2年度(2020年度) コロナ渦における臨床実習の代替となる教育方法の検討 神戸大学
医学部附属病院
副看護部長
ウイリアムソン彰子
2020年度はCOVID19の感染拡大により看護学生の臨床実習の受け入れを中止せざるを得ないという想定外の状況となった。当院では、本学保健学科他6校から年間延べ約6600人日の実習生を受け入れており、これらの臨床実習の代替となる対応が求められた。臨床から模擬患者事例を提供し、学生は日々更新される情報から患者の変化を捉え、これまでの臨床実習と同様に日々の行動計画を立案し、学内の演習設備などで技術演習を実施することとした。臨床からの指導は、教員から送られてくる実習記録へのコメントやWEBカンファレンスにて対応し、臨床実習の代替とした。
この実習形態は、コロナ渦でも看護学生が学ぶ環境を保障し、アフターコロナには看護学生が学内でも臨床的な学びが得られる教育方法として活用され得るものであると考える。本プロジェクトでは、学生に電子カルテの閲覧に近い状況での情報提供を行うシステムを開発し、学生の臨床的な学びを促進する教育方法の構築と評価を行う。