日本近代技術の形成 
〈伝統〉と〈近代〉のダイナミクス
中岡哲郎
朝日選書 2006年
明治期日本の工業化の歴史を、西洋からの移植技術と在来産業とのふたつの流れの相互補完関係を軸にダイナミックに描ききっている。そこでの分析のキーとなる概念のひとつは、「社会経済的リンク」である。ある段階で問題を克服するように働いた条件が、次の段階では矛盾に転化してしまう過程が論じられている。現在の科学技術と社会の問題に注目するとき、ともすれば歴史的視点は重きをおかれていないようにも感じるが、問題の歴史的背景を意識することの重要性、さらには視点自体の歴史性も意識される必要があるのではないだろうか。
(柿原泰:東京海洋大学海洋科学部海洋政策文化学科 准教授)