制度概要

委員長メッセージ ~ 2025年度の選考を終えて ~

今年度の「STI for SDGs」アワードの受賞者が決定しました。今回も多数の応募をいただきましたが、いずれも社会課題解決に対する強い思いを持って行われているものばかりでした。委員の皆さんと悩みながら、12件の素晴らしい取り組みを選出しました。

制度創設以来、回を重ねるごとにSDGs達成に向けた明確なビジョンを持つ取り組みの応募が増えているように感じています。特に今年は、ご自身の経験をもとにしたストーリー性の高い取り組みや、高校生、高専生、大学生といった若い世代の方々が地域の課題に真剣に向き合う取り組みも多く、大変頼もしく感じました。最近の世界情勢を反映してか、ジェンダー平等や貧困の解消、途上国の人々の自立などにも目を向けた取り組みも目立ちました。

また、今回から「奨励賞」を新設しました。この賞は、今後の社会課題解決に大きな期待が持てる取り組みを対象としたものであり、例えば起業したばかりのスタートアップ、大学や企業の研究開発成果の社会実装に取りかかったばかりの活動などの応募を想定したものです。応募時点ではまだ始まったばかりでも、近い将来に大きな成果が確実に期待できるような活動を「表彰」という形で世の中に広めることで、SDGs達成に向けた社会変革を加速させたいという考えで新設しました。期待通り、スタートアップや産官学連携などで大学の研究成果を活用し始めている取り組みや、ユニークな着眼点を持った取り組み、高度な技術を活用している取り組みも多数応募をいただきました。今回は残念ながら選に漏れた取り組みも、そこに賭ける思いが強く伝わるものばかりであり、今後が楽しみです。

皆さんもご存知の通り、SDGsの達成目標年である2030年まで、すでに5年を切りました。しかし国連の最新のレポートに依れば、SDGsの169のターゲットのうち、軌道に乗っている、または緩やかに進捗しているものはわずか35%と言われています*1。世界各地で起きている戦争や紛争の影響で、これまでの努力が台無しになってしまうばかりか状況を悪化させているケースも多くあります。さらに身近な問題としては、特に今年は多くの方が、今までにもまして気候変動の影響を自分のこととして強く感じられたのではないでしょうか。こういった、皆が自分ごとして解決を目指すべき課題に対し科学技術・イノベーションの力で向き合う取り組みを、このアワードではこれからも応援していきます。皆様にも、今回、そしてこれまでの受賞取り組みについてぜひ関心を持っていただき、2030年に向けて自分たちができることについて考えるきっかけにしていただきたいと思います。

*1:国連 SDGs報告2025

2025年10月
「STI for SDGs」アワード
選考委員会委員長 上田 壮一
(一般社団法人Think the Earth 理事)