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プロジェクト現場から

第18回SciREXセミナー(2016年10月25日)開催報告

 第18回SciREXセミナー(文部科学省・GRIPS SciREXセンター・RISTEX共催)が2016年10月25日に開催されました(於:霞が関ナレッジスクエア・エキスパート倶楽部)。

 セミナーでは、平成25年度採択プロジェクト「先端医療を対象とした規制・技術標準整備のための政策シミュレーション」の活動成果について、加納信吾氏(東京大学院新領域創成科学研究科・准教授)より「イノベーションとレギュレーションの共進化-政策実装に向けたディスカッション-」というタイトルで話題提供がなされ、その後藤田卓仙氏 (名古屋大学大学院経済学研究科・寄付講座准教授)のファシリテーションのもと参加者を交えた意見交換が行われました。

 参加者は約25名で、内閣官房、文部科学省、厚生労働省、経済産業省等の行政官、大学等のアカデミアおよびファンディングエージェンシーの関係者など、プロジェクトのステークホルダーとなる多様な関係者が集まるなか、実際の政策過程での研究成果の活用を見据えながら、その課題や展望について積極的な意見交換がなされました。

 話題提供では、まず再生医療、個別化医療、先端医療機器などの先端医療分野において新たな治療手段を迅速に臨床応用していくためには、それに対応した規制や技術標準の迅速な整備が必要であることが述べられ、実際にシナリオプランニング技法を用いた過去の事例分析によって、法律、ガイドライン、技術標準等といったルールの組成とその運用(「重要で不確実な要因」)がシナリオを大きく分岐させる要因となっていることが示されました。

 また、いくつかの過去の失敗がイノベーション(研究開発)とレギュレーション(規制)とが未整理のままに渾然と推進あるいは運用されていたために、とりわけレギュレーションの側(Regulator’s Science)が未成熟のままとなっており、それがイノベーションを阻害することにつながっていることが指摘されました。そのうえで、イノベーションとレギュレーションの調和がとれた形で「共進化」を遂げるためには、あらためて両者の役割と本質の違いを整理するとともに、ルールとその運用のあり方に関する研究(Regulatory Research)が常に推進されるべく、これを機能的に担保するような体制にあらためる必要があるという提言がなされました

 最後に、本研究を通じてシミュレーション手法としてのシナリオプランニングが、ルール整備や体制変更などの政策的な介入・対応のタイミングを特定することができるという意味で、医療分野に限らず広く行政活動の実務一般とそれを研究対象とする政策研究の両方において有意義であることがあらためて述べられました。

 セミナーの内容について、詳しくはこちらをご覧ください。
 政策研究大学院大学 科学技術イノベーション政策研究センター(外部サイト)

講師の加納信吾氏と藤田卓仙氏
講師の加納信吾氏(東京大学院新領域創成科学研究科・准教授:左)と
ファシリテーターの藤田卓仙氏 (名古屋大学大学院経済学研究科・寄付講座准教授):右)

プレゼンテーションの様子
プレゼンテーションの様子。報告後は、ステークホルダーとの間で
インタラクティブなやりとりがなされました

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