法廷における科学

法廷における科学

法律家と科学者も、膨大な専門知識が必要な仕事ですが、お互いを理解するための交流は、これまでほとんどおこなわれてこなかったと言えるでしょう。しかし、科学技術が社会のすみずみに浸透する現在、法廷でも、科学技術が関わってくることが増えました。
科学技術そのものが問われる裁判もあります。それには、大きく分けて2種類あります。医療事故のように、すでに起きたトラブルについての裁判と、今後起こるかもしれないトラブルや、これから広がるかもしれない技術についての裁判です。とくに、このプロジェクトが着目した後者については、科学者たちのなかでも、安全性等についての意見がわかれている場合がほとんどです。そんなとき、どうやって科学の知識を法律的な判断に反映していけばよいのでしょうか。
日本の法廷では、基本的に一問一答でやりとりすることがルールになっています。科学者が専門家の立場から証言をおこなう場合も、法律家は、たとえば「これはAですか、それともBですか」と質問します。しかし科学者は、どういう条件ではAになり、どういう条件でBになるのか、ということを研究するのが科学なのだと考えます。ですから、AかBかをかんたんに答えることはできません。すると、法律家はほしい答が得られず、科学者も本当に伝えたいことが言えず、コミュニケーションはすれ違ったままになってしまいます。

2012年9月30日をもちまして、領域の活動は終了致しました。