イノベーションの新時代
C・K・プラハラード M・S・クリッシュナン
有賀裕子/訳
日本経済新聞出版社 2009年
ICT技術の急速な変化、インターネットによる様々なイノベーションはグローバリゼーションを加速化し同時に産業界の垣根を著しく曖昧にしてきた。こうした潮流のなかで競争優位性を確保するための企業戦略にも大きな変化が生じている。
本書は「企業が商品という価値を生み出し消費者に提供するというこれまでの企業中心、製品中心の発想から消費者の経験や消費者との価値共創が競争優位の決め手となる」というコンスーマー・セントリックの時代認識のもとに展開するイノベーション論である。
イノベーションは、「消費者の期待をかたちづくるだけではなく、消費者の需要、行動、経験などの変化にたゆまず応えていく手段でもある」としている点が本書の基本論旨であると言える。
こうした時代の進化の中で科学技術が市民との共創を抜きには存在し得なくなってきたという示唆を与える書であるとも言えそうである。
(奥山紘史:日本電気株式会社社会企業塾 顧問)